退去時の鍵交換費用は払うべき?|ガイドラインの負担区分・入居時に払った分との二重取り・紛失や合鍵の扱い・特約が有効になる条件と断り方

退去時の鍵交換費用は、鍵を全部返していれば払わなくてよいのが国土交通省ガイドラインの整理です(別表1・貸主負担)。鍵を1本でも紛失していれば、住んだ年数に関係なくシリンダー交換の全額が借主負担。入居時に払った鍵交換費用と退去時の請求は別物で、退去時に払うのは「有効な特約がある」か「紛失・破損がある」ときだけです。

この記事でわかること

  • ガイドラインが鍵について書いている3か所(別表1・2・3)と、それぞれの結論
  • 入居時の鍵交換費用と退去時の請求がなぜ二重に来るのか。標準契約書とURの公式案内で見える構造
  • 全部返した・1本紛失・合鍵を作った・カードキー・一律請求など10ケースの判定表
  • 鍵の種類で交換される範囲がどう変わるか。見積書のどこを見るか
  • 「退去時鍵交換費用は借主負担」の特約が有効になる場合・争える場合。東京地裁と簡裁の判断
  • 請求されたときの確認手順とメール文。相談先の電話番号

出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について同 再改訂版 全文(PDF)国土交通省「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」民法(e-Gov法令検索)

目次

退去時の鍵交換費用は原則払わなくていい。ガイドラインの3か所

退去時の鍵交換費用について、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版・2011年8月)は3か所で触れています。結論はどこも同じで、紛失・破損がなければ貸主負担、紛失・破損があれば借主負担です。

ガイドラインが鍵について書いている箇所(再改訂版)

箇所記述負担
別表1(P.21)鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)。「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当」貸主
別表1(P.21)鍵の紛失、破損による取替え。賃借人の善管注意義務違反に当たる借主
別表2(P.24)「鍵の紛失の場合は、経過年数は考慮しない。交換費用相当分を全額賃借人負担とする」。交換の単位は「シリンダーの交換」借主(全額)
別表3(P.25〜26)契約書に添付する負担区分の様式。貸主側に「鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)」、借主側に「鍵の紛失又は破損による取替え」様式で明文化

ポイントは別表2です。壁紙なら6年で残存価値1円まで借主負担が減りますが、鍵の紛失は経過年数を考慮しない。10年住んでいても、1本なくせばシリンダー交換の全額です。

民法の位置づけ。修繕義務は貸主、借主の責任分だけ例外

法律の側から見ると、玄関の錠は建物の設備です。民法606条は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」としています。ただし書きで除かれるのは、借主の責めに帰すべき事由で修繕が必要になった場合だけ。

退去時の原状回復を定めた民法621条も、通常の使用による損耗と経年変化を借主の義務から外しています。次の入居者のために鍵を替えるのは次の人の防犯のためで、前の借主が壊したわけではない。だから貸主負担です。

紛失は逆に、借主の責めに帰すべき事由。前の鍵で誰かが入れる状態を作ったのは借主なので、シリンダーごと替える費用を負います。

標準契約書の別表も同じ区分

国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版)にも、別表第5として同じ負担区分が付いています。貸主負担の欄に「鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)」、借主負担の欄に「鍵の紛失又は破損による取替え」。負担単位は「鍵の返却。紛失の場合は、シリンダーの交換も含む」です。

契約書がこの標準契約書をもとにしていれば、退去時の鍵交換費用は自分の契約書の別表で貸主負担と書いてあることになります。契約書の読み方は賃貸契約書の見方で扱っています。

入居時に払った鍵交換費用と、退去時の請求は別物

「入居のときに鍵交換代を払ったのに、退去でもまた請求された」という相談は、仲介の現場でも繰り返し出ました。二重取りに見えますが、法的には2つの別の費用です。

入居時の鍵交換費用と退去時の鍵交換費用の違い

比べる点入居時の鍵交換費用退去時の鍵交換費用
誰のための交換か自分の防犯(前の入居者の鍵を無効にする)次の入居者の防犯
ガイドラインの対象か対象外(ガイドラインは退去時の原状回復を扱う)対象。別表1で貸主負担
根拠になるもの契約時の特約・重要事項説明書・募集図面の記載紛失・破損の事実、または退去時負担の特約
標準契約書の扱い条項なし(鍵交換費用の記載は0か所)別表第5で貸主負担
払わずに済むか特約に明確に合意していれば払う(後述の東京地裁)鍵を全部返し、特約もなければ払わない

入居時の鍵交換費用は、ガイドラインの外にあります。ガイドラインは退去時の原状回復を扱うもので、入居時に何を払うかは契約で決まります。標準契約書には鍵交換費用の条項がありません。あるのは頭書の「鍵No.・本数」を書く欄だけ。つまり入居時の鍵交換費用は法律にも標準契約書にも根拠がなく、個別の特約で成り立っている費用です。

一方、退去時の鍵交換は次の入居者のための交換です。次の人の交換費用は、次の人が入居時に払うか貸主が持つかのどちらかで、前の借主が2回目を払う理由はありません。

URは入居時に取らない。管理会社で方式が違う

公的な貸主であるUR賃貸住宅は、公式FAQで「入居時には例えば、火災保険料、鍵交換費用、クリーニング費用といった費用はいただいておりません」と案内しています。続けて「退去時には住戸の状況により、鍵交換費用、クリーニング費用等をお支払いいただく場合がございます」ともあります。

入居時に取らず、退去時は紛失など住戸の状況次第。ガイドラインの区分に沿った方式です。民間の多くは逆に入居時に取り、退去時は取りません。「入居時か退去時のどちらか一方」が本来の姿で、両方は説明が要る

敷金礼金なし物件で、入居時の鍵交換代が別名目で乗る構造は礼金・敷金なし物件の注意点で扱っています。

ケース別。払わなくていい場合と、払う場合の判定表

退去時の鍵交換費用を請求されたら、次の3点で判定が決まります。①鍵は全部返せるか ②契約書に退去時の鍵交換を借主負担とする特約があるか ③入居時に鍵交換費用を払ったか。10のケースに分けました。

退去時の鍵交換費用 ケース別の判定(ガイドライン・標準契約書の区分をもとに整理)

ケース判定根拠・注意点
渡された鍵を全部返した。特約なし払わない別表1で貸主負担。標準契約書の別表第5も同じ
1本紛失した払う(シリンダー交換の全額)別表2。経過年数は考慮しない
合鍵を自分で作り、原本と一緒に全部返した原則払わない全部回収されていれば紛失にならない。合鍵を作ったことは事前申告が筋
合鍵を作り、返していない・申告していない払う可能性が高い回収できない鍵がある=紛失と同じ状態
オートロックのカードキー・電子キーを紛失払う。ただし内訳を確認カードの再発行で済むか、共用部の設定変更まで要るかで額が変わる
入居時に鍵交換費用を払っている。全部返した。特約なし払わない入居時の分は自分の防犯、退去時の分は次の人の防犯。二重に負う理由がない
入居時に鍵交換費用を払っている。1本紛失払う入居時に払った事実は紛失の責任を消さない
前の入居者の鍵が残っていた・入居時に交換されていなかった払わない。入居時に払った分は返還を求める余地入居時の特約は「交換すること」が前提。交換の事実を管理会社に確認する
特約なし。退去時に一律で鍵交換代を請求された払わない根拠を書面で求める。ガイドライン別表1を示す
特約に「退去時の鍵交換費用は借主負担」と金額まで書いてある有効なら払う国交省Q&A「契約にその旨の規定がある場合には有効なものとして扱われる」。争えるのは3要件を欠くとき
特約に「退去時の鍵交換費用は借主負担」とあるが金額なし・説明なし争える金額の具体性と認識・合意が欠ける。次章の表で確認

表の下3行がいちばん見落とされます。特約がなければ払わない。特約が有効なら払う。この2つを混ぜると、払わなくていい人が払い、払う必要のある人が争って時間を失います。

合鍵と「揃っている」の判定は、渡された本数が基準

紛失かどうかは、入居時に渡された本数と種類がそろっているかで判定されます。標準契約書の頭書に「鍵No.・本数」の欄があるのはこのためです。渡された本数を覚えていない人は、契約書の頭書か入居時の鍵受領書を探してください。

大東建託の物件では、入居時に青色の鍵3本と黄色の鍵1本を渡す方式です。公式FAQによると、黄色の鍵は退去時に使うもので部屋の開け閉めはできず、退去時に4本そろっていなければ作成費用を負担し、金額は賃貸借契約書の特約事項・特記事項で確認する扱いです。紛失分を後日見つけても返金はしない、との記載もあります。

黄色の鍵は使わないので、引越しの荷物に紛れやすい鍵です。使わない鍵ほど、退去の1週間前に所在を確かめる

鍵の種類で交換される範囲と費用の出方が変わる

鍵交換費用は、鍵の種類で「何が交換されるか」が変わります。金額の相場は国や自治体の統計がなく、民間サイトの種類別の金額は出所が書かれていないものが多いので、ここでは金額を置きません。代わりに見積書の内訳を読むための区分を示します。

鍵の種類と、交換の範囲・見積書で確認する点(金額は業者・管理会社差が大きく未確認)

鍵の種類見た目・特徴紛失時に交換されるもの見積書で確認する点
ディスクシリンダー・ピンシリンダー片面か両面がギザギザの一般的な鍵玄関のシリンダー1個。鍵数本が付属部品代と作業費の区分。出張費の有無
ディンプルキー表面に丸いくぼみが並ぶ。複製に専用機が要るシリンダー1個。部品代が上の型より高い「防犯性の高い型へ交換」の名目で入居時の型より上げていないか
電子錠・スマートロック暗証番号やスマホで開ける。物理鍵が併用のことも物理鍵の紛失なら物理シリンダー側。設定変更で済む場合も交換か設定変更か。本体交換なら故障でない限り借主負担の理由を確認
オートロックのカードキー・非接触キー玄関と共用エントランスを1枚で開けるカード再発行。建物側の登録抹消・再登録共用部の設定変更費が全戸分で乗っていないか。住戸分だけが筋

同じ「鍵交換」でも、シリンダーだけの交換か、錠前一式か、建物側の設定まで含むかで見積書の桁が変わります。紛失で払う場合でも、負担するのは自分の住戸の鍵の回復に要る分です。

費用の目安は契約書の別表と見積書で

契約書に「原状回復工事施工目安単価」の別表が付いていれば、「玄関ドアの鍵」の欄に単価が書いてあることがあります。標準契約書の別表第5にはこの欄があり、ガイドラインも記入を勧めています。書いてあれば、それが契約上の目安です。

書いていなければ、請求時に見積書の提示を求めます。ガイドラインの負担単位は「シリンダーの交換」なので、見積がドアごと・錠前一式になっていたら、なぜシリンダー交換で済まないのかを聞きます。

「退去時の鍵交換費用は借主負担」の特約があるとき

契約書の特約欄に「退去時、鍵交換費用として◯円を借主が負担する」と書いてある場合、話は「払わなくていい」では終わりません。国土交通省の「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」には、こう書かれています。

Q.退去時に鍵の交換費用、ハウスクリーニング費用を借主(入居者)が負担することになっている特約は有効なのでしょうか。

A.契約にその旨の規定がある場合には、鍵交換等の特約は有効なものとして扱われます。これらの特約の有効性に関しては、最高裁の判断も示されています。

つまり特約がある物件では、退去時の鍵交換費用を払うのが出発点です。払わずに済むのは、特約が無効と判断される場合に限られます。

特約が有効になる条件は3つ。書き方で見分ける

通常の原状回復を超える負担を借主に課す特約は、①客観的・合理的理由 ②借主の認識 ③借主の意思表示、の3要件を満たさないと効力を争われます(再改訂版 P.6)。3要件の中身と最高裁平成17年12月16日の枠組みは退去の掃除はどこまで?のクリーニング特約の章で書いたので、ここでは鍵交換特約の書き方別に見方を整理します。

鍵交換特約の書き方別の見方

特約の書き方有効性の見方動き方
「退去時、鍵交換費用◯円(税込)を借主負担とする」。重説にも記載。署名あり有効とされやすい払う。金額が入居時の交換と同水準か、シリンダー交換に相応かは確認
「退去時の鍵交換費用は借主負担」。金額なし争える金額の具体性を欠く。見積の内訳を求め、シリンダー交換相当を超える分は理由を聞く
「原状回復費用は借主負担」とだけ書いてあり、鍵の記載なし鍵の請求根拠にならない原状回復の範囲はガイドラインの区分。紛失がなければ鍵は貸主負担
「鍵を紛失した場合、シリンダー交換費用は借主負担」有効。ただし紛失時だけ全部返していれば適用されない
入居時に鍵交換費用を払い、かつ退去時負担の特約もある特約が有効なら払う。ただし2回分の合理性を問える入居時の交換は自分の防犯、退去時は次の人の防犯。同じ人が2回負う理由の説明を求める

裁判所は入居時と退去時で見方が違う

ガイドラインの裁判事例集に、鍵交換費用の判断が2つ載っています。方向が逆なのは、入居時と退去時の違いです。

東京地方裁判所の平成21年9月18日判決(事例36・P.103〜104)は、入居時に払った鍵交換費用1万2600円の特約を有効としました。募集チラシと重要事項説明書に記載があり、契約時に口頭で説明され、借主が契約金に含めて支払っていたので「明確に合意されている」。鍵を替えることは前の借主の鍵を使った侵入を防ぎ、借主の防犯に資する。金額も相応。この3点で、消費者契約法10条には反しないという判断でした。

一方、枚方簡易裁判所の平成17年10月14日判決(事例23・P.89)は、退去時に貸主が主張した鍵交換代を「賃借人には負担義務のない費用である」として、敷金全額の返還を命じています。

2つを並べると、入居時の交換は借主自身の防犯に資するので特約が通りやすく、退去時の交換は次の人のためなので借主に負わせる理由が弱い、という線が見えます。退去時負担の特約を争うときの軸です。

東京都の物件は「説明書」に特約が書いてあるはず

東京都内の居住用賃貸には賃貸住宅紛争防止条例(2004年10月施行)があり、宅建業者は重要事項説明に併せて、原状回復の考え方と「実際の契約における賃借人の負担内容(特約の有無や内容)」を書面で説明する義務があります。

事例36でも、この条例に基づく説明書が特約の合意を裏づける証拠になりました。東京都の物件なら条例の説明書にその特約が載っているかが決め手のひとつで、載っていなければ認識と意思表示の要件を欠く主張ができます。都外の物件でも、国のガイドラインの3要件は同じです。

請求されたときの確認手順とメール文

退去立会いの場や精算書で鍵交換費用が出てきたら、その場で判断せず、書面で根拠を求めます。立会いの署名は「確認した」の意味を持つので、納得できない項目があるまま署名しないのが先です。

  1. 渡された鍵を全部返したか、本数を契約書の頭書と照合する。合鍵を作っていれば一緒に返し、その旨を伝える
  2. 契約書の特約欄と別表を開き、「鍵」の記載を探す。金額の有無・「紛失時」の限定の有無を確認する
  3. 入居時の精算書や領収書で、鍵交換費用を払っているかを確認する
  4. 請求の根拠(特約の条項番号・見積書の内訳)を書面かメールで求める。電話だけで済ませない
  5. 回答がガイドライン別表1と食い違うなら、該当ページを示して再検討を求める
  6. それでも平行線なら、消費生活センター(188)か東京都の賃貸ホットライン(03-5320-4958)に相談する

メール文の型(鍵を全部返し、特約もない場合)

件名:退去精算書の「鍵交換費用」について
◯月◯日の退去立会いの精算書に「鍵交換費用 ◯円」が計上されていましたので、根拠を確認させてください。
入居時にお預かりした鍵◯本はすべて返却済みで、紛失・破損はありません。賃貸借契約書の特約欄と別表にも、退去時の鍵交換費用を借主負担とする記載は見当たりませんでした。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」別表1では、破損・紛失のない鍵の取替えは「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題」として貸主負担とされています。
この項目を請求される根拠となる契約条項があれば、条項番号をお示しください。無い場合は、精算書から除外していただくようお願いします。

メール文の型(入居時に鍵交換費用を払っている場合)

件名:鍵交換費用の二重計上について
退去精算書の「鍵交換費用 ◯円」について確認です。入居時の精算書(◯年◯月◯日)で鍵交換費用◯円をすでに支払っており、鍵は◯本すべて返却済みです。
入居時の交換は前入居者の鍵を無効にするためのもの、退去時の交換は次の入居者のためのものと理解しています。同じ借主が両方を負担する根拠となる特約があれば条項番号をお示しください。無い場合は除外をお願いします。

どちらも相手を責める言葉を入れず、条項番号を聞く形にしています。仲介の現場で見てきた範囲では、書面で根拠を求めた時点で鍵交換費用が精算書から消えるケースが大半でした。

精算書全体の見方と他の費目の相場は退去費用の相場、敷金から差し引かれたまま返ってこないときの動き方は敷金が返金されない時の請求方法で続きを扱っています。退去連絡から精算までの日程は賃貸の退去連絡はいつまで?にまとめています。

よくある質問

Q1:鍵を全部返したのに退去時に鍵交換費用を請求されました。払う必要がありますか?

契約書に退去時の鍵交換費用を借主負担とする特約がなければ、払う必要はありません。国交省ガイドライン別表1は、紛失・破損のない鍵の取替えを貸主負担としています。請求の根拠となる条項番号を書面で求めてください。金額まで明記された特約があり説明も受けていた場合は、払う側になります。

Q2:入居時に鍵交換費用を払っています。退去時にも払うのは二重取りではありませんか?

法的には別の費用ですが、同じ借主が両方を負う理由は弱いです。入居時の交換はあなたの防犯のため、退去時の交換は次の入居者のため。鍵を全部返し、退去時負担の特約がなければ、退去時の分は払いません。特約がある場合でも、2回分を負担させる合理性を問う余地があります。

Q3:鍵を1本なくしました。長く住んでいれば安くなりますか?

なりません。ガイドライン別表2は「鍵の紛失の場合は、経過年数は考慮しない。交換費用相当分を全額賃借人負担」としています。壁紙のような6年の減価はありません。負担する範囲はシリンダーの交換で、ドアや錠前一式ではないので、見積書の内訳は確認してください。

Q4:合鍵を作っていました。退去時にどうすればいいですか?

原本と合鍵をすべて返し、合鍵を作っていたことを伝えてください。回収できない鍵がなければ、紛失には当たりません。申告せずに合鍵を手元に残すと、回収できない鍵がある状態=紛失と同じ扱いになり、シリンダー交換費用を負う可能性が出ます。

Q5:オートロックのカードキーをなくしました。建物全体の費用を請求されますか?

負担するのは自分の住戸の鍵の回復に要る分です。カードの再発行と、建物側の登録抹消・再登録が一般的な範囲になります。全戸分の設定変更や共用部の錠交換まで乗っていたら、その理由を確認してください。金額は建物の設備で大きく違い、公的な目安はありません。

Q6:大東建託の黄色い鍵をなくしました。どうなりますか?

大東建託の公式FAQでは、退去時に鍵(青色3本・黄色1本)がそろっていない場合は作成費用を負担し、金額は賃貸借契約書の特約事項・特記事項で確認する案内です。退去精算時に合算で請求され、紛失分を後日見つけても返金はされません。黄色の鍵は使わない鍵なので、退去の1週間前に所在を確かめてください。

まとめ

  • 退去時の鍵交換費用は鍵を全部返していれば貸主負担。ガイドライン別表1・標準契約書の別表第5が根拠
  • 紛失は経過年数を考慮せず全額。負担の単位はシリンダー交換で、錠前一式やドアではない
  • 入居時の鍵交換費用はガイドラインの外・標準契約書に条項なし。個別の特約で成り立つ費用で、退去時の請求とは別物
  • URは入居時に取らず退去時は状況次第。入居時か退去時のどちらか一方が本来の姿
  • 「退去時の鍵交換費用は借主負担」の特約は、契約に規定があれば有効として扱われる(国交省Q&A)。争えるのは3要件を欠くとき
  • 裁判所は入居時の特約に肯定的、退去時の請求に否定的(東京地裁H21.9.18/枚方簡裁H17.10.14)
  • 請求されたら書面で条項番号と見積の内訳を求める。相談先は188か東京都の賃貸ホットライン

契約書の特約欄と別表に「鍵」の記載があるかを開いて確かめ、渡された本数をそろえて返す。この2つで、退去時の鍵交換費用の請求はほとんど片づきます。精算書に他の費目が並んでいるときは退去費用の相場で、掃除の範囲で迷うときは退去の掃除はどこまで?で続きを確認してください。

免責事項

※本記事は民法の条文、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」「賃貸住宅標準契約書」、東京都の条例・ガイドライン、UR・管理会社の公式案内(2026年9月時点)と不動産仲介の現場で見てきた事例をもとに整理した一般的な情報です。ガイドラインに法的拘束力はなく、負担区分・特約の有効性は個々の契約書と物件の状態により異なります。個別の契約判断・法律相談は宅地建物取引士・弁護士・消費生活センター等の有資格者・公的窓口にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Ishidaです。地方都市の不動産仲介会社で営業アシスタントを10年務め、店長や主任の物件案内と契約立会いに同席しながら、年間1,500件を超える部屋を見送ってきました。

いちばん記憶に残っているのは、退去のときに高額な原状回復費を請求されて揉めるケースです。その多くは、契約の際に重要事項説明を聞き流していた方でした。逆に、最初にひと言確認しておくだけで防げたトラブルも数えきれません。

自分自身も7回引っ越し、そのたびに見積もりや初期費用の相場を体で覚えました。現場で見てきたことと、借り手として直面した実感の両方から、後悔しない部屋探しと引越しを整理しています。契約前の疑問は、遠慮なく不動産会社に確かめてくださいね。

目次