退去時のエアコンクリーニング費用は払うべき?|ガイドラインの負担区分・特約が有効になる条件・喫煙やカビで変わる判定・フィルター掃除で減るか・敷金精算の見方

退去時のエアコンクリーニング費用は、喫煙などの臭いが付いていなければ貸主負担が国土交通省ガイドラインの整理です(別表1・P.21)。借主が払うのは、金額まで書かれた有効な特約があるときと、ヤニ・カビ・水漏れ放置など自分の使い方が原因のとき。フィルター清掃までが借主の通常の手入れで、内部洗浄は含まれません。

この記事でわかること

  • ガイドラインがエアコンについて書いている4か所(別表1・2・3とQ&A)と、それぞれの結論
  • 「クリーニング代は借主負担」の特約が有効になる3つの判断軸。有効とされた判決と、無効とされた判決
  • 特約なし・喫煙・ペット・カビ・フィルター未清掃・持込エアコンなど11ケースの判定表
  • フィルターを自分で掃除すれば安くなるか。自分で業者を呼んでよいか
  • 相場の数字が出所を持たない理由と、契約書と精算明細で金額を読む方法
  • 請求されたときの確認手順とメール文。相談先の電話番号

出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について同 再改訂版 全文(PDF)国土交通省「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」民法(e-Gov法令検索)

目次

退去時のエアコンクリーニング費用は原則貸主負担。ガイドラインの4か所

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版・2011年8月)は、エアコンに4か所で触れています。結論はそろっていて、内部洗浄は喫煙等の臭いが付いていなければ貸主負担です。

ガイドラインがエアコンについて書いている箇所(再改訂版・ページは印刷ページ)

箇所記述負担
別表1(P.21)「エアコンの内部洗浄」。考え方=「喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において必ず行うとまでは言い切れず、賃借人の管理の範囲を超えている」貸主
別表1(P.19)「エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡」=通常の損耗。「クーラー(賃貸人所有)から水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食」=手入れを怠った結果ビス穴は貸主/放置腐食は借主
別表2(P.24)「クリーニングについて、経過年数は考慮しない。賃借人負担となるのは、通常の清掃を実施していない場合で、部位もしくは住戸全体の清掃費用相当分を全額賃借人負担とする」借主負担になるときは全額
別表3(P.25)契約書に添付する負担区分の様式。貸主側に「エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)」、借主側に「タバコ等のヤニ・臭い」様式で明文化

見落とされやすいのは別表2です。壁紙なら6年で残存価値1円まで負担が減りますが、クリーニングは経過年数を考慮しない。借主負担になる場面では、住んだ年数に関係なく清掃費用の全額です。逆に言えば、借主負担にならない場面では1円も払いません。

民法の位置づけ。設備の修繕は貸主、使い方の責任分だけ借主

備え付けのエアコンは建物の設備です。民法606条は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とし、ただし書きで除くのは借主の責めに帰すべき事由で修繕が要る場合だけです。

退去時の原状回復を定めた民法621条も、通常の使用による損耗と経年変化を借主の義務から外しています。エアコン内部のホコリやカビは、普通に冷暖房を使えば付くもの。次の入居者のために洗うのは貸主の維持管理で、前の借主が汚したから洗うわけではありません。

「通常の清掃」の線はフィルターまで

ガイドラインが借主に求める通常の清掃は、「ゴミの撤去、掃き掃除、拭き掃除、水回り、換気扇、レンジ回りの油汚れの除去等」(P.21)です。エアコンの内部はこの例に入っていません。

フィルターのホコリ取りは日常の手入れの範囲です。大東建託の公式FAQもフィルター清掃を月1回の目安で案内し、内部の分解洗浄は「故障の原因となりますので、必ず専門業者への依頼を」としています。フィルターは借主の手入れ、内部洗浄は貸主の維持管理。この線が判定の土台です。

国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版)の別表第5にも、貸主負担の欄に「エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)」が入っています。標準契約書をもとにした契約書なら、自分の別表にも貸主負担と書いてあるはず。契約書の読み方は賃貸契約書の見方で扱っています。

「エアコンクリーニング代は借主負担」の特約があるとき

契約書の特約欄に「退去時、エアコンクリーニング費用として1台◯円を借主が負担する」と書いてあれば、話は「払わなくていい」では終わりません。国土交通省の「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」にはこう書かれています。

Q.退去時に鍵の交換費用、ハウスクリーニング費用を借主(入居者)が負担することになっている特約は有効なのでしょうか。

A.契約にその旨の規定がある場合には、鍵交換等の特約は有効なものとして扱われます。これらの特約の有効性に関しては、最高裁の判断も示されています。

特約がある物件では、払うのが出発点。払わずに済むのは、その特約が無効と判断される場合に限られます。

クリーニング特約の3つの判断軸(ガイドラインQ16)

ガイドラインのQ&A(Q16・P.45)は、クリーニング特約の有効・無効を次の点から判断するとしています。

  1. 借主が負担する内容・範囲が示されているか
  2. 本来は借主負担にならない通常損耗分も負担させる趣旨と、その具体的範囲が明記されているか、または口頭で説明されているか
  3. 費用として妥当

同じQ16が、判断の分かれた2つの東京地裁判決を並べています。有効とされたのは、「汚損の有無及び程度を問わず専門業者による清掃を実施し、その費用として2万5000円(消費税別)を負担する」という特約(東京地裁平成21年9月18日)。契約時に内容が説明され、金額が月額賃料の半額以下で、専門業者の清掃費用として相応。この3点で消費者契約法10条にも反しないとされました。

無効側は、「ルームクリーニングに要する費用は賃借人が負担する」とだけ書いた特約(東京地裁平成21年1月16日)。これは一般的な原状回復義務を定めたもので、通常損耗まで借主に負わせる特約とは言えない、という判断です。金額も範囲も書いていない特約は、この型に入ります。

エアコンが名指しで争われた例もあります。京都地裁平成19年6月1日(事例27・P.93)は、物件の汚損・損耗を「一切」借主負担とする特約を消費者契約法10条で無効とし、「トイレ・エアコン・キッチン等の清掃費用については、賃借人には通常の使用による損耗を原状回復する義務はない」として敷金20万円全額の返還を命じました。

特約の書き方別の見方

エアコンクリーニング特約の書き方と、有効性の見方

特約の書き方有効性の見方動き方
「退去時、エアコンクリーニング費用1台◯円(税込)を借主負担とする」。重説にも記載。署名あり有効とされやすい払う。金額が内部洗浄1台の作業として相応かは確認
「退去時、ハウスクリーニング費用◯円を借主負担」とあり、エアコンの記載なしエアコン分の上乗せは争える定額にエアコンが含まれるかを聞く。含まれないなら別表1で貸主
「クリーニング費用は借主負担」。金額なし争える内容・範囲・金額を欠く。東京地裁H21.1.16の型
「原状回復費用は一切借主負担」通常損耗分は無効の可能性京都地裁H19.6.1の型。エアコン清掃は通常損耗側
「喫煙した場合はエアコンクリーニング費用を借主負担」有効。ただし喫煙時だけ喫煙していなければ適用されない
敷金なし・定額クリーニング方式(契約書に定額の記載)契約書の金額どおり払う定額に原状回復費が含まれる。故意過失分だけ別途(大東建託の公式FAQ)

「ハウスクリーニング特約」にエアコンは含まれるか

いちばん多い揉め方がここです。ハウスクリーニングの定額特約に合意していたら、退去精算でエアコンクリーニングが別の行で上乗せされていた。この場合、見るのは特約の文言に「エアコン」の語があるかどうかです。

ガイドラインの別表1・別表3も、標準契約書の別表第5も、「全体のハウスクリーニング」と「エアコンの内部洗浄」を別の項目として並べています。ハウスクリーニングの合意は、それだけではエアコン内部洗浄の合意になりません。特約に書いていない項目は、原則の別表1に戻って貸主負担です。

東京都内の物件なら、賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書に特約の内容が載っているはずです。そこにエアコンの記載がなければ、認識と合意を欠く主張ができます。特約の3要件(客観的合理性・認識・意思表示)と最高裁平成17年12月16日の枠組みは退去の掃除はどこまで?で書いたので、そちらを参照してください。

ケース別。払わなくていい場合と払う場合の判定表

判定は3点で決まります。①特約に「エアコン」と金額が書いてあるか ②臭い・カビ・水漏れ放置など自分の使い方が原因の汚損があるか ③そのエアコンは貸主の設備か、自分で持ち込んだものか。11のケースに分けました。

退去時のエアコンクリーニング費用 ケース別の判定(ガイドライン・標準契約書の区分をもとに整理)

ケース判定根拠・注意点
特約なし。通常使用。フィルターはときどき掃除払わない別表1(P.21)で貸主負担。標準契約書の別表第5も同じ
特約なし。フィルターを一度も掃除していない原則払わない。ただし争点になりうる内部洗浄は貸主側。ホコリの固着で「手入れを怠った」と見られる余地はある
特約あり。「エアコンクリーニング1台◯円」と明記・説明あり払う国交省Q&A。争えるのはQ16の判断軸を欠くとき
特約あり。金額も範囲もなし争える東京地裁H21.1.16の型
喫煙でヤニの臭いが付いている払う別表1(P.21)の但し書き。別表3「タバコ等のヤニ・臭い」
ペットの毛・臭いが付いている払う可能性が高い別表1(P.20)「飼育ペットによる柱等のキズ・臭い」は借主。エアコン内部も臭いの付着で同じ扱い
結露や水漏れを放置してカビ・腐食が出た払う可能性が高い別表1(P.19)。通知せず手入れも怠った場合は通常損耗を超える
内部に汚れはあるが、通常使用の範囲。特約なし払わない使えば付く汚れは通常損耗。次の入居者のための洗浄は貸主
自分で内部洗浄スプレーを使い、故障・水漏れが出た修理費を負う可能性用法違反・善管注意義務。大東建託も分解洗浄は故障の原因として業者依頼を案内
自分で買って取り付けたエアコンクリーニング費用は発生しない撤去は自分で。設置のビス穴・跡は通常損耗(P.19)。残していくなら書面で合意
退去時に自分で業者を手配して洗浄したい契約書に貸主指定の規定がなければ相談できるガイドラインQ15(P.44)。指定業者の規定があればそれに従う
敷金なし物件で退去時に一括請求された上の各行と同じ判定敷金の有無で負担区分は変わらない。請求の根拠は同じく特約か汚損の事実

喫煙・ペット・カビの線は「臭い・汚損が付着しているか」

別表1の考え方は「喫煙等による臭い等が付着していない限り」貸主負担、という書き方です。つまり基準は喫煙の有無そのものより、エアコンに臭いや汚損が残っているか。ベランダで吸っていて室内に臭いがなければ、特約がない限り借主負担の理由は立ちません。

ペットも同じで、別表1(P.20)は「臭いが付着している場合」に借主負担としています。カビは結露や水漏れを放置し、貸主に知らせず手入れも怠った場合が借主側です(P.19)。水漏れに気づいた時点で管理会社に連絡した記録があれば、放置には当たりません。故障・水漏れの連絡の仕方は賃貸のエアコンが故障したときの対処法で扱っています。

自分で持ち込んだエアコンにクリーニング費用は発生しない

入居者所有のエアコンは、退去時に自分で撤去します。取り外しと運搬の費用は借主側。設置で開けたビス穴と跡は通常の損耗として貸主負担です(別表1・P.19)。残していきたい場合は、貸主が引き取るか処分費を誰が持つかを書面で決めておきます。

フィルターを自分で掃除すれば安くなるか。自分で業者を呼べるか

答えは特約の有無で分かれます。特約が定額なら、掃除しても金額は減りません。東京地裁平成21年9月18日で有効とされた特約の文言は「汚損の有無及び程度を問わず」でした。定額の特約は「きれいでも払う」約束として合意しているので、自分で掃除した分は差し引かれません。

特約がない場合は逆で、フィルターを掃除しておくことに意味があります。「通常の清掃を実施している」状態を示せるので、別表2の「通常の清掃を実施していない場合」に当たらないと言える材料になります。やることは、退去前にフィルターを洗って乾かし、写真を1枚残すだけ。

内部洗浄スプレーは使わないほうが安全です。大東建託の公式FAQは「エアコン内部の分解洗浄は故障の原因となりますので、必ず専門業者への依頼を」としています。自分で内部に手を入れて水漏れや故障を起こすと、負うのはクリーニング代より高い修理代。

自分で業者を手配できるかは契約書の書き方次第

ガイドラインQ15(P.44)は、原状回復工事を借主自ら行う、または借主が指定した業者に行わせることができるかに答えています。契約書に「貸主または貸主の指定した業者が行う」と規定されていればそれに従い、単に「借主は原状回復を行う」とだけ書いてあれば借主側で行うことも可能、という整理です。

ただし2つ注意があります。返還期日までに終えないと賃料や遅延損害金が発生しうること。そして特約が定額なら、自分で業者を呼んでも定額の支払いは消えないことです。自分で手配する意味があるのは「特約なし、または金額なしの特約で、汚損があって借主負担になる場面」に絞られます。

相場は公的統計がない。金額は契約書と明細で読む

エアコンクリーニングの費用相場は、国や自治体の統計がありません。民間サイトの「1台1万〜1.5万円」という数字は出所が書かれていないものばかりなので、ここでは金額を置きません。代わりに、金額が書いてある場所を3つ挙げます。

  • 契約書の特約欄。「エアコンクリーニング費用 1台◯円」の記載があれば、それが契約上の金額
  • 契約書に添付された別表の「原状回復工事施工目安単価」。標準契約書の別表第5とガイドラインP.27の様式には「エアコン(台)」の欄がある
  • 退去精算の明細。貸主には敷金から差し引く費用の説明義務があり、借主は明細と説明を求められる(ガイドラインQ17・P.45)

管理会社の公式案内も、金額でなく「方式」を書いています。UR賃貸住宅は入居時にクリーニング費用を取らず、「退去時には住戸の状況により、鍵交換費用、クリーニング費用等をお支払いいただく場合がございます」という案内。大東建託は定額クリーニングプランの利用者について「原状回復費がクリーニング費に含まれています(故意過失等による破損・汚損がある場合には別途費用がかかります)」とし、契約書にクリーニング費か敷金のどちらかの金額が記載されている、としています。

精算明細でエアコンの行を読むときの確認点

退去精算明細の「エアコン」行で確認する点

確認する点見るところ気になる例
名目「エアコン内部洗浄」単独か、「ハウスクリーニング一式」の内数か一式にも含まれ、別行でも計上されている二重計上
台数部屋に備え付けの台数と一致するか1台の部屋で2台分
根拠特約の条項番号か、臭い・カビなど汚損の事実かどちらも書かれず「通常の精算」とだけ
経過年数クリーニングは考慮しない(別表2)。設備の毀損なら耐用年数6年で減価洗浄費と部品交換費が1行に混ざっている
特約の金額が税込か税別か特約は税込表示なのに明細で税を上乗せ

敷金精算の流れ。差し引かれてからでも明細は求められる

民法622条の2は、敷金から借主の債務額を差し引いた残額を、明渡し後に返還する義務を貸主に課しています。差し引く費用の根拠を示すのは貸主側の仕事。ガイドラインQ17は「賃借人は原状回復費用の内容・内訳の明細を請求し、説明を求めることができます」としています。

返金の時期は管理会社で違い、大東建託は退去日から約1ヶ月を目途と案内しています。明細が来ない、来たがエアコンの行に納得できない、という段階からの動き方は敷金が返金されない時の請求方法に続きがあります。

請求されたときの確認手順とメール文

退去立会いの場や精算書でエアコンクリーニング費用が出てきたら、その場で決めず、書面で根拠を求めます。立会いの署名は「確認した」の意味を持つので、納得できない項目を残したまま署名しないのが先です。署名の扱いは賃貸の退去連絡はいつまで?の日程と合わせて確認してください。

  1. 契約書の特約欄と別表を開き、「エアコン」「クリーニング」の記載と金額の有無を確認する
  2. エアコンに臭い・カビ・水漏れの跡がないか、退去前にフィルターを洗った写真とあわせて手元にそろえる
  3. 請求の根拠(特約の条項番号か、汚損の事実か)と明細の内訳を、書面かメールで求める。電話だけで済ませない
  4. ハウスクリーニング特約しかないのにエアコンが別行なら、定額に含まれるかを聞く
  5. 回答がガイドライン別表1と食い違うなら、該当ページ(P.21・P.25)を示して再検討を求める
  6. 平行線なら、消費生活センター(188)か東京都の賃貸ホットライン(03-5320-4958)に相談する

メール文の型(特約なし・喫煙なしの場合)

件名:退去精算書の「エアコンクリーニング費用」について
◯月◯日の退去立会いの精算書に「エアコンクリーニング費用 ◯円」が計上されていましたので、根拠を確認させてください。
賃貸借契約書の特約欄と別表には、退去時のエアコンクリーニング費用を借主負担とする記載は見当たりませんでした。室内での喫煙はなく、エアコンに臭いやカビの付着もありません。フィルターは退去前に清掃しています。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」別表1では、エアコンの内部洗浄は喫煙等の臭いが付着していない場合は貸主負担とされています。
この項目を請求される根拠となる契約条項があれば、条項番号をお示しください。無い場合は、精算書から除外していただくようお願いします。

メール文の型(ハウスクリーニング特約はあるが、エアコンが別行の場合)

件名:エアコンクリーニング費用の計上について
退去精算書に「ハウスクリーニング費用 ◯円」と「エアコンクリーニング費用 ◯円」が別々に計上されていましたので確認です。
契約書の特約にはハウスクリーニング費用◯円の記載がありますが、エアコンの記載はありません。特約の定額にエアコン内部洗浄が含まれているのか、含まれていないとすれば別途請求の根拠となる条項番号をお示しください。
別途の合意が無い場合、エアコンの内部洗浄は国土交通省ガイドライン別表1で貸主負担とされていますので、除外をお願いします。

どちらも相手を責める言葉を入れず、条項番号を聞く形です。仲介の現場で見てきた範囲では、書面で条項番号を求めた時点でエアコンの行が精算書から消えるか、ハウスクリーニングの定額に吸収される形で落ち着くことがほとんどでした。

精算書に他の費目が並んでいるときは退去費用の相場、同じ精算書に鍵交換費用が乗っているときは退去時の鍵交換費用は払うべき?で続きを扱っています。

よくある質問

Q1:退去時にエアコンクリーニング代を請求されました。契約書に特約はありません。払う必要がありますか?

喫煙などの臭いが付いていなければ、払う必要はありません。国交省ガイドライン別表1(P.21)は、エアコンの内部洗浄を貸主負担としています。次の入居者のための洗浄は貸主の維持管理です。請求の根拠となる条項番号を書面で求めてください。

Q2:契約書に「エアコンクリーニング1台◯円」と書いてあります。払わないといけませんか?

金額と対象が明記され、契約時に説明を受けて署名していれば、払う側です。国交省のQ&Aは「契約にその旨の規定がある場合には有効なものとして扱われる」としています。争えるのは、金額が内部洗浄1台の作業として不相応に高い、説明を一切受けていない、といったQ16の判断軸を欠く場合に限られます。

Q3:室内でタバコを吸っていました。エアコンクリーニング代はいくら請求されますか?

臭いが付着していれば借主負担になり、金額は業者の見積によります。公的な目安はありません。負担するのはエアコン内部洗浄の費用で、経過年数による減額はありません(別表2)。見積が「洗浄」でなく本体交換になっていたら、なぜ洗浄で済まないのかを聞いてください。

Q4:フィルターを一度も掃除していません。内部洗浄代まで払うことになりますか?

特約がなければ、原則は貸主負担のままです。内部洗浄はもともと借主の通常の清掃に入っていません。ただしホコリが固着して「手入れを怠った」と見られると争点になります。退去前にフィルターを洗って乾かし、写真を残しておくと、通常の清掃をしている状態を示せます。

Q5:自分で買って取り付けたエアコンです。退去時にクリーニング代を払うのですか?

払いません。入居者所有のエアコンに貸主のクリーニング費用は発生しません。やることは退去時に自分で撤去することで、設置のビス穴と跡は通常の損耗として貸主負担です(別表1・P.19)。残していきたい場合は、貸主が引き取るかどうかを書面で決めておいてください。

Q6:敷金からエアコンクリーニング代が引かれて、返金が少なくなっていました。今からできることは?

明細と説明を求められます。ガイドラインQ17は、借主が原状回復費用の内訳の明細を請求し、説明を求めることができるとしています。特約の条項番号か汚損の事実のどちらも示されなければ、差し引き分の返還を書面で求め、平行線なら消費生活センター(188)に相談してください。

まとめ

  • 退去時のエアコンクリーニング費用は喫煙等の臭いが付いていなければ貸主負担。ガイドライン別表1(P.21)・標準契約書の別表第5が根拠
  • 借主の通常の清掃はフィルターまで。内部洗浄は貸主の維持管理
  • クリーニングは経過年数を考慮しない。借主負担になる場面では全額、ならない場面では0円
  • 「借主負担」の特約は契約に規定があれば有効として扱われる(国交省Q&A)。争えるのは内容・範囲・金額を欠くとき(Q16)
  • 有効例は2万5000円・月額賃料の半額以下(東京地裁H21.9.18)、無効例は金額なしの一文(東京地裁H21.1.16)と「一切借主負担」(京都地裁H19.6.1)
  • ハウスクリーニング特約だけではエアコン内部洗浄の合意にならない。別表でも別項目
  • 定額特約なら自分で掃除しても減らない。特約がなければフィルター清掃の写真が通常清掃の証拠になる
  • 相場の公的統計はない。金額は特約欄・別表の目安単価・精算明細で読み、明細は請求できる(Q17)

契約書の特約欄に「エアコン」と金額があるかを開いて確かめ、退去前にフィルターを洗って写真を残す。この2つで、退去時のエアコンクリーニング費用の請求はほとんど片づきます。掃除の範囲全体で迷うときは退去の掃除はどこまで?で、精算書の他の費目は退去費用の相場で続きを確認してください。

免責事項

※本記事は民法の条文、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」「賃貸住宅標準契約書」、東京都の条例・ガイドライン、UR・管理会社の公式案内(2026年9月時点)と不動産仲介の現場で見てきた事例をもとに整理した一般的な情報です。ガイドラインに法的拘束力はなく、負担区分・特約の有効性は個々の契約書と物件の状態により異なります。個別の契約判断・法律相談は宅地建物取引士・弁護士・消費生活センター等の有資格者・公的窓口にご相談ください。

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この記事を書いた人

Ishidaです。地方都市の不動産仲介会社で営業アシスタントを10年務め、店長や主任の物件案内と契約立会いに同席しながら、年間1,500件を超える部屋を見送ってきました。

いちばん記憶に残っているのは、退去のときに高額な原状回復費を請求されて揉めるケースです。その多くは、契約の際に重要事項説明を聞き流していた方でした。逆に、最初にひと言確認しておくだけで防げたトラブルも数えきれません。

自分自身も7回引っ越し、そのたびに見積もりや初期費用の相場を体で覚えました。現場で見てきたことと、借り手として直面した実感の両方から、後悔しない部屋探しと引越しを整理しています。契約前の疑問は、遠慮なく不動産会社に確かめてくださいね。

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