賃貸の入居前にやることリスト|鍵の受け取りから搬入までの順番

入居前にやることは、鍵を受け取ってから荷物を搬入するまでの空室の間に、①部屋の傷と設備を写真と確認リストで記録する②掃除と防カビ③くん煙剤(バルサン)④汚れを付けない保護、の順で進めます。記録が最優先で、国土交通省の原状回復ガイドラインも入居時の確認リストと写真を勧めています。

この記事でわかること

  • 鍵の受け取りから搬入までにやることの順番と、搬入後でいいこと・やらなくていいこと
  • 国土交通省ガイドラインの確認リスト(P.4〜5)に沿って、どこを・どう撮り・誰に出すか
  • クリーニング済みの部屋でも掃除する場所と、防カビまでの順番
  • バルサンの煙タイプと霧タイプの違い、火災警報器・ガス警報器・ペット・近隣の扱い
  • 100均で揃う保護グッズを、退去時に借主負担になる傷を防ぐ場所に絞って
  • 新築で変わること(24時間換気・養生・バルサンの要否)

出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」/民法(e-Gov法令検索)/レック株式会社「バルサン 60g」使い方/名古屋市「すべての住宅に住宅用火災警報器の設置が必要です」

目次

入居前にやることの全体像。鍵の受け取りから搬入までの順番

入居前にやることとは、鍵を受け取ってから荷物を運び入れるまでの間に、空室でしかできない作業を済ませることです。家具が入ると壁際も床も隠れるので、記録・掃除・くん煙・保護は搬入前の空室が唯一の機会になります。

順番は「後からやり直せないもの」から決めるとよさそうです。記録は家具が入る前にしかできず、くん煙剤は荷物が無い部屋でこそ薬剤が行き渡るからです。保護グッズは掃除の後でないと貼れません。

入居前にやることの順番(鍵の受け取り〜搬入)

  • 後からやり直せないものを先に。家具が入る前の空室でしかできない順に並べる
  • 1記録鍵を受け取った日に、部屋の傷・汚れ・設備の動作を写真と確認リストに残す。何より先
  • 2換気と掃除窓を開けて空気を入れ替え、上から下へ拭く。排水口に水を流し、浴室は防カビまで
  • 3くん煙剤掃除の後・搬入の前。警報器を覆い、2〜3時間閉め切り、換気して床に掃除機
  • 4保護グッズ乾いた面にマスキング・フィルター・キャスターカバーを付ける。搬入当日は床の養生

電気と水道は鍵の受け取り日から使えるように申し込む。掃除は水と灯りが無いと進まない

図:入居前は「記録→掃除→くん煙剤→保護」の順。家具が入る前の空室でしかできないものを先に置く。

鍵を受け取れるのは契約開始日から。前倒しは承諾が要る

鍵を渡されるのは、原則として契約書に書かれた契約開始日です。家賃はこの日から発生し、火災保険もこの日から始まります。契約開始日と引越し業者の搬入日を数日ずらして、その間を入居前の作業に使うのが一般的な組み方です。

「契約開始日より前に鍵だけ受け取って掃除したい」という相談は仲介の現場でよく聞きます。前の入居者の退去と原状回復工事が終わっていれば応じる管理会社もありますが、承諾なしに入室すると契約前の使用になり、破損があれば責任の切り分けができません。前倒しの入室は管理会社に書面かメールで承諾を取ってからにしてください。

鍵の受け取り自体は前日までに済ませておくのが安全です。当日に取りに行く段取りにすると、搬入トラックを待たせたまま管理会社へ走ることになりかねません。

入居前にやることの時系列と所要時間

鍵の受け取りから搬入まで2〜3日ある前提で並べたのが次の表です。1日しか無い場合は、記録と換気、排水口への通水、警報器の確認だけを先に済ませてください。

入居前にやることリスト(鍵の受け取り〜搬入前・所要時間は1K〜1LDKの目安)

日やること所要時間の目安飛ばすとどうなるか
鍵の受け取り日電気・水道の通電通水を確認。全室を写真と動画で記録。設備の動作確認60〜90分入居時からあった傷が「借主がつけた傷」に見える
同日〜翌日窓を開けて換気。上から下へ拭き掃除。排水口に水を流し、浴室の防カビ処理2〜3時間封水が切れて下水のにおいが上がる。カビは家具の裏で広がる
搬入の前日くん煙剤(警報器を覆う→2〜3時間閉め切る→換気→床に掃除機→警報器を戻す)3〜4時間搬入後だと家具の裏に薬剤が届かず、食器や寝具のカバーが増える
搬入の前日〜当日朝保護グッズの設置(マスキング・フィルター・キャスターカバー・排水口ネット)30〜60分冷蔵庫や家具の下に貼れなくなる
搬入当日廊下と玄関の床養生。搬入の立ち会い。ガスの開栓立ち会い半日床の擦り傷は借主負担になりやすい

所要時間は1K〜1LDKでの目安で、部屋の広さと掃除のやり方で前後します。ガスの開栓は立ち会いが要るので、予約枠と時間はガス開栓の立ち会いで確認しておいてください。

搬入後でいいこと・やらなくていいこと

入居前の作業を増やしすぎると、記録が雑になります。空室でしかできないもの以外は後回しで問題ありません。

  • 転入届・免許・銀行の住所変更は入居後の手続き。転入届は引越しから14日以内が期限なので、搬入が終わってから役所へ行けば間に合います
  • ネット回線の開通は工事日が決まっていれば搬入後でよい。壁のコンセントに機器を置く場所だけ決めておく
  • 床のワックス・コーティングは、賃貸ではやらなくていい。既存の床材と合わない剤を塗ると剥離が起き、退去時の補修が借主負担になる
  • ハウスクリーニング済みの部屋の再クリーニング依頼は不要。汚れが残っていれば掃除ではなく「記録して管理会社に伝える」側の話
  • 壁紙の張り替え・DIYは契約書の禁止事項に当たることが多く、入居前にやる話ではない

入居時の状態を記録する。写真・動画と国交省の確認リスト

入居前にやることの中で最優先は記録です。退去時に借主が直す義務があるのは、民法621条の「賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷」に限られ、通常の使用による損耗と経年変化は除かれます。受け取った時点であった傷は、借主が直す対象ではありません。ただし「受け取った時点であった」ことを示せるのは、入居時の記録だけです。

ガイドラインは「立ち会い・チェックリスト・写真」を勧めている

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、トラブルの大きな原因を「入居時及び退去時における損耗等の有無など、物件の確認が不十分であること」としています(P.3)。そのうえで、入居時と退去時にチェックリストを作り、当事者が立ち会って確認すること、平面図への記入や写真などのビジュアルな手段を併せて使うことを勧めています。こうした記録は「訴訟等に発展した場合でも証拠資料になりうる」との記述もあります。

同じガイドラインのP.4〜5にあるのが「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例)」という様式です。場所(玄関・廊下/台所・食堂・居間/浴室/洗面所/トイレ/個室/その他)ごとに箇所を並べ、入居時の列に「損耗の有無」「交換年月」「具体的な状況」を書き、借主・貸主・管理業者が署名する形です。備考には「写真等に撮影して添付する等より具体的にすることが望ましい」とあります。

東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」も同じ趣旨で、入居当初に物件の状況を確認し、後で比較できるよう「確認書」を作っておくよう書いています。仲介の現場で見てきた範囲では、退去時の揉め事の多くは、この記録が無いところから始まっていました。

撮る場所と撮り方。確認リストの部位に合わせる

自分で撮るときも、ガイドラインの確認リストの部位に合わせて回ると漏れが出ません。撮る順番を固定すると、退去時に同じ順で撮り直して比べられます。

入居時に記録する場所(国交省 確認リストの部位に沿って)

  • 部屋ごとに「引き→寄り→設備の動作」の順で撮る。日付の入る設定にしておく
    • 玄関・廊下ドアの内外・鍵・チャイム・下駄箱・郵便受け・床の擦り傷
    • 台所・居間天井・壁・床・流し台・戸棚・換気扇・給湯器・コンロ・照明。シンク下の水漏れ跡
    • 浴室・洗面・トイレ天井壁床・ドア・浴槽・シャワー・洗面台・洗濯機置場・便器・タンク・換気扇・タオル掛け
    • 個室天井・壁・床・間仕切り・押入・窓と網戸・照明。クロスの傷は定規を当てて寄りで
    • その他エアコン・スイッチとコンセント・バルコニー・物干し金具・TV端子。動作は動画で

図:ガイドラインP.4〜5の確認リストと同じ部位の並びで撮ると、退去時に同じ順で比べられる。

撮り方で押さえるのは次の4点です。

  1. 部屋の入口から「引き」を1枚。全体の位置関係がわかる写真が先。そこから傷の「寄り」に進む
  2. 傷・汚れは定規かメジャーを当てて撮る。大きさが後から判断できる。硬貨を置く方法でもよい
  3. 設備は動画で動作を残す。給湯・換気扇・エアコン・コンロ・水栓・トイレの流れ。異音は音ごと残る
  4. 撮影日時が残る設定にする。スマホの位置情報と日時は初期設定のまま。クラウドにも上げておく

管理会社から「入居時チェックシート」や「物件状況確認書」が契約書類に同封されていることがあります。返送期限が書かれているので、鍵を受け取った日に開いて確認します。期限を過ぎてから出すと、入居時からあった傷だと示しにくくなります。同封が無ければ、ガイドラインの様式を印刷して記入し、写真を添えて管理会社にメールで送っておきます。送った記録そのものが、後で日付の証明になるからです。

動かない設備は「修繕依頼」として入居前に伝える

給湯器がつかない、換気扇が回らない、鍵が固いといった不具合は、傷の記録とは別に修繕の依頼として伝えます。民法606条1項が定めるのは、貸主が賃貸物の使用に必要な修繕をする義務です。借主側は、修繕が要る状態を見つけたら遅滞なく通知する立場になります。

入居前に伝えておくと「最初から動かなかった」ことが日付つきで残ります。搬入後に伝えると、荷物を入れた後の破損と区別がつきにくいでしょう。入居直後に害虫が大量に出た場合も、同じように日付つきで管理会社へ伝えておきます。

入居前の掃除。クリーニング済みでもやる場所と順番

前の入居者の退去後にハウスクリーニングが入っていても、入居前の掃除は省けません。理由は2つで、クリーニングから鍵の受け取りまでに日が空いていて埃が積もっていること、そして家具を置く場所の床と壁際は入居後に拭けないことです。

順番は「換気→上→下→水回り→防カビ」

掃除は上から下へ進めます。天井や照明の埃を先に落とし、壁、建具、床の順で拭きます。水回りは最後です。乾いた埃を先に取ってから水拭きに入ると、二度手間になりません。

入居前の掃除でやる場所(クリーニング済みの部屋を前提・順番どおり)

順場所やること理由
1全室の窓窓を開けて30分以上換気。24時間換気の運転を確認空室中にこもった空気と、クリーニング剤のにおいを抜く
2天井・照明・エアコン上部乾いたワイパーで埃を落とす。エアコンはフィルターを外して水洗い空室中に積もる埃は上から落ちる。フィルターの汚れは記録も兼ねる
3壁・建具・巾木固く絞った布で拭く。クロスは強くこすらない家具を置くと壁際は二度と拭けない。傷はここで見つけて記録に回す
4床掃除機→水拭き。家具を置く位置の下を念入りに床の擦り傷・凹みも記録の対象。保護グッズを貼る面を乾かす
5収納の中押入・クローゼット・下駄箱・シンク下を拭く。扉を開けて乾かす閉め切った収納はカビとにおいが残る。くん煙剤の前に開けておく
6排水口・トラップ台所・洗面・浴室・洗濯機置場の排水口に水を流す。ネットを外して洗う空室が長いと封水が蒸発し、下水のにおいと虫が上がる
7浴室天井から壁・床の順で洗い、乾かしてから防カビ処理防カビ剤は乾いた面に使う。家具が無い今なら床に道具を広げられる

排水口の通水は忘れやすいのに効き目が大きい項目です。空室が数週間続いた部屋では、排水トラップの水が蒸発して下水管とつながった状態になり、鍵を開けた瞬間ににおうことがあります。全部の排水口にコップ2〜3杯の水を流すだけで止まります。

汚れが残っていたら「掃除」でなく「記録」に回す

クリーニング済みのはずなのに油汚れやカビが残っている場合、自分で落とす前に写真を撮って管理会社に伝えてください。落としてしまうと「入居時からあった」と示す手段が消えてしまうからです。落ちない汚れが退去時に借主負担にされるのを防げるのは、入居時の写真だけになります。

退去時にどこまで掃除すれば費用が減るかは、入居前とは別の話です。退去の掃除はどこまでやるかで、掃除で減る費用と減らない費用を分けています。

バルサンは搬入前が最適。煙・霧の選び方と警報器・ペット・近隣の扱い

くん煙剤(バルサン)を使うなら、掃除の後で荷物を入れる前が最も条件がそろいます。家具が無いので薬剤が壁際や収納の奥まで届き、食器・寝具・衣類をカバーする手間もありません。メーカーの使い方でも、食品・食器・寝具・衣類はカバーするか部屋の外に出し、ペット・観賞魚・植物は部屋の外へ出すよう指示されています。空室ならこの準備がほぼ不要です。

煙タイプと霧タイプの違い。集合住宅は警報器で決まる

同じバルサンでも、煙が出るタイプと出ないタイプで、閉め切る時間と警報器の扱いが変わります。メーカーのレック株式会社が公開している使い方から、2タイプを並べたのが次の表です。

バルサンの煙タイプと霧タイプの比較(レック株式会社の商品ページ・2026年9月時点)

項目煙タイプ(バルサン 60g)霧タイプ(バルサンプロEX ノンスモーク霧)
区分・対応畳数第2類医薬品・18〜24畳第2類医薬品・12〜20畳
始動付属のスリ板でヘッドをこする。マッチ・ライター・水は使わないボタンを押し込む
閉め切る時間2〜3時間1時間またはそれ以上
火災警報器煙を感知する警報器が反応しうるので、袋などで覆う煙も熱も出さず、煙感知型・熱感知型に反応しない(使用方法どおりの場合)
ガス警報器微粒子を感知するガス警報器は反応することがある。袋などで覆う反応することがある。ガスの元栓を閉め、種火・ヒーターは消す
使用後充分に換気してから入る。床に掃除機。食器は水洗い同じ

集合住宅で霧タイプが選ばれやすい理由は、この表のとおりです。煙タイプは廊下や隣室へ煙が漏れる可能性があり、火災警報器が鳴れば建物全体の警報につながる物件もあります。管理会社への事前確認と、玄関への「くん煙剤使用中」の掲示は、どちらのタイプでもやっておいてください。

火災警報器は「覆う→終わったら戻す」まで

住宅用火災警報器は、平成22年4月1日からすべての住宅に設置が義務づけられています(東京消防庁)。賃貸の部屋にも寝室・階段・台所などに付いているのが前提で、くん煙剤の煙で作動します。

名古屋市の消防の案内は、くん煙剤を使う前に本体を取り外すか、ビニール袋で覆うか、電池を外すなどし、終わったら元の状態に復旧するよう書いています。あわせて求めているのが、くん煙剤を使っている旨を玄関などの見やすい場所に張って近隣に知らせることです。覆ったまま忘れると、火災を検知できない部屋で暮らすことになります。外したカバーは、換気が終わった時点で戻してください。

東京消防庁の案内では、警報器の本体交換の目安は設置から10年とされています。鍵を受け取った日に警報器の製造年を見ておくと、電池切れや寿命で鳴らない状態を入居前に管理会社へ伝えられます。

使う手順と、やってはいけないこと

  1. 管理会社に使ってよいか確認し、玄関に使用中の掲示を貼る
  2. 窓と換気口を閉め、戸棚・引き出し・押入れを開ける。24時間換気は一時停止できるか取扱説明を見る
  3. 火災警報器とガス警報器を覆う。ガスの元栓を閉め、種火・ヒーターを消す
  4. 部屋の中央に置いて始動し、外に出る。煙タイプは2〜3時間、霧タイプは1時間以上閉め切る
  5. 窓と扉を開けて充分に換気してから入る。床に掃除機をかけ、水回りに触れた面は水洗い
  6. 警報器のカバーを外し、電池を戻し、換気を再開する。容器は自治体の分別で捨てる

やってはいけないのは、搬入当日の朝に焚くことです。閉め切りと換気で3〜4時間は部屋に入れず、搬入の時間に食い込みます。ペットや水槽を先に運び込んだ後で焚くのも避けてください。メーカーは、ペット類・観賞魚・植物を部屋の外に出すよう指示しています。

なお、ダニは死骸もアレルギーの原因になるとメーカーが注意しているので、くん煙後の掃除機がけは省けません。家具の無い床に掃除機をかける機会も、搬入前が最後です。

100均で揃える保護グッズ。退去時に借主負担になる傷を防ぐ場所に絞る

入居前に付ける保護グッズの役割は「汚れを付けない」ことにあります。民法621条で借主が直す対象になるのは、受け取った後に生じた損傷のうち通常の使用を超えるものなので、保護の狙いは退去時に借主負担になりやすい傷や汚れの発生源を、最初から塞ぐことに置きます。100均で揃うものだけで足りるでしょう。

入居前に付ける保護グッズと場所(100均で揃うもの・退去時の負担区分の観点)

グッズ貼る・置く場所防げること注意
マスキングテープ(幅広)コンロ周りの壁との隙間、洗面台・浴槽のコーキング部分、巾木の上油と水垢がコーキングに染みてカビになるのを防ぐクロスに直接貼らない。剥がすときにクロスが破れれば借主負担
換気扇フィルター台所の換気扇、浴室・トイレの換気口油と埃の固着。退去時の換気扇清掃を軽くする24時間換気の給気口を塞がない
排水口ネット・ゴミ受け台所・浴室・洗面・洗濯機置場の排水口髪と油の詰まり。詰まりの除去費用は借主側になりやすい週1回交換。ネットを付けたまま放置しない
キャスターカバー・フェルト椅子・ベッド・棚の脚床の擦り傷と凹み。フローリングの傷は借主負担になる典型搬入前に脚の本数分を用意しておく
冷蔵庫・洗濯機の下のマット冷蔵庫と洗濯機の設置面重量物の跡と振動の傷。冷蔵庫下の変色搬入業者が置く前に敷く。後からは動かせない
隙間テープ・防虫キャップエアコンの排水ホースの先、配管の穴の周り、玄関ドアの下ゴキブリの侵入。くん煙剤の効果を長持ちさせる配管の穴はパテで塞ぐ。壁に穴を開けない
引き出し・棚のシートシンク下、洗面台下、下駄箱の底水漏れ跡とにおい。退去時に「汚損」とされやすい場所湿気がこもらないよう、たまに外して乾かす
珪藻土マットや吸水シート洗濯機置場の床、玄関の内側水濡れによる床材の膨れ濡れたら乾かす。敷きっぱなしにしない

貼る場所で迷うときは、ガイドラインの負担区分を思い出すとよさそうです。壁紙の日焼けや家具の設置跡は通常損耗で貸主側、フローリングの傷や水漏れの放置による腐食は借主側という整理です。保護グッズは後者の場所に集中させます。

保護グッズを付ける場所は「借主負担になりやすい損傷」から決める

通常損耗・経年変化(貸主側・保護しなくてよい)
壁紙の日焼け・家具の設置跡
普通に住めば起きる。民法621条で借主の原状回復から除かれる
画鋲の穴(下地に届かない)
ガイドラインでは通常損耗の側。契約書の禁止事項だけ確認
設備の寿命・自然故障
貸主の修繕義務(606条)。入居前に動かなければ修繕依頼へ
借主負担になりやすい損傷(ここに保護を集中)
床の擦り傷・凹み
キャスターカバー・フェルト・冷蔵庫下マット。搬入当日は養生
油と水垢のカビ・コーキングの黒ずみ
コンロ周りと水回りのマスキング。換気扇フィルター
水漏れ放置の腐食・排水口の詰まり
排水口ネット・シンク下のシート・洗濯機置場の吸水マット
クロスの破れ(テープ・粘着フック)
養生テープと粘着フックをクロスに貼らない

図:通常損耗は保護しなくてよい。床・水回り・クロスの破れなど借主負担になりやすい損傷の発生源だけを塞ぐ。

養生テープと粘着フックはクロスに使わない

100均の養生テープや粘着フックは、コンクリートや金属には使えても、クロス(壁紙)には向きません。剥がすときにクロスの表面が一緒に剥がれ、その補修は借主負担になります。壁に何かを掛けたいなら、契約書で画鋲の可否を確認したうえで、下地の石膏ボードを傷めない細いピンを使ってください。

搬入当日の床養生も同じで、床に直接テープを貼らず、段ボールや養生シートを敷いて端を家具や壁側に固定します。搬入業者が養生を持ってくる場合もあるので、見積もりの時点で「養生は含まれるか」を聞いておくとよさそうです。当日に自分で敷く範囲が決まります。

新築・クリーニング済みで変わること。24時間換気・養生・バルサンの要否

新築の賃貸は「汚れていないから掃除もバルサンも要らない」と思われがちですが、変わるのは項目の中身です。記録と換気はむしろ増えます。

新築は「24時間換気を止めない」が先

2003年(平成15年)7月1日以降に着工された建物には、建築基準法のシックハウス対策が適用されています。国土交通省の案内によると、内装にホルムアルデヒドを出しにくい建材を使っていても、家具などからも発散されるため、居室のある建物には機械換気設備の設置が原則として義務づけられています(建築基準法施行令20条の8)。

厚生労働省が定める室内濃度の指針値は、ホルムアルデヒドで100μg/m3(0.08ppm・30分平均値)です。同じ通知で、新築住宅の測定は「30分換気した後に5時間以上密閉」してから採取するとされていて、閉め切った新築の部屋では濃度が上がる前提で基準が組まれています。入居前にやることとして、24時間換気のスイッチを切らずに回し、鍵を受け取った日から搬入まで窓を開けて空気を入れ替えておいてください。

くん煙剤を使うときだけは一時的に換気を止めるか給気口を覆うことになりますが、終わったら換気に戻します。新築で「換気の音がうるさいから切る」のは、入居後の頭痛や目の刺激につながる行動なので避けてください。

新築で増える記録、減る作業

新築・築浅・クリーニング済みで変わる入居前の作業(2026年9月時点)

項目新築中古・クリーニング済み
記録内装の初期不良(クロスの浮き・建具の建てつけ・床のきしみ)を写真と動画で。施工の傷も入居時からあった傷として残す前の入居者の傷と汚れを部位ごとに。交換年月の欄は管理会社に聞く
掃除工事の粉塵と養生の糊が残ることがある。乾いたワイパーで埃、床は水拭き表のとおり上から下へ。収納の中とにおいを優先
換気24時間換気を止めない。搬入まで窓開け30分以上の換気でよい
くん煙剤建物の周囲や配管から入るので、使うなら搬入前。空室だった期間が短いなら省いてよい前の入居者の時期に発生していれば搬入前に
保護搬入当日の床養生を厚めに。新しい床は擦り傷が目立ち、退去時に指摘されやすい同じ

新築では、床の擦り傷と壁の凹みが「入居後の損傷」として最も指摘されやすいので、搬入当日の養生と、家具の脚の保護を中古より厚めにしておきます。反対に、収納の中の拭き掃除や排水口の通水は、工事完了から間もない新築ならほぼ不要です。

よくある質問

Q1:入居前の掃除は、ハウスクリーニング済みの部屋でも必要ですか?

やります。クリーニングから鍵の受け取りまでに埃が積もることと、家具を置く場所の床と壁際は入居後に拭けないことが理由です。全部を磨く必要はなく、換気・上から下への拭き掃除・排水口への通水・浴室の防カビの4つで足ります。落ちない汚れが残っていたら、落とす前に写真を撮って管理会社に伝えてください。

Q2:バルサンは入居前と入居後、どちらに焚くべきですか?

入居前です。家具が無い状態なら薬剤が壁際と収納の奥まで届き、食器・寝具・衣類をカバーする準備がほぼ要りません。メーカーの使い方でも、ペット・観賞魚・植物は部屋の外に出すよう指示されているので、生き物を運び込む前に済ませます。搬入当日の朝は、閉め切りと換気で3〜4時間かかるため避けてください。

Q3:入居時の写真はいつまでに撮って、管理会社に送る必要がありますか?

鍵を受け取った当日、荷物を入れる前に撮ります。管理会社から「入居時チェックシート」が渡されていれば、そこに書かれた返送期限までに記入して写真を添えて返します。渡されていなければ、国土交通省ガイドラインの確認リスト(P.4〜5)を印刷して記入し、写真とともにメールで送っておくと、日付の証明が残ります。

Q4:契約開始日より前に鍵をもらって、少しずつ荷物を運んでもいいですか?

管理会社の承諾があればできます。承諾なしの入室は契約前の使用になり、その間に破損があっても責任の切り分けができません。前の入居者の退去と原状回復工事が終わっていれば応じる管理会社もあるので、メールで日付を明記して頼み、返信を残しておいてください。家賃と火災保険は契約開始日から動きます。

Q5:新築の賃貸でも入居前の掃除やバルサンは必要ですか?

掃除は軽く、換気は多めに、記録は多めにやります。新築は24時間換気を止めず、搬入まで窓を開けて空気を入れ替えることが先です。工事の粉塵と養生の糊が残ることがあるので、乾いた埃を取ってから床を水拭きします。バルサンは、空室期間が短ければ省いてもよく、使うなら搬入前です。クロスの浮きや建具の建てつけは施工の傷として入居時に記録します。

Q6:鍵の受け取りから搬入まで1日しかありません。何を優先しますか?

記録・換気・排水口の通水・警報器の確認の4つに絞ります。記録は家具が入ると二度とできず、退去時の費用に直結する唯一の作業です。掃除は家具を置く場所の床と壁際だけ、保護グッズはキャスターカバーと冷蔵庫下のマットだけを先に付けます。バルサンは搬入後に家具の隙間へ使うより、時間が取れる週末に荷物を寄せてから使うほうが手間が少なく済みます。

まとめ

  • 入居前にやることは記録→掃除→くん煙剤→保護の順。家具が入る前の空室でしかできないものを先に
  • 最優先は写真・動画と確認リストによる記録。民法621条で借主が直すのは受け取った後の損傷だけで、入居時からあった傷を示せるのは記録だけ
  • 国交省ガイドラインは入居時の立ち会い・チェックリスト・写真を勧め、P.4〜5に様式がある。管理会社のチェックシートは返送期限を当日に確認
  • 掃除は換気→上→下→水回り→防カビ。排水口への通水と収納の中を落とさない。落ちない汚れは撮ってから伝える
  • バルサンは搬入前に。煙タイプは2〜3時間・霧タイプは1時間以上。火災警報器とガス警報器を覆い、終わったら戻す。玄関に掲示
  • 保護グッズは退去時に借主負担になりやすい場所(床の脚跡・コーキング・排水口・冷蔵庫下)に絞る。クロスに養生テープを貼らない
  • 新築は24時間換気を止めない。記録と床の養生を厚めに、収納の拭き掃除と通水は省いてよい

鍵を受け取った日にやることは、部屋を回って写真と動画を撮り、確認リストを埋め、排水口に水を流し、警報器の位置を見ておくことです。この日の1時間半が、退去時の精算で一番効きます。火災保険を契約開始日に合わせる手順は賃貸の火災保険は自分で加入できるかへ進んでください。

免責事項

※本記事は民法の条文、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」、東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」、レック株式会社のくん煙剤の使用方法、名古屋市・東京消防庁の住宅用火災警報器の案内、国土交通省・厚生労働省のシックハウス対策の資料(2026年9月時点)と不動産仲介の現場で見てきた事例をもとに整理した一般的な情報です。くん煙剤の使用可否・記録の提出方法は物件と契約により異なります。個別の契約判断・法律相談は宅地建物取引士・弁護士・消費生活センター等の有資格者・公的窓口にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Ishidaです。地方都市の不動産仲介会社で営業アシスタントを10年務め、店長や主任の物件案内と契約立会いに同席しながら、年間1,500件を超える部屋を見送ってきました。

いちばん記憶に残っているのは、退去のときに高額な原状回復費を請求されて揉めるケースです。その多くは、契約の際に重要事項説明を聞き流していた方でした。逆に、最初にひと言確認しておくだけで防げたトラブルも数えきれません。

自分自身も7回引っ越し、そのたびに見積もりや初期費用の相場を体で覚えました。現場で見てきたことと、借り手として直面した実感の両方から、後悔しない部屋探しと引越しを整理しています。契約前の疑問は、遠慮なく不動産会社に確かめてくださいね。

目次