賃貸の給湯器が故障したら誰が払う?家賃減額の実例

賃貸の給湯器が故障したら誰が払う?

賃貸の給湯器が故障したら、まず管理会社か大家に連絡します。経年劣化による故障なら、修理・交換費用は貸主の負担です。使えない間は家賃が減る可能性があり、国交省の事例集には6日間で月額賃料の約30%を減額した例があります。

この記事でわかること

  • 給湯器が壊れたときの連絡先と、伝えておくこと
  • 修理・交換費用を貸主が払う場合と借主が払う場合(「修繕は借主」の特約があるとき)
  • 自分で業者を呼んでよい2つの条件と、その前にやること
  • 使えない間の家賃減額の実例と計算のしかた
  • 銭湯代・ホテル代を出してもらえるか
  • 修理・交換までにかかった日数の実例

出典: 民法(e-Gov法令検索)/国土交通省「改正民法施行に伴う民間賃貸住宅における対応事例集」(令和3年3月)/国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」

目次

賃貸の給湯器が故障したら、最初にすること

最初にするのは、管理会社か大家への連絡です。自分で修理業者を呼ぶのは、連絡の後に考えます。

借りている部屋に修繕が必要になったら、借主は遅滞なく貸主に知らせる決まりです(民法615条)。国土交通省の賃貸住宅標準契約書も、第9条3項で同じ通知を求めています。

連絡する前に見ておくこと

症状によっては、連絡する相手が変わります。

症状と連絡先の目安

症状考えられること連絡先
お湯だけが出ない。水は出る給湯器本体の不具合管理会社・大家
リモコンにエラー番号が出ている給湯器本体の不具合管理会社・大家(番号を伝える)
ガスコンロも点かないガスの供給側の問題の可能性ガス会社
冬の朝だけ、水もお湯も出ない配管の凍結の可能性管理会社・大家
本体から水が漏れている給湯器か配管の破損管理会社・大家(すぐに)

迷ったら管理会社に連絡すれば足ります。夜間や休日は、契約書や入居時にもらった書類に緊急連絡先が載っていないか確かめてください。

連絡するときに伝えること

次の5点を伝えると、管理会社が修理か交換かを決めやすくなります。

  • いつから、どんな症状か(お湯が出ない・追い焚きだけできない など)
  • リモコンに出ているエラー番号
  • 給湯器本体のラベルにある型式と製造年
  • 水漏れや異音、においの有無
  • 修理の立ち会いができる日時の候補

電話で連絡したら、日時と相手の名前、話した内容をメモしておきましょう。後で家賃減額を話し合うとき、いつから使えなかったかの記録になります。

給湯器が壊れてから直るまでの流れ

  • お湯が出ない。リモコンにエラー番号が出ている
  • 1管理会社・大家に連絡する症状・エラー番号・型式・立ち会える日を伝える(民法615条)
  • 2業者が現地を確認し、修理か交換かを決める費用は経年劣化なら貸主の負担(民法606条)
  • 3修理・交換が終わるまでの過ごし方を相談する銭湯代・空き部屋の風呂など
  • 4使えなかった期間の家賃減額を協議する借主に落ち度がなければ減額される(民法611条)

自分で業者を呼ぶのは、連絡しても直してもらえないときか、急迫の事情があるときだけ

図:給湯器の故障は、連絡→修理・交換→代わりの手段→家賃減額の協議の順に進む。

給湯器の修理・交換費用は誰が払うか

部屋に付いている給湯器なら、修理・交換の費用は原則として貸主が払います。民法606条1項は、貸主は使うのに必要な修繕をする義務を負うと定めているためです。

ただし、同じ条文のただし書で、借主の責任で修繕が必要になったときは貸主の義務から外れます。

給湯器の故障の原因と費用の負担

原因費用を払う人根拠
年数がたって壊れた(経年劣化・寿命)貸主民法606条1項・標準契約書第9条1項
普通に使っていて壊れた貸主同上
借主の不注意や誤った使い方で壊した借主民法606条1項ただし書
契約に「小修繕は借主」とある給湯器の取替えは原則として貸主国交省 相談対応事例集 Q1-2

「修繕は借主が行う」と契約書にあるとき

国交省の相談対応事例集は、この種の特約について最高裁の判断を紹介しています。こうした特約は原則として貸主の修繕義務を免除しただけ、という内容です。借主に修繕義務を課す趣旨ではないとしています(最高裁 昭和43年1月25日判決)。

給湯器の取替えそのものについても、事例集は「借主は原則として貸主に取り替えを要求できます」と答えています。費用が多額になる修繕は、特約があっても貸主にしかできない「大修繕」に当たる可能性がある、という整理です。

契約書の特約の読み方は賃貸契約書の見方で詳しく扱いました。

自分の過失で壊してしまったとき

借主の不注意で壊した場合は、修理費を求められることがあります。加入している火災保険に、借りている部屋の設備を壊したときの補償が付いていないかを確かめてください。補償の種類は賃貸の火災保険の選び方で扱っています。

自分で業者を呼んでいいのは、どんなときか

借主が自分で修繕できるのは、民法607条の2が挙げる2つの場合だけです。

  1. 貸主に修繕が必要だと伝えた(または貸主が知った)のに、相当の期間内に修繕してもらえないとき
  2. 急迫の事情があるとき

この2つに当たれば、自分で修繕し、かかった費用を貸主に請求できます(民法608条1項)。

ただ、国交省の相談対応事例集は注意も添えています。「相当の期間」がどのくらいか、「急迫の事情」が何かは具体的に決まっていません。必要のない修繕や過度の修繕をすると、費用を自分で負担したり、損害賠償を求められたりする可能性があるとしています。

自分で手配する前にやること

連絡しても動いてもらえないときは、まず書面で期限を区切って修繕を求めてください。そのうえで手配する場合は、次の順に進めます。

  1. 修繕を求めた日と内容を、メールか書面で残す
  2. 修理の予定日を聞き、返事がなければ期限を区切って催促する
  3. 自分で手配すると伝え、見積もりを取る
  4. 応急の範囲や普通の修繕にとどめ、交換の機種を勝手に上げない
  5. 領収書と明細を保管し、貸主に費用を請求する

事例集には、こんな裁判例も載っています。急迫の危険を防ぐ必要があるときは、貸主の承諾を待たずに応急工事や普通の修繕ができる、という判断です(東京地裁 昭和46年5月25日判決)。

給湯器が使えない間、家賃は減るか

借主に落ち度がなければ、使えない間の家賃は減額されます。民法611条1項は、借りている物の一部が使えなくなったら、その割合に応じて賃料は「減額される」と定めています。

2020年4月施行の民法改正で、それまでの「減額を請求できる」から、当然に減額される形に変わりました。国交省の相談対応事例集も、給湯器が壊れてお湯が使えない間は家賃が減額される可能性があると答えています(Q2-1)。

減額の対象になる条件

国交省の平成30年の事例集は、減額の対象を次のように整理しています。

  • 設備の不具合で、物件の一部が使えない
  • 使えない程度が、社会通念上の受忍限度を超え、通常の居住ができない
  • 借主に落ち度(帰責事由)がない

対象になる期間は、通常の居住ができなくなったときから修繕が終わるまでです。

給湯器・風呂が使えなかったときの実例

国交省が令和3年3月にまとめた対応事例集には、給湯器や給湯管の故障で風呂が使えなかった実例が5件載っています。

風呂が使えなかった事例と対応(国交省 対応事例集・令和3年3月)

事例使えなかった期間決まった対応
給湯器の故障(新築時から設置)25日間月額賃料の約15%を減額
給湯器の故障(設置後10年程度)6日間月額賃料の約30%を減額
給湯器の故障(設置時期不明)8日間工事完了までの銭湯代を提供
給湯器の故障(20年以上前に設置)7日間近くの空き部屋の風呂を提供
上の階の給湯管の損耗6日間工事期間のホテル宿泊費を提供

25日間の事例は、入居者の都合で工事の日が延びていました。そのため、故障から最短で工事できた日までの期間をもとに減額を決めています。

同じ調査では、管理会社242社が答えた直近の不具合事例のうち、賃料減額の対象になったのは12.4%でした。減額にならなかった事例の中には、代わりの手段の提供で解決したものもあります。

減額の計算例

減額の割合に決まった基準はありません。貸主と借主の話し合いで決めるのが基本です。

仮に家賃8万円で、10日間使えず、話し合いで割合を20%と決めたとします。標準契約書の日割り(1か月を30日)で計算すると、8万円÷30日×10日×20%=約5,333円です。

家賃の減額と、代わりの手段の比較

家賃を減額する
根拠
民法611条1項(当然に減額)
決め方
割合と期間を話し合いで決める
実例
6日間で約30%/25日間で約15%
代わりの手段を受ける
中身
銭湯代・近くの空き部屋の風呂・ホテル代
向く場面
工事まで数日で、割合を決めにくいとき
実例
8日間の銭湯代/7日間の空き部屋の風呂

図:給湯器が使えない間は、家賃の減額か代わりの手段のどちらかで話し合うのが実例の多い形。

家賃を勝手に減らして払うのは避ける

SNSでは「611条の減額と相殺します」と伝えたら早く直った、という話も見かけます。ただ、国交省の平成30年の事例集は注意も促しています。減額を理由に一方的に家賃の支払いを拒むと、契約を解除されて明渡しの訴訟を起こされるリスクがある、という点です。

減額は当然に生じるとはいえ、割合と期間は実務では話し合いで決めています。家賃はいつもどおり払い、減額分は話し合いで決めて翌月以降に精算するのが安全な進め方です。

エアコンが壊れたときの減額の考え方は賃貸のエアコンが故障したときの対処法でも取り上げました。

銭湯代やホテル代は出してもらえるか

出してもらえる場合はあります。国交省の対応事例集では、8日間の銭湯代の実費、近くの空き部屋の風呂、6日間のホテル宿泊費が、どれも貸主側からの提案で決まりました。

国交省の平成30年の事例集も、実務では減額の代わりに代替手段や代替品を提供することが多いとしています。貸主が修繕義務を果たさずに借主に損害が出た場合については、貸主が賠償責任を負うことがありうるとも書いています(民法415条1項)。

銭湯代の目安(東京都の大人料金600円・2026年8月1日から)

使えない日数1人2人
3日1,800円3,600円
7日4,200円8,400円
14日8,400円1万6,800円

東京都の銭湯の大人料金は、2026年8月1日から600円です。地域で料金は違うので、近くの銭湯の料金で計算してください。

銭湯代を出してもらうなら、事前に「銭湯代の実費を負担してもらえるか」を確かめ、領収書を残しておきます。家賃の減額と銭湯代のどちらで受けるかも、あわせて決めておくと後でもめません。

修理・交換までに何日かかるか

国交省の対応事例集では、連絡から交換工事までの日数は5日後〜24日後でした。修理できないと分かってから交換用の機器を手配するため、日数がかかります。

給湯器の故障から交換工事までの日数(国交省 対応事例集・令和3年3月)

事例流れ交換工事
設置後10年程度翌日にガス会社が確認→交換を依頼5日後
20年以上前に設置当日に交換を依頼6日後
設置時期不明当日にメーカーが確認→翌日に交換を依頼7日後
新築時から設置翌日にメーカーが確認→3日後に交換を依頼24日後(入居者の都合で延期)

同じ調査では、使えなかった期間が15日未満の事例が全体の60%を占めていました(N=30)。平成30年の事例集も、貸主が誠実に対応しても部品の調達や業者の手配に時間がかかることがあるとしています。

修理が長引くときの動き方

  • 修理の完了予定を聞き、決まらなければ目安だけでも書面でもらう
  • 使えない状態の写真と、やり取りの日時・内容を記録する
  • 家賃の減額か、銭湯代などの代わりの手段を話し合う
  • 話がまとまらなければ、消費生活センターや弁護士に相談する

消費生活センターは国民生活センターの窓口一覧から探せます。

よくある質問

Q1:夜間や休日に給湯器が壊れたら、どこに連絡すればいいですか?

まずは管理会社の緊急連絡先です。契約書や入居時の書類に載っていることが多いので確かめてください。水漏れが止まらないなど急迫の事情があれば、借主が応急の修繕をできる場合があります(民法607条の2)。その場合も、手配したことを早めに貸主へ伝えておきます。

Q2:冬にお湯が出なくなりました。凍結でも大家の負担ですか?

普通に使っていて壊れたなら、修理費は貸主の負担です。ただし、借主の誤った使い方が原因で壊れたときは、借主の負担になることがあります(民法606条1項ただし書)。まず管理会社に症状を伝え、原因の確認を頼んでください。

Q3:給湯器の工事の立ち会いが平日しかできないと言われました。

貸主が修繕する場合、借主は正当な理由がない限り修繕を拒めません(標準契約書第9条2項)。日程は相談できますが、自分の都合で工事を延ばすと、その分は減額の期間に入らないことがあります。国交省の事例でも、入居者の都合で延びた期間を差し引いて減額を決めていました。

Q4:退去のとき、給湯器の故障分を請求されますか?

寿命による故障は請求されないのが原則です。国交省の原状回復ガイドラインは、機器の寿命による設備の故障・使用不能を貸主の負担に分けています。退去費用の項目ごとの考え方は賃貸の退去費用の相場で確認できます。

Q5:給湯器が古いので、壊れる前に交換してもらえますか?

動いているうちの交換は、基本的に貸主の判断です。国交省の事例集は、契約したときに予定していた程度を超える修繕を求めることはできないとしています。調子が悪い症状があれば、その都度伝えて記録を残しておくと、故障したときの話が早く進みます。

まとめ

  • 給湯器が壊れたら、まず管理会社か大家に連絡。症状・エラー番号・型式を伝える
  • 経年劣化や普通の使用で壊れたなら、修理・交換費用は貸主。「修繕は借主」の特約があっても取替えは原則貸主
  • 自分で業者を呼べるのは、直してもらえないときか急迫の事情があるときだけ
  • 使えない間の家賃は減額される。実例は6日間で約30%・25日間で約15%
  • 銭湯代・空き部屋の風呂・ホテル代が出た実例もある。家賃を勝手に減らして払わない
  • 交換工事までの日数は、実例で5日後〜24日後

お湯が出ない日が続くと、毎日の暮らしが回らなくなります。連絡した日時と症状を記録しながら、修理の予定と、その間の過ごし方を早めに管理会社と決めてください。

免責事項

※本記事は民法の条文、国土交通省の賃貸住宅標準契約書・民間賃貸住宅に関する相談対応事例集・改正民法施行に伴う対応事例集、東京都の入浴料金の公表情報(2026年10月時点)と不動産仲介の現場で見てきた事例をもとに整理した一般的な情報です。費用の負担や減額の可否・割合は、個々の契約書と故障の原因により異なります。個別の契約判断・法律相談は宅地建物取引士・弁護士・消費生活センター等の有資格者・公的窓口にご相談ください。

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この記事を書いた人

Ishidaです。地方都市の不動産仲介会社で営業アシスタントを10年務め、店長や主任の物件案内と契約立会いに同席しながら、年間1,500件を超える部屋を見送ってきました。

いちばん記憶に残っているのは、退去のときに高額な原状回復費を請求されて揉めるケースです。その多くは、契約の際に重要事項説明を聞き流していた方でした。逆に、最初にひと言確認しておくだけで防げたトラブルも数えきれません。

自分自身も7回引っ越し、そのたびに見積もりや初期費用の相場を体で覚えました。現場で見てきたことと、借り手として直面した実感の両方から、後悔しない部屋探しと引越しを整理しています。契約前の疑問は、遠慮なく不動産会社に確かめてくださいね。

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