賃貸で水漏れしたら誰が払う?下の階への賠償と保険

賃貸で水漏れしたら誰が払う?

賃貸で水漏れしたら、まず水を止めて管理会社か大家に連絡します。費用は原因で決まり、配管の老朽化なら貸主、蛇口の閉め忘れなど借主の過失なら借主の負担です。下の階への賠償は、火災保険の個人賠償責任の補償で払える場合があります。

この記事でわかること

  • 水漏れに気づいたときの順番と連絡先
  • 原因ごとに、修理費と下の階への賠償を誰が払うか
  • 下の階に水漏れさせたとき、どこまで払うか
  • 使える保険(借家人賠償・個人賠償・家財)
  • 上の階から漏れてきたときの家賃減額の実例
  • 直してくれない・水道代が増えたときの請求

出典: 国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」/民法(e-Gov法令検索)/東京都水道局「水漏れ(漏水)について」

目次

賃貸で水漏れしたら、最初にすること

最初にするのは、水を止めることと、管理会社か大家への連絡です。修理業者を自分で探すのは、その後で考えます。

借りている部屋に修繕が必要になったら、借主は遅滞なく貸主に知らせる決まりがあります(民法615条)。国土交通省の賃貸住宅標準契約書も、第9条3項で同じ通知を求めています。

  1. 水を止める:漏れている蛇口やトイレの止水栓を閉める。場所がわからなければ、水道メーターのそばの元栓を閉める
  2. 電気に気をつける:濡れた家電のコンセントを抜く。コンセントまで濡れていればブレーカーを落とす
  3. 写真と動画を残す:漏れている場所、濡れた床や家具、天井のしみ
  4. 管理会社か大家に連絡する:いつから・どこから・どのくらい漏れているか
  5. 下の階に漏れていそうなら、それも伝える:下の部屋の確認は管理会社に頼む

元栓や止水栓の場所と回し方は、引越しの水道開栓のやり方で説明しています。閉めるときは、開けるときと逆向きに回すだけです。

状況ごとの連絡先

水漏れの状況と連絡先の目安

状況連絡先
自分の部屋の蛇口・配管・トイレから漏れている管理会社・大家
天井から水が落ちてくる管理会社・大家(上の階の確認を頼む)
使っていないのに水道メーターのパイロットが回る管理会社・大家(見えない場所の漏水の疑い)
夜間・休日で管理会社につながらない契約書の緊急連絡先
道路で水が漏れている水道局

東京都水道局は、水を使っていないのに水道メーターのパイロットが回っていれば、メーターから蛇口までのどこかで漏水している疑いがあると案内しています。

水漏れに気づいてから修理までの流れ

  • 床が濡れている・天井から水が落ちてくる
  • 1止水栓か元栓を閉める濡れた家電のコンセントを抜く
  • 2写真と動画を残す漏れている場所・濡れた範囲・天井のしみ
  • 3管理会社か大家に連絡する借主は遅滞なく知らせる(民法615条)
  • 4原因を確かめて、負担と保険を決める老朽化なら貸主、過失なら借主。保険会社にも連絡

夜間でつながらず水が止まらないときは、急迫の事情として借主が応急の修繕をできる(民法607条の2)

図:水漏れは、止める→記録→連絡→原因の確認の順に動く。

修理費と下の階への賠償は、原因で決まる

普通に使っていて配管が古くなって漏れたなら、修理は貸主の負担です。民法606条1項は、貸主は使うのに必要な修繕をする義務を負うと定めています。

国交省の相談対応事例集(令和4年3月)にも、この相談があります。台所の下で、配水管の老朽化による水漏れが起きたケースです。大家は使い方が悪いので自分で直してと言ったものの、事例集の答えは「借主は原則として修繕義務を負いません」でした(Q1-4)。

水漏れの原因と、費用を払う人

原因部屋の修理下の階など他人の損害根拠
配管・設備の老朽化(普通に使っていた)貸主借主が注意していれば所有者(貸主)民法606条・717条、事例集Q1-4
借主の過失(閉め忘れ・ホース外れなど)借主借主民法709条、事例集Q2・Q2-1
上の階の住人の過失上の階の住人上の階の住人民法709条
屋上・ベランダなど建物の劣化貸主―民法606条
原因が複数ある過失の程度に応じて分担同左事例集Q1-5

借主の過失で下の階に損害を出したときは、事例集の整理が参考になります。貸主には賃貸借契約に基づいて、他の住人には不法行為(民法709条)に基づいて、損害賠償責任を負います。

配管の欠陥で下の階に損害が出たとき

建物の配管のような「土地の工作物」に欠陥があって他人に損害が出た場合は、民法717条の出番です。まず占有者が賠償する責任を負います。ただし、占有者が損害を防ぐのに必要な注意をしていたときは、所有者が賠償する、と定めています。

普通に使っていて配管が古くなって漏れたのか、漏れに気づいて放っておいたのかで、負担する人は変わるはずです。原因の場所と経緯は、管理会社を通して確かめておきましょう。

火事と違い、水漏れは軽い不注意でも賠償の対象

火事には「失火ノ責任ニ関スル法律」があり、重大な過失がなければ民法709条の責任を負いません。この法律が対象にしているのは失火だけです。

水漏れには、この特例がありません。蛇口の閉め忘れのような普通の過失でも、民法709条どおり賠償の対象になります。保険の中身を早めに確かめておきたいのは、このためです。

蛇口のパッキン交換は借主が自分でしてもよい

蛇口からポタポタ漏れる程度なら、パッキンやコマの交換で止まることがあります。国交省の標準契約書は、蛇口のパッキン・コマの取替えを、借主が自分の負担で行える「費用が軽微な修繕」に挙げています(第9条5項・別表第4)。

自分でする場合は、貸主への通知や承諾は要りません。貸主に修繕を頼むこともできます。実際の契約書に同じ定めがあるかは確かめてください。

下の階に水漏れさせたら、どこまで払うか

借主の過失で漏らしたなら、通常発生する損害の範囲で賠償します(民法416条1項)。

事例集のQ2-1は、具体的な線引きを示しています。風呂の水を止め忘れて、自分の部屋と下の部屋が水浸しになったケースです。

風呂の止め忘れで下の階まで漏れた事例の整理(事例集Q2-1)

損害払う範囲事例集の考え方
自分の部屋の床の張替え通常の損害に入る見積が相当な額を超えて高いなら、相見積もりを取るなどして協議できる
下の階の天井の張替え通常の損害に入る同上
下の階のテレビの故障通常の損害に入る新品ではなく、同等品(中古品)を買う価格

賠償の話を進める順番

  1. 管理会社を通して、原因と被害の範囲を確かめる
  2. 自分の火災保険の保険会社に連絡し、補償の対象かを聞く
  3. 被害を受けた側の見積もりと写真をもらう
  4. 見積が高すぎると感じたら、相見積もりを取って協議する

下の階の人と直接お金の話をするより、管理会社と保険会社に入ってもらうほうが話はまとまりやすいはずです。

水漏れで使える保険は3種類

賃貸の契約では、火災保険への加入を求められることがよくあります。国交省の事例集は、こうした保険に水漏れ事故の補償や、隣人・貸主への損害賠償の補償が含まれることも多いとしています。

使う補償は、守る相手で分かれる仕組みです。

水漏れの損害と、使う補償

損害を受けたもの使う補償誰の保険か
借りている部屋の床・壁(貸主の物)借家人賠償責任漏らした借主
下の階の天井・家財個人賠償責任漏らした借主
自分の家財(上の階から漏れてきた)相手の個人賠償責任、または自分の家財の補償相手、または自分

水漏れで使う補償は、守る相手で決まる

  • 水漏れで損害が出た
    • 借家人賠償責任借りている部屋(貸主の物)の床や壁を傷めたとき
    • 個人賠償責任下の階の天井や家財など、他人の物を傷めたとき
    • 家財の補償上の階から漏れてきて、自分の家具や家電が濡れたとき

図:貸主の物は借家人賠償、他人の物は個人賠償、自分の物は家財の補償で受ける。

補償の範囲や自己負担額は、保険ごとに違います。証券や約款で「水濡れ」「漏水」の扱いを確かめてください。補償の種類と選び方は賃貸の火災保険は自分で加入できるかで詳しく扱いました。

上の階から水漏れしてきたとき

上の階から漏れてきたら、写真を撮って管理会社に連絡し、原因の確認を任せます。上の階の住人の過失なら、家財などの損害はその住人に賠償を求めます(民法709条)。

建物の劣化が原因なら、相手は貸主です。国交省の事例集は、修繕のあいだ住めないなら、引越し費用や修繕期間中の居住費を貸主に請求できると考えられるとしています(Q4)。

部屋が使えない間は家賃が減ることがある

借主に落ち度がなく部屋の一部が使えなくなったら、その割合に応じて家賃は減額されます(民法611条1項)。

国交省が平成28年に管理会社などへ行った調査では、上の階からの漏水は一部使用不能のトラブルで2番目に多い53.8%でした。そのうち賃料の減額やお詫び金などで対応したのは24.5%です。

上の階からの漏水で決まった対応の例(国交省の事例集・調査)

出典使えなかった・修繕までの期間決まった対応
令和3年 対応事例集 事例134日間ホテル1泊分の宿泊費
平成30年 調査(東京都)4日一時的に賃料を30%減額
平成30年 調査(愛知県)7日一時的に賃料を25%減額
平成30年 調査(東京都)30日一時的に賃料を2%減額
令和3年 対応事例集 事例1052日間月額賃料の約50%を減額
令和3年 対応事例集 事例11100日間解決金(賃料4か月分の約20%)

同じ期間でも割合に幅があるのは、どれだけ使えなかったかが違うためです。事例10では、漏水そのものは軽く住み続けられていました。それでも工事に52日かかったことを踏まえて、貸主側から減額を提案しています。

一方で、天井から少ししみる程度で部屋は普通に使えている場合もあります。令和3年の事例5では、下の階の入居者は一部使用不能とは言えない状態として、減額の協議に至りませんでした。

家賃を自分で減らして払うのは避ける

国交省の平成30年の事例集は、家賃が当然に減るからといって一方的に支払いを拒むと、契約を解除されて明渡しの訴訟を起こされるリスクがあると注意しています。家賃はいつもどおり払い、減額分は話し合って精算するのが安全です。

エアコンが使えなくなったときの減額の考え方は、賃貸のエアコンが故障したときの対処法でも取り上げています。

大家が直してくれない・水道代が増えたとき

連絡しても動いてもらえないときは、借主が自分で修繕して、費用を貸主に請求できる場合があります。

民法607条の2は、借主が修繕できる場合を2つ挙げています。

  • 貸主に修繕が必要だと伝えたのに、相当の期間内に修繕してもらえないとき
  • 急迫の事情があるとき

貸主が払うべき修繕費を立て替えたら、すぐに貸主に請求できます(民法608条1項)。事例集のQ3-1は、まず貸主に知らせること、緊急なら応急程度か普通の修繕にとどめることを求めています。

水道代が増えたとき

東京都水道局は、漏水があっても水道メーターで計った水量の料金は払うのが原則だとしています。ただし事情によって減額できる場合もあるので、水道局に問い合わせてみてください。

大家に連絡したのに直してもらえず、水が出っぱなしで水道代が上がった場合はどうでしょう。事例集のQ6-2は、通常の月との差額を貸主に請求できる可能性があるとしています。請求するには、直さなかったことと水道代の増加のつながりを示す必要があります。

  • 修理を頼んだ日時と内容を、メールや書面で残す
  • 漏水が始まる前と後の検針票を取っておく
  • 直るまでの水道メーターの数字を写真で残す

よくある質問

Q1:夜中に水漏れして、管理会社につながりません。業者を呼んでいいですか?

水が止まらないなど急迫の事情があれば、借主が応急の修繕をできます(民法607条の2)。まず契約書の緊急連絡先に連絡してください。業者を呼ぶ場合は応急の範囲にとどめ、領収書を残して、翌日に管理会社へ伝えます。東京都水道局は、宅地内の漏水の修繕を都の指定給水装置工事事業者などへ頼むよう案内しています。

Q2:退去のとき、水漏れの跡を請求されますか?

原因と、すぐ知らせたかどうかで変わります。国交省の原状回復ガイドラインは、建物の欠陥による雨漏りでできた畳の変色やフローリングの色落ちを貸主の負担としています(借主が知らせなかった場合を除く)。一方、クーラーから水漏れして借主が放置し、壁が腐ったケースは借主の負担です。退去費用の全体は賃貸の退去費用の相場にまとめました。

Q3:火災保険に入っていません。下の階への賠償は全部自分で払うのですか?

過失があれば、賠償する責任はあります(民法709条)。ただ、自動車保険などに個人賠償責任の特約が付いていて、使える場合があります。家族の契約も含めて、手元の保険証券を確かめてください。

Q4:業者が洗濯機を無理に設置した後、排水ホースから漏れました。

誰に、どの程度の過失があるかを話し合って分担を決めます。国交省の事例集のQ1-5は、仲介会社の担当者が排水管を押し込んで洗濯機を設置したケースです。過失者が過失の程度に応じて損害を負担するとしています。割合に明確な基準はなく、事案ごとに決まります。

Q5:下の階の人から、直接高い修理代を請求されました。

すぐに払わず、原因と損害の範囲を管理会社と保険会社に確かめてもらいます。見積が相当な額を超えて高いと感じたら、相見積もりを取って協議できます。テレビなどの家財は、新品ではなく同等の中古品を買う価格が目安です(事例集Q2-1)。まとまらなければ、消費生活センターや弁護士に相談してください。

まとめ

  • 水漏れしたら、止水栓か元栓を閉めて、管理会社か大家に連絡
  • 配管の老朽化なら修理は貸主。蛇口の閉め忘れなど借主の過失なら借主
  • 水漏れには火事のような軽過失の特例がない。普通の過失でも賠償の対象
  • 下の階への賠償は通常の損害の範囲。家財は同等の中古品の価格が目安
  • 保険は守る相手で使い分ける。貸主の物は借家人賠償、他人の物は個人賠償
  • 上の階から漏れてきて部屋が使えない間は家賃が減ることがある。家賃は自分で減らさず話し合う

水漏れは、気づいてからの数時間で被害の広さが変わります。止める・撮る・知らせるの3つを先に済ませてから、費用と保険の話に進んでください。

免責事項

※本記事は民法・失火ノ責任ニ関スル法律の条文、国土交通省の賃貸住宅標準契約書・民間賃貸住宅に関する相談対応事例集・改正民法施行に伴う対応事例集・原状回復ガイドライン、東京都水道局の公表情報(2026年10月時点)と不動産仲介の現場で見てきた事例をもとに整理した一般的な情報です。費用の負担や賠償の範囲、保険の補償は、個々の契約書・保険契約と水漏れの原因により異なります。個別の契約判断・法律相談は宅地建物取引士・弁護士・消費生活センター等の有資格者・公的窓口にご相談ください。

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この記事を書いた人

Ishidaです。地方都市の不動産仲介会社で営業アシスタントを10年務め、店長や主任の物件案内と契約立会いに同席しながら、年間1,500件を超える部屋を見送ってきました。

いちばん記憶に残っているのは、退去のときに高額な原状回復費を請求されて揉めるケースです。その多くは、契約の際に重要事項説明を聞き流していた方でした。逆に、最初にひと言確認しておくだけで防げたトラブルも数えきれません。

自分自身も7回引っ越し、そのたびに見積もりや初期費用の相場を体で覚えました。現場で見てきたことと、借り手として直面した実感の両方から、後悔しない部屋探しと引越しを整理しています。契約前の疑問は、遠慮なく不動産会社に確かめてくださいね。

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