トラブルを解決するための一つの解決策

  家主や管理会社との交渉(「相対交渉」、「示談」、「和解契約」など)がうまくいかない場合、裁判に頼るしか解決方法はないでしょうか?
  そんなことはありません。裁判以外に紛争を解決する方法(代替的紛争処理方法=ADR(Alternative Disputes Resolutions)がいくつかあるのです。

 これらADRと呼ばれる解決方法は、世の中が複雑で、インターネットなど新しい分野の訴訟が増え続ける中で、訴訟だけに頼るのでは解決に時間がかかり過ぎるところから注目を集めてきています。そして、実は、ADRには、裁判にないさまざまな特徴・メリットがあるのです。

A) フォーマル(形式・手続)にこだわるのではなく、当事者が自由に行動しやすく処理が迅速であることです。

B) リーガル(法律の条文)にこだわりすぎず、実情を重視して判断することです
C) 弁護士以外の専門家にも参加させることが多いことです。

D) 裁判所や行政機関のような公的機関だけでなく、民間の機関でもADRを行っていることです。

E) コストが安いことです。

F) 裁判と異なり非公開で行われることが多いので、プライバシーを他人に見られることが少ないことです。

G) ADRで解決できなくても裁判という最終手段が残っている場合があることです。

H) もっとも重要なこととして、第三の解決方法を提示することで、裁判のような「Win-Lose」関係ではなく、「Win- Win」関係も不可能ではないということです。

 例えば、クロスの張替え費用をめぐる訴訟が起こる背景として、家主は次の入居者を見つけやすくするためにクロスの張替えを行うのですが、その費用を借主に転化しようとすることが原因と考えられます。

 それに対して、納得できない借主が「家主が負担せよ」と訴えた場合、裁判では、「家主が負担せよ」、「借主が負担せよ」、「家主と借主で按分負担せよ」という判断のいずれかとなります。

 しかし、ADRでは、「家主は次の入居者が確保できればよいので、借主が一定期間内に次の入居者を見つけてきた場合には、クロスの張替え費用だけでなく、他の費用も含めて敷金を全額返金してあげるという案はどうか?そして見つけられなかった場合のみ費用を折半してはどうか?」というような、どちらにもメリットのある「第三の解決策」を提案することができるのです。

 つまり、裁判では、訴える人(原告)の訴えた内容に対して、「合理性があるかどうか?」だけの判断がなされるために、どうしても原告の知識・情報の範囲内の解決しかできないのに対して、ADRでは、幅広い知識を持つ第三者である専門家によって、「もっとよい解決方法はないか?」として「第三の解決策」を考え出してくれる可能性があるのです。

 それでは、代表的なADRを見ていきましょう。

 まず、ADRの分類方法として、「裁判所が関与するもの」、「裁判所が関与しないもの」に分けてみると、前者では、「民事調停、和解」、後者では、「仲裁、調停、あっせん、相談」などが上げられます。

A) 「民事調停」
 「民事に関する紛争につき当事者が互いに譲歩して、互いの条件を理解し実情に即した解決を図ること」(民事調停法第1条)であり、性質上は和解と同じく当事者間の話し合いによる解決方法です。

 調停は、原則として、紛争の相手方の住所地を管轄する簡易裁判所において行われます(合意により地方裁判所を管轄とすることもできます)が、裁判官と民間から選任された2人以上の調停委員で組織された調停委員会により、調停案を提示してお互いの歩み寄りを促し、調停が成立した場合には、「調停調書」に内容が記載されると、確定判決と同一の効力をもちます。
 しかし、調停が不成立となった場合でも、裁判所が当事者双方に妥当を思われる解決案を「決定」として提示することができ、当事者の異議がなければ、調停の成立と同等の効果が発生するとされています。

B) 「和解」
 裁判所が関与する「和解」ですが、裁判所の面前で紛争当事者が互いにその主張を譲歩して行う和解のことです。
 「裁判上の和解」には2種類あり、簡易裁判所における起訴前(訴え提起前)の和解(即決和解ともいいます)と訴訟係属中にされる訴訟上の和解です。
 和解が成立し、「和解調書」が作成されると、起訴前の和解も裁判上の和解の場合もいずれの場合も確定判決と同一の効力をもつとされています。(民事訴訟法267条)。

C) 「仲裁」
 1名又は数名の「仲裁人」に紛争解決の判断をさせる手続ですが、重要なポイントとしては、仲裁においては、第三者(仲裁人)の判断に拘束され、当事者間において確定判決と同一の効力(仲裁手続法)をもつとされているということです。これは、次の「調停」と大きく異なる点です。
 弁護士会などが行っている「仲裁」は、経験の豊かな弁護士や元裁判官などが仲裁人となって、双方の話をじっくり聞きながら、お互いに納得のいく解決をめざしています。

D) 「調停」
 公正・中立な第三者が、当事者の間の争点を整理した上で、当事者間で自主的な解決がなされるように助言、援助、調整などをしたり、事案について作成した意見を受諾するよう勧告をしたりするもので、国民生活センター、消費生活センターなどが有名です。

E) 「あっせん」
 これも、「調停」とほとんど同じものですが、民間業者(団体)などが行っている場合に、「あっせん」と呼んでいるケースが多いようです。例えば、宅建協会などでの業務が有名です。

F) 「相談」
 もっとも基本的なトラブル解決策です。専門知識を有する機関などで、よい解決法のアドバイスを受けるための活動です。

G)「交渉支援」
 これは、正確には、一般的なADRとは異なりますが、特に、敷金の返還交渉を支援するサービスを提供する業者が有名です。交渉自体を代理で行うのではなく、交渉のお手伝いを行い、成果があれば、一定の報酬を得るという仕組みです。

 なお、弁護士などのプロへのご相談は、「まずは専門家に無料相談してみよう!」が便利です。