退去時および退去後に発生しやすいトラブル
を項目別に分けています。項目をクリックすると、具体的な質問が出てきます。
| 契約期間中の途中退去 | 日割り精算 | 退去時の立会い | 修繕費用の借主負担 |
| ハウスクリーニング | カギの交換 | 原状回復のための承諾書 | 原状回復期間 |
| 敷金返還 | 敷引き・解約引き |
| 契約期間中の途中退去 (1)契約期間の途中で退去を申し入れたが、家主は「契約期間中の途中解約を認めない」という契約書を盾に、契約終了までの家賃を全額支払えと言ってきた。拒否することはできるか? (2)契約書では、「6ヶ月前までに通告せよ」となっていたが、実際には1ヶ月前となってしまったら、「5か月分を違約金として支払え」と言ってきた。支払い義務はあるのか? (3)契約書では、「2ヶ月前までに通告せよ」となっていたが、実際には1ヶ月前となってしまったが、その代わり、新たな借主を見つけてきたのに、「1か月分を違約金として支払え」と言ってきた。家主の言い分に従わざるを得ないのか? (4)契約期間中の途中解約の場合には、「敷金の返却をしない」という特約があったが、それに従う必要があるのか? (5)1年未満の入居期間の場合、「敷金の返却をしない」という特約があったが、特約に従う必要があるのか? 日割り精算 (1)月末ではなく、25日に退去することになったが、家賃の日割り精算をしてくれない。これは違法ではないのか? (2)日割り精算をしてくれることになったが、共益費は日割り精算してくれない。これはおかしいのではないか? 退去時の立会い (1)退去時に、室内の点検のために家主の立会いをお願いしたが、「あとから見て修繕すべきところがあれば連絡する」と言って立会いは拒否された。後からだとどれだけ請求されるかわからないので、立会いをしてほしいのだが、無理な要求か? (2)退去時に、室内の点検のために家主の立会いをお願いしたら、家主の代わりに、内装業者の人が立ち会うことになった。何となく不利な対応をされるようで納得しがたいのだが、何とかならないものか? (3)退去時に、室内の点検のために家主の立会いをお願いしたら、家主の代わりに、仲介業者の人が立ち会うことになった。何となく問題があるように思うが、どういう問題が考えられるのか? (4)退去時に、室内の点検のために立会い確認を求められたが、仕事で忙しいと言うと、家主は「ではこちらで見てから問題があれば連絡する」と言ってきたが、何か問題はあるのか? (5)退去時の室内点検の際、入居者の過失もないのに、修繕費用の負担を求められたが、強い調子で言われたので、一応、確認の書類に署名捺印したが、やはり納得できないので、後日クレームをつけたが、クレームは認められるか? 修繕費用の借主負担 (1)契約書には、「いかなる場合にもすべての修理・修繕は借主の負担とする」と書いていたので、借主に責任がないと思う部分の修理費用まで請求された。契約書に書かれていた場合には、泣く泣く従うしかないのか? (2)契約書には、「いかなる場合にもすべての修理・修繕は借主の負担とする」と書いていたが、実際には、修理していないところまで、費用の請求をされた。これは明らかにおかしいと思うのだが、泣く泣く従うしかないのか? (3)家主は、一人の入居者から修繕費用を徴収すると多額になるため、例えば、クロスの張替えを行わない場合でも、一定額を修繕分担費用として請求しているという。家主は、「こうすることで、みんな公平に負担してもらうことになり、みんなから喜ばれている」と自信満々だが、家主の主張に従うべきなのか? (4)契約書には、「借主に責任がある部分の修繕費用は実費請求を行う」とだけ書いていたので安心していたら、家主から「6年も住んでいたらどこも傷んで当然なので、修繕費用はすべて請求する」と言われた。何となくおかしいと思うのだが、どのように反撃することができるか? (5)契約書には、「借主は原状回復義務がある」とだけ書いてあったが、家主は、「契約書通り、入居当時の状態に戻してもらわないと困る」として、すべての修繕費用からクロスやフローリングの張替え費用まで莫大な請求をしてきた。「原状回復義務」とはそういうものか? (6)入居当時からクロスの一部が剥がれていたが、生活するのに問題ないのでそのままにしていたら、退去時に「クロスが剥がれているので張替え費用を請求する」と言われてしまった。家主には、「入居時から剥がれていた」と言ったのに納得してくれない。このまま泣く泣く費用を負担せざるを得ないのか? (7)入居当時から、浴室の壁にカビが生えていたが、特に気にならなかったのでそのままにしていたら、退去時に「浴室の壁にカビが生えており、壁を取り替えるしかないので、その費用を請求する」と言われてしまった。家主には、「入居時からカビが生えていた」と言ったのに納得してくれない。このまま泣く泣く費用を負担せざるを得ないのか? (8)退去時、網入りガラスにひびが入っていることを指摘されたが、自分で傷つけた覚えがなかった。しかし、管理会社は、「入居中にひびが入っているのだからあなたの責任である」として費用請求すると言ってきて。納得できないのだが、対抗手段はないものか? (9)数年間住んでいた部屋を出る予定なのですが、壁に大きな穴を開けてしまいました。退去の際、どれくらいの請求となるのか心配なので、何かアドバイスがあればお願いします。 ハウスクリーニング (1)退去時、「ハウスクリーニング費用は借主負担」と言われたが、契約書のどこにも、そのような記載がなかった。それでも、家主の言い分に従わざるを得ないのか? (2)退去時、「ハウスクリーニング費用は借主負担」と言われたが、確かに契約書にその旨の記載があった。このような場合には、家主の言い分に従わざるを得ないのか? (3)退去時、「ハウスクリーニング費用は借主負担」と言われた。確かに契約書にその旨の記載があったが、実際の費用が高すぎるように思う。それでも契約書に記載されていれば、家主の言い分に従わざるを得ないのか? カギの交換 (1)退去時に、「カギの交換費用は負担してもらいます」と言われたが、契約書のどこにもそういう記載はなかった。家主は、「このあたりの慣習であり、どこも同じように負担してもらっている」と言うが、慣習が本当なら従わざるを得ないのか? (2)退去時に、「カギの交換費用は負担してもらいます」と言われたが、契約書には確かにその旨の記載があった。このような場合には、家主の言い分に従わざるを得ないのか? (3)退去時に、借りていたカギのひとつを紛失していたら、カギの交換費用および手数料として5万円を請求された。法外だと思うが、紛失した責任は確かにあるので、管理会社の主張には従うしかないのか? 原状回復のための承諾書 (1)退去時に、「原状回復のための承諾書」というものにサインを求められ、仕方なくサインしたが、後からよく読んでみると、借主に不利なことがたくさん書いてあったので撤回したいのだが、撤回は可能か? (2)入居時に、「原状回復のための承諾書」というものにサインを求められ、仕方なくサインしたが、退去時に、借主に不利なことがたくさん書いてあったので撤回しようと思うのだが、撤回は可能か? 原状回復期間 (1)契約が終了し、家主立会いの上、原状回復のための修繕負担については同意した。しかし、家主から、「修繕を行う期間については、他の人に貸し出せないので、家賃の支払いが必要と言われた。」家主に従う必要があるのか? (2)契約がもうすぐ終了するのだが、家主から、「原状回復をしてから明け渡してもらう必要があるので、契約終了日の1週間前には退去してくれ」と言ってきた。確かに、契約書には、そのような記載があるのだが、契約期間中なのに、家主の言うように退去しなければならないのか? 敷金返還 (1)もうすぐ退去予定だが、友人に聞くと、「敷金をなかなか返さないケースが多い」というので、家主に対し、「敷金の返還と明け渡しを同時に行いたい」、すなわち、法律用語で言うところの「同時履行の抗弁権」を主張したが、家主は認めなかった。こちらの主張に無理はあるか? (2)退去してから、3ヶ月以上たつのに、敷金の返還がされなかった。家主に連絡すると、「もう少し待ってくれ」というが、理由がはっきりしなかった。このような場合、どのような対策が可能か? (3)退去してから、なかなか敷金が返還されなかったので、家主に連絡すると、「実際には修繕費用などで敷金を上回ったが、追加徴収はかわいそうなのでまけてやった」というばかりだ。特別、汚していたはずもないので、おかしいと思うのだが、泣き寝入りするしかないのか? (4)退去後、敷金の返還を待っていると、管理会社から、「修繕箇所が多く、敷金を10万円以上上回る費用がかかったので、追加徴収することとなった」と言ってきた。確かに汚した箇所があるのだが、それだけ費用がかかるとは思わなかったのだが、管理会社に従うしかないのか? (5)退去後、敷金の返還を待っていると、管理会社から、「修繕箇所が多く、敷金を10万円以上上回る費用がかかったので、追加徴収することとなった」と言ってきた。確かにペットを飼っていたので汚した箇所があるのだが、それだけ費用がかかるとは思わなかったのだが、管理会社に従うしかないのか? (6)退去後、敷金の返還を待っていると、管理会社から、「修繕箇所が多く、敷金を10万円以上上回る費用がかかったので、追加徴収することとなった」と言ってきた。確かに工事業者の明細や領収書のコピーも同封されてきたのだが、このような場合には、管理会社に従うしかないのか? (7)賃貸アパートの契約書に,「敷金は退室時返金しません」とあるのですが,これは違法ではないのですか? 敷引き・解約引き (1) 敷引きで一定金額を差し引かれているのに、さらに実費請求として、クリーニング代や修繕費用を請求してきた。拒否したいのだが、どのように交渉すればよいか? 契約期間中の途中退去 (1)契約期間の途中で退去を申し入れたが、家主は「契約期間中の途中解約を認めない」という契約書を盾に、契約終了までの家賃を全額支払えと言ってきた。拒否することはできるか? → 契約期間を定めている契約(通常の契約)の場合、民法第618条の「当事者カ賃貸借ノ期間ヲ定メタルモ其一方又ハ各自カ其期間内ニ解約ヲ為ス権利ヲ留保シタルトキハ前条ノ規定ヲ準用ス」という規定が適用され、「契約期間中の途中解約の特約」がある場合にのみ、途中解約が認められています。 この点については、常識的な判断とは非常に異なっています。 つまり、契約書に、「途中解約条項」がなければ、途中解約そのものが認められないからです。 しかしながら、契約書に「途中解約条項」がないと、いかなる理由があっても、契約期間が終わるまで家賃を支払わなければならないということになりますので、2001年4月以降の契約については、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」に該当すると考えられますので、「途中解約条項」がない場合でも、必ずしも、契約期間終了までの家賃支払いを行う必要はないでしょう。 判例も、社会通念上、常識的な範囲を越える金額の支払いについては免除する傾向にあるようです。 なお、契約期間を定めない契約(法定更新した契約も含みます)の場合には、民法第617条の規定により、通知後3ヵ月後に解約することができます。 (2)契約書では、「6ヶ月前までに通告せよ」となっていたが、実際には1ヶ月前となってしまったら、「5か月分を違約金として支払え」と言ってきた。支払い義務はあるのか? → 前項で述べたように、一般の契約では、「途中解約条項」がない契約でも認められているのです。 家主からの退去通告は、6ヶ月前までに行うことが法律で義務づけられているのですが、借主からは、特約がなければ、民法によって「3ヶ月前」となりますが、特約があれば、「6ヶ月前」でも無効ではないのです。 従って、法理論上は、契約書の特約が優先されますので、5か月分の違約金の支払いを拒否することはできません。 しかし、消費者契約法によれば、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定がありますが、借主側からの「6ヶ月前通告」は、消費者の利益を一方的に害する条項に該当すると思います。 そこで、2001年4月以降の契約であれば、消費者契約法が適用されますので、このような特約は認められないと考えられます。 2001年3月までに交わした契約であっても、裁判所では、消費者契約法の趣旨は重視されますので、特約の有効性を否定する可能性が高いでしょう。 それまでの判例においても、5か月分もの違約金を取る合理的理由がないとして、せいぜい、次の入居者を見つけるまでに3ヶ月程度あれば十分として、「3か月分」までの通告期限は認めるものの、それを越える部分は認定されにくいようです。 (3)契約書では、「2ヶ月前までに通告せよ」となっていたが、実際には1ヶ月前となってしまったが、その代わり、新たな借主を見つけてきたのに、「1か月分を違約金として支払え」と言ってきた。家主の言い分に従わざるを得ないのか? → 違約金の支払いは、契約内容に基づいているものであり、それ自体は有効です。 新たな借主を見つけてきたら、家主の損害はないかもしれませんが、だからと言って、違約金の支払いを拒否することは不可能です。 ただし、家主との交渉次第では、違約金の減免を認めてくれる可能性もありますので、お願いしてみることは無駄ではないと思います。 (4)契約期間中の途中解約の場合には、「敷金の返却をしない」という特約があったが、それに従う必要があるのか? → 本来、敷金は、退去時に借主の負債や原状回復に要する費用を担保するために、家主が預かっているお金ですから、途中解約の場合には返却しないという考え方は不合理です。 問題は、敷金の金額と他に違約条項があるかどうかです。 つまり、敷金の金額自体が少なく、一般に、契約期間中の途中解約の違約金として認められる金額の範囲内であれば、「敷金を違約金に充当する」ということになり、それほど不合理とはいえなくなります。 しかし、敷金の金額が大きく、違約金として没収される金額としては妥当ではないという場合には、妥当な金額を越える部分については争うことができるでしょう。 また、「敷金の返却をしない」という特約以外にも、違約金に相当する条項があれば、二重払いとなりますので、これは不当な契約ということになるでしょう。 (5)1年未満の入居期間の場合、「敷金の返却をしない」という特約があったが、特約に従う必要があるのか? → この相談も、前項の内容とほとんど同じだと言えるでしょう。 ただ、異なるのは、「1年未満の入居期間」という場合のペナルティーとして妥当かどうかという問題があることです。 通常の賃貸借契約では、1年以上の契約であり、1年未満に退去されると、次の入居者を見つけることが難しいケースがよくあります。 また、家主は、仲介業者から入居者を紹介して契約した場合、家賃の「0.5ヶ月〜1か月分」の仲介手数料や広告料の支払いが必要ですので、1年未満に退去されると、その分の負担も大きくなります。 従って、1年未満の入居期間となる場合に、違約金を通常以上に課すことも、ある程度の合理性を持っていると言えるでしょう。 そこで、敷金の金額が家賃の2ヶ月分程度であれば、不当な特約とは言えないと思います。 日割り精算 (1)月末ではなく、25日に退去することになったが、家賃の日割り精算をしてくれない。これは違法ではないのか? → 家賃などは、民法上、「法定果実」と呼ばれていますが、民法第89条2項では、「法定果実は之を収取する権利の存続期間日割を以って之を取得す」として、民法上の原則としては、「日割り精算」を定めています。 しかし、民法のこの規定は任意規定のため、契約書の特約で、「日割り精算を行わない」という規定を設けた場合、借地借家法上の強行規定や公序良俗などに反していなければ、その特約が優先されることになるのです。 借地借家法には、家賃の日割りに関する規定自体がなく、日割りをしないことが公序良俗に反しているわけでもありませんので、「日割り精算を行わない」という特約は有効なのです。 従って、ポイントは、契約書に「日割り精算を行わない」という特約があったかどうかです。 特約があれば、従うしかありませんが、特約がない場合には、民法上の原則が適用されますので、日割り精算を要求することができます。 (2)日割り精算をしてくれることになったが、共益費は日割り精算してくれない。これはおかしいのではないか? → 前項で述べたように、民法上は、日割り精算が原則です。 共益費は、家賃に付随する費用ですから、家賃について日割り精算するのであれば、当然のことながら、共益費についても、日割り精算を行うべきでしょう。 退去時の立会い (1)退去時に、室内の点検のために家主の立会いをお願いしたが、「あとから見て修繕すべきところがあれば連絡する」と言って立会いは拒否された。後からだとどれだけ請求されるかわからないので、立会いをしてほしいのだが、無理な要求か? → 退去時の室内点検時に、立会いを行うのは、家主(あるいは家主の代理人)と借主との間で、借主の責任範囲を確定させるためです。 つまり、家主が、「この部分は、入居当時にはなかった傷なので、借主であるあなたがつけた傷ですね?」と借主に確認し、借主が「確かにそうです」と承諾してもらう必要があるということです。 家主が、自分の費用ですべて修繕するつもりであれば、わざわざ立会い確認をして、借主の責任を確定させる必要はありませんが、借主(他人)の費用で修繕させようとするなら、当然のことながら、借主の責任であるという証明(挙証責任)を行わなければならないのです。 従って、退去時に、家主の立会いを求めるのは、当然の権利ですし、家主にとっては義務なのです。 家主が、その義務を怠って、「あとから見て修繕すべきところがあれば連絡する」という態度は許されないだけでなく、このような家主は、もともと、借主の責任範囲と家主の責任範囲を区別して考えようとするつもりがなく、すべてを借主の費用で修繕させようという魂胆なのです。 だからこそ、「借主の責任範囲の確定」など無意味だと考えているのです。 いずれにしても、借主としては、家主に対して、「退去時に必ず立会い確認をしてほしい」という連絡をしておく必要があります。 「どうせ無理だろう」ということで、家主に連絡しないというのではなく、必ず、連絡しておくべきです。 というのは、あとあと、敷金返還が正当に行われず、少額訴訟に発展したような場合、「借主が立会い確認を求めたにもかかわらず家主が拒否した」という事実が残っていれば、家主にとっては不利な、借主にとっては有利な証拠が残ることになり、借主の心証がよくなるからです。 後々のことを考えて、行動しておいたほうがよいのです。 (2)退去時に、室内の点検のために家主の立会いをお願いしたら、家主の代わりに、内装業者の人が立ち会うことになった。何となく不利な対応をされるようで納得しがたいのだが、何とかならないものか? → 退去時の室内点検において、家主の代わりに、内装業者の人が立ち会うというケースはよくあるようです。 そのほうが、どこを修繕すべきかどうか、プロの的確な判断を行うことができるからということでしょう。 しかし、内装業者は、基本的には、「仕事になりそうなところ(修繕できそうなところ)はどこか?」という眼で室内を見て回る可能性が強く、家主自身が立会いする場合よりも、修繕する範囲を広めに指摘する場合が少なくないと思います。 従って、内装業者が、自社の利益を最優先しない業者でなければなりませんし、家主自身が、内装業者をきちんとコントロールする力量を持っていなければならないのです。 「内装業者をコントロールする力量」というのは、内装料金の相場や工事の単価、見積書の計算について、過剰な計算や無駄な工事をしていないかどうかを見抜ける力を持っているということです。 逆に言えば、家主が、「すべて業者に任せています」というような場合であれば、内装業者が家主の代理を行うというのは非常に危険で、借主に不利な判断をされる可能性が強いでしょう。 そこで、家主に対して、「本来、家主が立会いすべきではないか?内装業者だと過剰な請求をしがちだと思うので、プロの眼でも確認が必要というのなら、家主と内装業者の2者による立会いをしてほしい」という主張を行ってはどうでしょうか? 家主が、2者による主張を認めればよいですが、「すべて内装業者に任せている」と言うのであれば、「業者が無茶苦茶な請求を行った場合、家主はどのようにチェックするつもりなのか?」と聞き、家主の責任を追及しておいたほうがよいでしょう。 その上で、実際の立会い確認時には、自分の責任ではないという部分については、絶対に責任を認めず、「修繕負担の同意書」などに対しても、署名捺印を拒否するようにしたほうがよいでしょう。(署名捺印してしまうと責任を認めたことになり、後から覆すことが難しくなります) (3)退去時に、室内の点検のために家主の立会いをお願いしたら、家主の代わりに、仲介業者の人が立ち会うことになった。何となく問題があるように思うが、どういう問題が考えられるのか? → 仲介業者というのは、仲介だけを行った業者なのでしょうか?それとも管理会社なのでしょうか? 管理会社であれば、家主との間で管理業務委託契約を結んでいますので、退去時の点検も、家主の代理人として業務を行いますので、不自然ではありません。 しかし、単に、仲介を受けただけの業者である場合、家主が、自分で立会い確認を行うのが面倒なので、仲介業者に無理やり頼んでいるのだと思います。 仲介業者も断りきれずに受けているのだと思いますが、しかし、そうなれば、業者もただ働きというわけにも行かないので、敷金精算業務を家主から請け負う形で、内装業者の見積もりに上乗せしたり、内装業者に過剰な手数料を請求して結果的に内装業者の見積り額をアップさせたりするような場合もあります。 その上、もともと、仲介業者は、家主の代理人としての資格もない(業務受託契約を行っていない)はずです。 さらに、仲介業者としては、家主からの申し出に断りきれずに退去点検するわけですから、家主に対しては立場が弱い(断れば、物件提供をしてくれなくなる可能性がある)ので、本来、家主の責任である部分も、すべて借主の負担に転嫁させて請求してくる可能性が強いと思います。 いずれにしても、家主が本来行うべき立会い確認に現れたのが仲介業者であった場合、上記の点を指摘し、借主の責任範囲を過剰にしないように求めなければなりません。 (4)退去時に、室内の点検のために立会い確認を求められたが、仕事で忙しいと言うと、家主は「ではこちらで見てから問題があれば連絡する」と言ってきたが、何か問題はあるのか? → 本来、退去時の室内立会いは、借主・家主双方によって、それぞれの責任範囲を確定させるために行うものです。 一般的には、借主の責任範囲を確定させるために、家主の立会いを求めることになるわけですが、この相談では、借主が退去時に立ち会えないのでどうしたらよいかという内容となっています。 借主が立ち会えないという場合も、家主との双方での確認とはならないため、借主に不利な判断がされてしまう可能性が非常に大きいといえます。 しかし、退去後には、「仕事が忙しくて時間がない」というのであれば、家主に事情を説明し、退去の引越時の荷物撤去後すぐに室内点検をしてもらうように、家主に交渉してはどうでしょうか? そうすれば、修繕すべき部分の範囲については、家主・借主双方で確認することもできますし、家主が勝手に判断して請求してくるということも防止できるでしょう。 家主が、「借主の引越日は時間が取れないので立ち会えない」というのであれば、できるだけ他の日に、双方での確認ができるように日程調整したほうがよいのですが、それが不可能である場合、最低限の対策として、「借主が希望した日に家主が立ち会って室内点検してくれなかった」という事実については証拠付けておかなければなりません。 つまり、のちのちに敷金返還請求でトラブルとなり、少額訴訟に発展した場合のことを想定し、「家主は希望日に立会い確認をしてくれなかった」という事実を残しておけば、家主の挙証責任を問われ、家主には不利に、借主には有利な状況となるのです。 そこで、家主に対しては、「引越日に立会い確認をしてほしい」ということをしつこいくらい求めておき、家主の記憶の中にはっきりととどめておくようにしておいたほうがよいでしょう。 (5)退去時の室内点検の際、入居者の過失もないのに、修繕費用の負担を求められたが、強い調子で言われたので、一応、確認の書類に署名捺印したが、やはり納得できないので、後日クレームをつけたが、クレームは認められるか? → 日本は契約社会です。署名捺印するというのは、契約したということになります。 契約というものは、いったん契約すると、一方が勝手に取り消しすることはできないというのが原則です。 取り消しすることができるのは、未成年が重要な契約を親権者に内緒で行った場合や、脅迫を受けて契約した場合、酔っ払ってまともな状況ではなかったような場合、クーリングオフ制度が認められている契約で所定の期間内の場合などに限られ、それ以外には、取り消しそのものは可能でも、取り消しによって発生した損害については賠償責任を負うことになるのです。 退去時の修繕負担についての確認書類などへの署名捺印も、ひとつの契約であり、上記の問題がなければ、有効となってしまうのです。 従って、「強い調子で言われたので、一応、確認の書類に署名捺印した」というのが、「脅迫」と認定されない程度のレベルでの「強い調子」である場合、契約をした以上、原則としては、その契約に従わざるを得なくなります。 しかし、2001年4月以降、消費者契約法により、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定が生まれていますので、確認書の内容が、消費者契約法違反であると認定されれば、消費者契約法違反となり無効であると主張することができます。 修繕費用の借主負担 (1)契約書には、「いかなる場合にもすべての修理・修繕は借主の負担とする」と書いていたので、借主に責任がないと思う部分の修理費用まで請求された。契約書に書かれていた場合には、泣く泣く従うしかないのか? → 民法第598条1項では、「借主は借用物を原状に復して之に附属せしめたる物を収去することを得」という規定を設けています。 これがいわゆる「原状回復」義務のもっとも根本的な意味であり、「物件内に持ち込んだものを撤去したり、壁に貼ったポスターなどを取り外したりして持ち出すことができる」ということを定めているに過ぎないのです。 当然ながら、このような原状回復義務から派生する修繕義務は非常に軽微なものに限られることになります。 一方、家主には、民法第601条1項において、「賃貸借は当事者の一方か相手方に或物の使用及ひ収益を為さしむることを約し相手方か之に其賃金を払ふことを約するに因りて其効力を生す」という規定で、家賃という対価を得ている以上「使用収益させる義務」があるとしています。 そして、使用収益させる義務から、家主には物件の修繕を行う義務があるとしているのです。 ところが、すべてを家主の修繕義務にしてしまうと、軽微な修繕についても、家主が修繕してくれるのを待つしかなく、それではかえって生活に支障が出るため、「修繕費用の借主負担特約」を設けて、「軽微な修繕については、家主の承諾を得ることなく、借主が自らの費用で修繕を自ら行うことができ。生活の不便を解消することができる」ようにしたのです。 つまり、もともと、民法の原則である「家主の修繕義務」をあらゆる場合に適用すると、かえって不便な生活になる可能性があるために、「修繕費用の借主負担特約」が考え出されてきたのです。 ところが、世の中には悪賢い人もいるもので、「修繕費用の借主負担特約」が誕生した背景と趣旨を無視し、「あらゆる修繕費用を借主負担とする」というようなとんでもない内容の「修繕費用の借主全面負担特約」が生み出されてきて、それが全国的に普及してきたのです。 そこで、判例においては、このような「修繕費用の借主全面負担特約」については、本来の法律上の考え方や特約が誕生してきた背景とは食い違い、このような特約の存在を許せば、借主に一方的に不利になることから、「家主の修繕義務を免除したに過ぎず、借主の全額負担を求めるには、それだけの特別な理由が必要である」として、よほどの特殊な事情がなければ、「修繕費用の借主全面負担特約」の効果を否定しています。 なお、2001年4月以降の契約においては、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定に反しますので、消費者契約法によって、このような特約は無効となります。 (2)契約書には、「いかなる場合にもすべての修理・修繕は借主の負担とする」と書いていたが、実際には、修理していないところまで、費用の請求をされた。これは明らかにおかしいと思うのだが、泣く泣く従うしかないのか? → 前項で述べたように、「修繕費用の借主全面負担原則」は、ただ同然で貸していたような契約などの特殊な契約でなければ、無効です。 その上、修繕していないところまで修繕費用を請求したとすれば、詐欺ということになります。 従って、家主に対して、「修繕していない部分まで修繕費として請求するのは、明らかに詐欺であり、支払いを拒否する」と通告したほうがよいでしょう。 (3)家主は、一人の入居者から修繕費用を徴収すると多額になるため、例えば、クロスの張替えを行わない場合でも、一定額を修繕分担費用として請求しているという。家主は、「こうすることで、みんな公平に負担してもらうことになり、みんなから喜ばれている」と自信満々だが、家主の主張に従うべきなのか? → 家主は勘違いしているのではないでしょうか? 本来、借主には、自然損耗(通常の生活上に発生した汚損・破損など)や経年劣化(建物は誰も住んでいない場合でも時が経てば劣化していくということ)による汚損・破損については責任を負う必要はありません。 借主が責任を負うのは、故意(わざと)や過失(ミス)、善良なる管理者の注意義務違反(自分のもの以上に大切に扱う義務違反)による場合に限られています。 ところが、実態としては、借主に責任がない自然損耗や経年劣化についても、借主の費用で修繕を行うケースが多いのです。 そういう実態を前提として、歴代の入居者に費用の一部の負担を求めているケースがあるのです。おそらく、家主はこういうケースだと思います。 なぜなら、もともと、借主に責任がある場合であれば、借主に対して、費用の一部を請求するというのではなく、全額請求することが多いからです。 本来、借主の責任がないのに、家主が修繕すべき費用負担を借主に転嫁する家主が多いため、「一部の費用負担だけでよい」という家主の主張に対し、責任の所在を忘れて、「一部の負担だけでよかった」という勘違いをしてしまう借主が多いのです。 そこで、家主の請求が、借主の責任に基づいたものであるのかどうかを確認し、借主の責任外である場合には、いくら一部負担とはいえ、拒否することができます。 (4)契約書には、「借主に責任がある部分の修繕費用は実費請求を行う」とだけ書いていたので安心していたら、家主から「6年も住んでいたらどこも傷んで当然なので、修繕費用はすべて請求する」と言われた。何となくおかしいと思うのだが、どのように反撃することができるか? → 借主に責任があるのは、故意(わざと)、過失(誤まって)、善良なる管理者の注意義務(自分のもの以上に大切に扱う義務のこと。もう少し難しく言えば、社会通念上、当然に要求されると考えられる程度の義務ということ。)違反によって、汚損・破損などが発生したような場合だけです。 自然損耗(通常生活上に発生した汚損・破損)や経年劣化(建物は年月が経過すれば、どんなに丁寧に取り扱っていても建物の価値が減少し、汚損・破損が進行すること)によって発生した汚損・破損は、借主は責任を逃れるのです。 そして、借主に責任がある場合にも、「当該部分を含む最小施工単位」のみの負担でよいのです。 例えば、壁のクロスを汚してしまった場合、汚れた部分の壁のクロスの張替え費用は負担しなければなりませんが、それ以外の面は費用負担する義務はありません。 さらに、「負担割合」によって、家主自身が負担すべき費用との按分負担となるのです。 壁のクロスなどの場合、「6年で残存価値10%となるような曲線を想定し、負担割合を算定する」という基準が提示されています。 相談者のように、6年も住んでいた場合には、壁のクロスの残存価値は10%しか残っていませんので、借主の責任はクロスの残存価値分の10%を負担すればよく、張替えに必要な90%の費用は、家主が負担すべきだとしています。 常識的には、「長年住んでいれば、高額な負担もやむを得ない」と考えがちですが、法的な考え方としては、「長年住んでいれば、借主の負担割合が低くなり、負担そのものが少なくなる」のです。 ちなみに、畳床、カーペット、クッションフロア、壁のクロスなどは、「6年で残存価値10%となるような曲線を想定し、負担割合を算定する」としており、設備機器の場合には「8年」ですが、逆に、経過年数を考慮しないものは、畳表、フローリング、ふすま紙、障子紙、ふすま・障子の建具部分、柱、カギの紛失、クリーニングなどです。 従って、家主に、このような法律上の考え方を説明し、理解を求めなければなりませんが、家主が理解しない場合には、敷金をきちんと取り戻すためには、少額訴訟も覚悟しなければならなくなるかもしれません。 (5)契約書には、「借主は原状回復義務がある」とだけ書いてあったが、家主は、「契約書通り、入居当時の状態に戻してもらわないと困る」として、すべての修繕費用からクロスやフローリングの張替え費用まで莫大な請求をしてきた。「原状回復義務」とはそういうものか? → 本来、原状回復義務の法律上の意味は、民法第598条1項によって示されており「借主は借用物を原状に復して之に附属せしめたる物を収去することを得」という規定で、「物件内に持ち込んだものを撤去したり、壁に貼ったポスターなどを取り外したりして持ち出すことができる」というだけのことなのです。 国土交通省(旧建設省)の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等を復旧すること」と定義して、原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化しているのです。 従って、家主の主張は、明らかに間違っています。 家主に、このような考え方を説明して理解を求めるようにしてください。 しかし、家主は、「契約書通り、元通りにせよ」というような主張を行ってくるかもしれませんが、原状回復についての家主の理解が間違っているのだということを納得するように、粘り強く主張しなければならないでしょう。 それでも、家主が間違った主張を元に、敷金返還をきちんと行わない場合には、少額訴訟などによって、正当な返金を受けるようにしなければならないでしょう。 (6)入居当時からクロスの一部が剥がれていたが、生活するのに問題ないのでそのままにしていたら、退去時に「クロスが剥がれているので張替え費用を請求する」と言われてしまった。家主には、「入居時から剥がれていた」と言ったのに納得してくれない。このまま泣く泣く費用を負担せざるを得ないのか? → 「入居当時からクロスの一部が剥がれていた」のであれば、当然のことながら、入居者には、その責任はありません。しかし、「そのままにしていた」というのは、2重の意味で問題なのです。 その理由の第一は、入居当初からはがれていたということを退去時に証明できないからです。 事実、そのために、家主から請求を受けているのです。 もうひとつの理由は、クロスなどの剥がれをそのままにしておくと、どんどん剥がれ具合がひどくなり、下地にまで悪影響を与える可能性があり、善良なる管理者の注意義務違反に問われるからです。 つまり、入居当時からの不具合自体についての責任がなくても、入居時に家主に通告して修繕を要求していなければ、責任の所在が一転し、不具合を放置し、不具合を大きくしてしまったという責任を問われてしまうことになるのです。 従って、残念ながら、入居者は、費用の負担をしなければなりません。ただし、クロスの張替えについては、「6年で残存価値10%となるような曲線を想定し、負担割合を算定する」という考え方がありますので、家主との費用の按分を請求することが可能だと思いますので、全額負担は拒否できるでしょう。 なお、クロスだけでなく、クロスの下地にまで影響を与えていて、下地の張替えまで必要になったような場合には、下地の張替え費用については、入居者が全額負担しなければならない可能性があります。 (7)入居当時から、浴室の壁にカビが生えていたが、特に気にならなかったのでそのままにしていたら、退去時に「浴室の壁にカビが生えており、壁を取り替えるしかないので、その費用を請求する」と言われてしまった。家主には、「入居時からカビが生えていた」と言ったのに納得してくれない。このまま泣く泣く費用を負担せざるを得ないのか? → 基本的に、前項と同じような考え方が適用されるでしょう。 つまり、入居当時の浴室のカビについては、入居者の責任はありませんが、カビが生えているのを放置し、被害を増やしてしまった場合には、善良なる管理者の注意義務違反として、入居者が責任を負わなければならなくなるでしょう。 しかも、カビについては、前項のような負担割合が適用されないため、入居者が全額負担せざるを得ない可能性があります。 なお、浴室の換気扇の性能が経年劣化して、本来の機能を果たさなくなったというような原因があったために、カビが生えやすくなったのであれば、家主との費用按分を求めることができるでしょう。 (8)退去時、網入りガラスにひびが入っていることを指摘されたが、自分で傷つけた覚えがなかった。しかし、管理会社は、「入居中にひびが入っているのだからあなたの責任である」として費用請求すると言ってきて。納得できないのだが、対抗手段はないものか? → もともと、網入りガラスは割れやすいのですが、なぜ使用するのかといえば、消防法により、防火地域内の場合、道路中止線や隣地境界線から1階が3m、2階が5mにかかる窓には法律で防火対策の製品を使用しなければならないとされているからです。 また、建築基準法によっても、延焼の恐れのある部分の隣地境界線、道路の中心部線から3m以内の場合、厚み6.8mmの網入りガラスが必要であるとされているのです。 「防犯のため」と思っている人もいますが、網入りガラスはガラスが割れても崩れ落ちないため、大きな音が立ちにくく、泥棒には好都合だとさえ言われています。 いずれにしても、網入りガラス自体、非常に割れやすいのです。 割れる原因としては、まず、ガラスと網の膨張率の違いがあります。 冬場など、外気が非常に下がっているときに太陽の直射光線が網入りガラスに当たった場合、網自体は鉄製なのでガラスよりも早く膨張し、それに耐え切れなくなったガラスが割れてしまうというものです。 次は、鉄製の網が結露などの影響で錆びついてしまうと膨張してしまうため、やはり、それに耐え切れなくなったガラスが割れてしまうというものです。 三つ目は、室内側で暖房機の熱が直接窓ガラスに当たり、やはり、外気との差が激しくなって、熱膨張率の差でひびが入る場合です。 四つ目は、今度は真夏などの高温状態では、ガラスと網の膨張率の差で割れてしまうというケースです。 五つ目は、色付のガラスや熱線吸収等のフィルムを張ったガラスの場合ですが、やはり膨張率の差によって、割れやすいといわれています。 六つ目は、網入りガラスのエッジ部分の強度が一般のガラスの半分程度になるため、強度不足による割れが発生しやすいということです。 七つ目は、窓ガラスにカーテンやブラインドを密着した場合、「熱だまり」ができてしまい、熱膨張率の差で割れてしまうというケースです。 いずれにしても、網入りガラスが割れやすく、しかも、ほとんどは自然に割れてしまいますので、借主の責任ではありません。 しかし、割れの原因をきちんと説明できなければ、家主を説得することが難しくなります。 「網入りガラスの割れの原因は、ほとんどの場合『熱割れ』か、『錆割れ』であり、入居者に責任はない」と説明し、納得を得るようにしてください。 (9)数年間住んでいた部屋を出る予定なのですが、壁に大きな穴を開けてしまいました。退去の際、どれくらいの請求となるのか心配なので、何かアドバイスがあればお願いします。 → 「壁の穴」によって、下地材の補修・張替え等が必要になる場合には、クロス代だけでなく、下地材をどのようにするのかによって、費用が相当変わってきます。 つまり、下地材の一部補修で済むのか、それとも、下地材全体の張替えを行う必要があるのかなど、内装業者が現場の状況を見て判断することになるでしょう。 その場合、本来は、一部補修で済むと判断できる場合でも、請求金額は張替え金額を請求してくる家主(管理会社)もありますので注意が必要です。 そこで、もし可能であれば、内装業者や工事業者に電話等で「現場の状況を見て簡単な見積もりをしてもらえないか?」と問い合わせをして、どのような補修方法が妥当か?補修費用としてはどれくらいの相場になるか?などを聞いておきたいものです。それが不可能な場合でも、修繕費用の相場を事前に知っておいたほうがよいでしょう。 ハウスクリーニング (1)退去時、「ハウスクリーニング費用は借主負担」と言われたが、契約書のどこにも、そのような記載がなかった。それでも、家主の言い分に従わざるを得ないのか? → 借主は、退去時、原状回復義務を行わなければなりません。 原状回復義務のもともとの意味は、「物件内に持ち込んだものの撤去義務」であり、国土交通省(旧建設省)の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」においても、「入居当時の状態に戻すことではない」としています。 借主は、退去時、通常の清掃を行えばよく、プロの業者のハウスクリーニングを行う義務までは課されていません。 従って、家主の主張には、きっぱりと「ノー」と言ってください。 (2)退去時、「ハウスクリーニング費用は借主負担」と言われたが、確かに契約書にその旨の記載があった。このような場合には、家主の言い分に従わざるを得ないのか? → 契約書に、「ハウスクリーニング費用は借主負担」というような規定がある場合、このような特約が有効であるかどうかがポイントとなります。 ハウスクリーニングというのは、プロの業者による清掃ですので、法的には、原状回復義務を上回るものです。 そこで、国土交通省(旧建設省)の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」において、原状回復義務以上に借主に負担を負わせる特約については、「特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること」、「賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことを認識していること」、「賃借人が特約による義務負担の意志表示をしていること」の要件を満たしていなければならないとしているのです。 逆に言えば、一般的に、ハウスクリーニング特約が認められるというケースはまずないということです。 判例においても、ほとんどの場合、ハウスクリーニング特約は認めていません。 さらに、2001年4月以降の契約においては、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という考え方によって、ハウスクリーニング特約が認められる可能性がほとんど皆無に近くなったというべきでしょう。 従って、家主に対しては、上記のような説明を行い、ハウスクリーニング費用の負担はできないということを宣言したほうがよいでしょう。 (3)退去時、「ハウスクリーニング費用は借主負担」と言われた。確かに契約書にその旨の記載があったが、実際の費用が高すぎるように思う。それでも契約書に記載されていれば、家主の言い分に従わざるを得ないのか? → 前項で述べたように、ハウスクリーニング特約は、原則として認められていません。 一部、認められるケースもありますが、認められるためには、「暴利的でない」費用でなければなりませんが、具体的には、同じ地域においてのハウスクリーニング料金相場の範囲内でなければなりません。 つまり、相場よりも高額な費用を請求された場合には、特約として一切認められないということになるのです。 ハウスクリーニング料金の相場ですが、ワンルーム・1Kなどの場合、2〜2.5万円程度、それよりも広くなればその分高くなってきますが、判例などによれば、「1m2=1000円」程度までしか認められないようですので、物件の広さ(専用面積全体)から、ハウスクリーニング代が妥当かどうかを判断してください。 カギの交換 (1)退去時に、「カギの交換費用は負担してもらいます」と言われたが、契約書のどこにもそういう記載はなかった。家主は、「このあたりの慣習であり、どこも同じように負担してもらっている」と言うが、慣習が本当なら従わざるを得ないのか? → 慣習自体が本当のことであったとしても、それに従うかどうかは、本人(借主)次第の判断によります。少なくとも他人(家主)から強制されるものではありません。 それに、契約書には一切記載がないわけですから、契約書にない費用を支払う義務など一切ありません。当然ながら拒否できます。 (2)退去時に、「カギの交換費用は負担してもらいます」と言われたが、契約書には確かにその旨の記載があった。このような場合には、家主の言い分に従わざるを得ないのか? → 契約書の特約事項として、「カギの交換費用負担」が記載されている場合、特約としての有効性があるかどうかがポイントになります。 原状回復義務の一環としての特約の場合、判例では、「特約の必要性があること」、「借主が特約の意味を理解していること」、「契約段階で特約を結ぶことについて承諾していること」などの事情がなければならないとされています。 家主は、家賃という対価を得ている以上、入居者に安全快適な生活を送れるようにする義務があるので、カギ交換も、その義務の一環として考えられます。 そのような点から、「カギの交換費用負担」を見ると、本来、家主が負担すべき費用を借主に負担させることの合理性はないこと(特約の必要性がない)、借主が契約時に、家主や仲介業者から、「本来は家主が支払うべき費用を代わりに支払うのだ」ということの説明を受けていることも滅多になく、当然のことながら、「家主の代わりに支払う」という積極的な承諾ではなく、単に、署名捺印した文書に掲載されているだけの消極的な承諾に過ぎないわけです。 従って、「カギの交換費用負担特約」は、有効性に乏しいということになるのです。 さらに、2001年4月以降に契約した場合には、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定により、「カギの交換費用負担特約」は、よほど特別な事情がない限り、認められなくなりました。 (3)退去時に、借りていたカギのひとつを紛失していたら、カギの交換費用および手数料として5万円を請求された。法外だと思うが、紛失した責任は確かにあるので、管理会社の主張には従うしかないのか? → 借主は、退去時に原状回復義務がありますので、借りていたカギを紛失した場合には、当然のことながら、カギの交換費用を負担しなければなりません。 しかし、「5万円」という金額は、不当な高額です。 原状回復義務によって、カギの交換費用の実費については支払う義務はありますが、逆に言えば、それ以上の費用を支払う必要はありません。 実費以上の費用を請求するのは、民法第703条に規定する「不当利得」に当たります。 そこで、管理会社に対して、「カギ屋さんからの領収書に記載された実費のみ支払う」というように伝えて、実費以上の請求については拒否してください。 また、カギ交換のために、カギ屋さんに連絡するのは、管理会社の当然の通常業務の範囲内のことですから、通常業務を超えた場合に支払うべき手数料が発生するはずもありませんから、カギ交換に関する手数料なども支払い不要です。 原状回復のための承諾書 (1)退去時に、「原状回復のための承諾書」というものにサインを求められ、仕方なくサインしたが、後からよく読んでみると、借主に不利なことがたくさん書いてあったので撤回したいのだが、撤回は可能か? → 「原状回復のための承諾書」、「原状回復費用負担承諾書」、「補修費用負担承諾書」など、さまざまな名称で承諾書が求められる場合があります。 このような承諾書のほとんどは、「本来、借主が負担しなくてもよい費用についても負担させるための特約を記したもの」ですから、内容をよく読んで、「納得できない」と思う場合には、署名捺印すべきではないのです。 ところが、相談内容によれば、すでに、署名捺印を済ませてしまっています。 日本は、契約社会であり、契約自由の原則がありますので、借主が不利な契約であっても、借主が認めた場合には、原則としては認められるのです。 承諾書も一種の契約書ですから、借地借家法上の強行規定に反していたり、公序良俗に反していたりしなければ、一応、承諾内容が有効とされてしまいます。 ただし、消費者契約法により、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定がありますので、当該の承諾書が、消費者契約法に違反する可能性は大きいでしょう。 従って、承諾書そのものの効力が無効であると判断される可能性があります。 しかし、いったん交わした契約そのものは、一方的に撤回することはできません。 承諾書の内容の効力そのものは無効となる可能性がありますが、それは、訴訟に発展した場合に、裁判官が下す判断ですから、そこまで行かない場合には、承諾書を盾にする管理会社側と争わなければならないでしょう。 (2)入居時に、「原状回復のための承諾書」というものにサインを求められ、仕方なくサインしたが、退去時に、借主に不利なことがたくさん書いてあったので撤回しようと思うのだが、撤回は可能か? → 前項で述べたように、承諾書そのものを一方的に撤回することはできません。 しかし、承諾書には、通常の原状回復義務を越えた特約事項が書かれていると思いますので、このような承諾書の有効性が問題となります。 判例によれば、このような承諾書(特約)が有効となるのは、「特約の必要性があること」、「借主が特約の意味を理解していること」、「契約段階で特約を結ぶことについて承諾していること」などの事情がある場合に限られています。 まず、通常の原状回復義務を越えるような特約事項を結ぶための合理的な理由がなければ、「特約の必要性がある」とは言えませんので、例えば、家賃や礼金などの費用が、通常よりもはるかに安いような場合とか、通常の原状回復義務以上の責任がある代わりに、借主に特別に有利な規定が他にあるとかの事情がなければ、特約の必要性があるとはいえません。 その上、借主が入居時、「法律上の考え方からすれば、本当は家主が負担すべき費用だけど、借主に負担してもらうことになっているんです」というような説明を受けているようなケースもほとんどないでしょうし、「特約の意味を理解している」とは言えないでしょう。 結局、「署名捺印した」というだけの消極的な承諾のみ残っているわけです。 従って、入居時に、無理やり提出させられた「承諾書」そのものの有効性は認めがたいということになるのです。 その上、2001円4月以降に交わした契約(承諾書)であれば、消費者契約法により、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という規定に反する可能性が高いので、消費者契約法に違反する可能性があります。 そこで、承諾書の撤回は無理ですが、承諾書の効力については、「認められない」として争うことが可能ですし、争えば、承諾書の効力が否定される判断が行われる可能性が高いでしょう。 原状回復期間 (1)契約が終了し、家主立会いの上、原状回復のための修繕負担については同意した。しかし、家主から、「修繕を行う期間については、他の人に貸し出せないので、家賃の支払いが必要と言われた。」家主に従う必要があるのか? → 家賃の支払いが必要なのは、契約期間中に限られています。契約が終了すれば、当然のことながら、家賃の支払いは不要です。 「修繕を行う期間については、他の人に貸し出せない」のは確かに事実でしょうが、法律上の考え方として、家主としても、内装の修繕を行わなければならないという負担割合がありますので、借主だけが100%修繕義務を負うということはあり得ません。 従って、家主としても、修繕する義務を負っているわけですから、修繕期間中は、第三者に貸し出しできないというのは、前の借主の責任とはいえないのです。 つまり、家主の主張には合理性がありませんので、「家賃を支払え」という家主の主張は認められませんし、敷金からその分を差し引くことも許されないのです。 (2)契約がもうすぐ終了するのだが、家主から、「原状回復をしてから明け渡してもらう必要があるので、契約終了日の1週間前には退去してくれ」と言ってきた。確かに、契約書には、そのような記載があるのだが、契約期間中なのに、家主の言うように退去しなければならないのか? → 「原状回復義務」というものが、いつ発生するのかを考えれば、家主の主張が間違っていることは明らかです。 時系列から言えば、「契約期間終了」→「物件明け渡し義務発生」=「原状回復義務発生」となるのです。 つまり、原状回復義務は、契約期間が終了しなければ、そもそも発生しない義務なのです。 また、借主は、契約期間中、使用収益する権利を持っています(家主から見れば、使用収益させる義務)が、契約期間中に原状回復期間を含めるとすれば、契約期間中にもかかわらず、使用収益することができなくなりますので、使用収益することができない期間については、家賃を支払う義務が免除されます。 いずれの見方からしても、契約期間に、原状回復期間を含めるのは不当だということがお分かりでしょう。 従って、「契約期間に原状回復期間を含める」こと自体が不当ですので、このような契約内容自体、不当な契約内容であり、公序良俗に反する規定(使用できないのに家賃を支払うことになるため)であり、無効といえるでしょう。 2001年4月以降に契約した場合には、消費者契約法によって、「消費者の利益を一方的に害する条項」としても無効となります。 そこで、契約期間中は退去する義務がありませんし、家主の主張に従って退去したとしても、その期間中の家賃は支払う必要はありません。 敷金返還 (1)もうすぐ退去予定だが、友人に聞くと、「敷金をなかなか返さないケースが多い」というので、家主に対し、「敷金の返還と明け渡しを同時に行いたい」、すなわち、法律用語で言うところの「同時履行の抗弁権」を主張したが、家主は認めなかった。こちらの主張に無理はあるか? → 建物の売買契約などでは、販売代金の支払いと不動産の所有権の移転登記を同時に行うという同時履行がふつうですが、賃貸借契約での敷金返還請求権に、同時履行の抗弁権が認められるかどうかがポイントになります。 敷金は、もともと借主の原状回復義務(債務)が済むまで預かっておくためのお金ですから、敷金返還の請求は、原状回復義務を果たしてからということになります。 そして、原状回復を行うためには、まず、建物を明け渡ししなければならないわけですから、建物の明け渡しと、敷金の返還請求を同時に行いたいという主張は認められないのです。 (2)退去してから、3ヶ月以上たつのに、敷金の返還がされなかった。家主に連絡すると、「もう少し待ってくれ」というが、理由がはっきりしなかった。このような場合、どのような対策が可能か? → 通常、退去後、借主が未払いになっている費用(後払いになっている費用など)の精算や原状回復の精算のために1ヶ月程度かかるのは仕方ありません。 しかし、「3ヶ月以上経つ」というのは、ちょっと遅すぎます。 はっきり言って、家主の業務を怠っていると思いますし、場合によれば、家主自身の経営状態が非常に悪く、新たな入居者の敷金を受け取ってから、ようやく敷金の返還を行うというような自転車操業を行っている可能性があります。 いずれにしても、家主が「もう少し待ってくれ」という理由がはっきりしないということは、自転車操業の可能性が大ですので、家主が自己破産などしてしまうと、敷金の返還を受けることも難しくなってしまいます。 そこで、家主に対して、内容証明(配達証明)の郵便を送付して、1週間以内など期限を決めて、すぐに返還するように請求し、それに応じない場合には、少額訴訟を起こしたほうがよいでしょう。 一方で、管理会社がある場合には、管理会社にも連絡し、管理会社から、家主に申し入れてもらったり、敷金返還の立替ができないかどうかをお願いしてみたりしてはどうでしょうか? (3)退去してから、なかなか敷金が返還されなかったので、家主に連絡すると、「実際には修繕費用などで敷金を上回ったが、追加徴収はかわいそうなのでまけてやった」というばかりだ。特別、汚していたはずもないので、おかしいと思うのだが、泣き寝入りするしかないのか? → 家主の主張に信憑性が感じられません。泣き寝入りする必要は一切ありません。 借主として、修繕費用が不当だと思うのであれば、家主に対して、「修繕費用と言っても、借主が負担すべき部分は借主の故意・過失・善良なる管理者の注意義務違反のみであり、しかも、その全額を負担するのではなく、最小施工単位のみであり、そして、家主の負担割合との按分負担とすべきである。 再検討のうえ、きちんとした敷金精算書をすぐに送付してほしい。」などと連絡してください。 家主が驚いて、きちんとした精算書を送ってくればよいですが、送られてきた精算書がやはり不当なものであれば、家主に対して、「このような精算書は不当であり、こちらの主張としては、○○万円の返還を求める。それが認めなければ訴訟も辞さない」と言い、家主の出方を見ます。 それでも、家主がきちんとした精算を行わない場合には、少額訴訟を提起することになるでしょう。 (4)退去後、敷金の返還を待っていると、管理会社から、「修繕箇所が多く、敷金を10万円以上上回る費用がかかったので、追加徴収することとなった」と言ってきた。確かに汚した箇所があるのだが、それだけ費用がかかるとは思わなかったのだが、管理会社に従うしかないのか? → 前項で述べたように、相手が管理会社であっても、家主の代理人にすぎませんから、基本的には同じような対応が必要です。 一方、家主が、自分が面倒になることを嫌い、管理会社に業務を丸投げしている場合が少なくありません。 そこで、家主に対して、「管理会社がまともな敷金返還を行わないので、このままでは、訴訟を行わざるを得ないが、そうなれば、被告人として家主自身が法廷に立つことになりますよ」と言い、家主自身が判断し、きちんとした敷金精算を行うように働きかけなければならないでしょう。 (5)退去後、敷金の返還を待っていると、管理会社から、「修繕箇所が多く、敷金を10万円以上上回る費用がかかったので、追加徴収することとなった」と言ってきた。確かにペットを飼っていたので汚した箇所があるのだが、それだけ費用がかかるとは思わなかったのだが、管理会社に従うしかないのか? → 問題は、ペットを飼っていたということです。 どのようなペットを何匹飼っていたのかはわかりませんが、ペットの種類や数、そしてペットの飼育年数を考慮すると、修繕費用が莫大にならざるを得ない場合があります。 そこで、これら、つまり、具体的なペットの種類、数、飼育年数と、ペットの飼育が可能であったのかどうかなどの事情を総合的にみなければ、管理会社からの請求が不当かどうかは即断できないのです。 いずれにしても、ペットの飼育を行う場合、これは、借主の「故意」となりますので、「借主の故意による汚損・破損は自然損耗とは言えず、修繕義務を負う」ということになります。 相談内容の範囲内からの回答とすれば、不当だとも正当だとも言いがたいため、もっと、全体の状況説明をしてもらわないと正確な回答ができないということになります。 (6)退去後、敷金の返還を待っていると、管理会社から、「修繕箇所が多く、敷金を10万円以上上回る費用がかかったので、追加徴収することとなった」と言ってきた。確かに工事業者の明細や領収書のコピーも同封されてきたのだが、このような場合には、管理会社に従うしかないのか? → 「明細があるから支払う義務がある」と、短絡的に考える必要はありません。 まず、借主に責任があったかどうかが問題なのです。 借主に責任がなければ、いくら明細がはっきりしていても、当然のことながら、支払い義務がないからです。 そこで、借主の故意・過失・善良なる管理者の注意義務(自分のもの以上に大切に扱う義務で、通常考えられる程度のレベルの注意義務)違反などがなかったかどうかを考えてください。 そういう問題がなく、汚損や破損があったとしても、自然損耗(通常損耗とも言いますが、通常の生活で発生した汚れや多少の傷)や経年劣化(年月の経過によって自然に発生した汚れなど、畳表の変色など)によるものは、借主に責任がないのです。 さらに、借主に責任があった場合も、「最小施工単位」と言って、修繕する部分を含む最小の工事単位部分のみを負担すべきであって、例えば、「色違いになってしまうので壁のクロスの全面張替えが必要だ」と言われても、借主の責任は、修繕すべき部分を含む壁だけなのです。 その上、家主自身が修繕する周期による按分負担が正当となるのです。(詳しくは、原状回復に関する相談内容をご覧ください) そのような視点から、送られてきた明細書の内容を点検してください。 点検方法は、修繕すべき場所が適正かどうか?修繕負担割合が適正かどうか?(家主負担がどれくらいあるのか?)、修繕単価が適正か?(高すぎないか?)、修繕面積が妥当な面積か?(広すぎないか?)などです。 工事費用の点検のためには、修繕費用の単価など、インターネット上でも、さまざまな情報が掲載されていますので、参考にしてください。 点検結果として、精算書の内容が不当だと思われる場合には、管理会社にその旨連絡し、正当な精算を行うように申し入れ、それが受け入れられない場合には、内容証明(配達証明)で、敷金返還を求め、それでも、返還されない場合には、少額訴訟を行うことになるでしょう。 (7)賃貸アパートの契約書に,「敷金は退室時返金しません」とあるのですが,これは違法ではないのですか? → 民法の第316条第1項によれば、「賃貸人カ敷金ヲ受取リタル場合ニ於テハ其敷金ヲ以テ弁済ヲ受ケサル債権ノ部分ニ付テノミ先取特権ヲ有ス」となっており、敷金は、借主が支払わなかった費用に対してのみ、差し引くことが可能ですので、どんな場合にも敷金を返さないというのは、違法であり無効です。 また、消費者契約法の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」にも該当しますので、この点からも、この規定は、無効です。 敷引き・解約引き (1)敷引きで一定金額を差し引かれているのに、さらに実費請求として、クリーニング代や修繕費用を請求してきた。拒否したいのだが、どのように交渉すればよいか? → 通常、「敷引き」によって、一定金額を差し引かれる場合には、「実費精算しない」というのが前提になっているはずです。 「敷引き」というのは、契約時に固定費用を支払うという約束を行う代わりに、よほどのことがない限り、退去時には、ハウスクリーニング代や修繕費についての請求は行わないための制度であり、原状回復のトラブルを防止するためのひとつの方策としても、有効なものだからです。 「敷引き」した上に、さらに実費精算を行うというのは、原状回復費用を二重払いさせるものとなってしまいます。 そこで、家主に対しては、「敷引きの上に、さらに実費請求するのは、原状回復費用の二重払いになるため拒否する」と通告したほうがよいでしょう。 それでも、家主が、敷金返還額から、実費請求と称して、差し引いてきた場合には、不当な請求として、返還請求を求めることが必要になるでしょう。 そのためには、まず、電話で、家主に返還を求め、それが受け入れられない場合には、期限を明記した内容証明(配達証明)を送付し、それでも、家主が返還に応じない場合には、少額訴訟を提起することも検討しなければならないでしょう。 |