トラブルを「解決する」ということ‥

 賃貸住宅では、さまざまなトラブルが発生しています。
 トラブルが発生すれば、どのような方法をとるにせよ、当事者はトラブルの「処理」あるいは「解決」をしなければなりません。

 トラブルの「処理」と「解決」は同じではありません。
 例えば、騒音問題などで、入居者が家主や加害者に何度も苦情を申し入れたのに、いっこうに直らなかった時、家主や加害者にとっては、トラブルは「処理済」と考えるでしょうが、被害者である借主にとっては、「未解決」なのです。
 要するに、当事者の一方だけが問題にしなくなるだけでは、トラブルの「解決」とはいえないのです。双方ともに、問題にしなくなることで、ようやく、「解決した」ということができるのです。
 
 このQ&A集は、トラブル「処理」のマニュアルではありません。トラブルの「解決」のためのヒントを差し上げることを目的にしたものです。

 「解決」にもいろいろなものがあるのです‥

 では、「解決」、つまり、当事者の誰もがもはや問題にしなければ、それですべてオーケーなのかということを考えてみましょう。
 「誰もが問題にしなくなる」ケースとしては、次のようなものがあります。
 1 裁判など、白黒をはっきりさせて決着をつける
 2 調停・和解・仲裁など、裁判外でお互いの妥協を図る
 3 当事者同士の交渉で、お互いの歩み寄りを行う
 4 被害者が問題にするのをやめて泣き寝入りをしてしまう

 トラブルを弁護士さんに相談すると、「勝訴できるのでぜひ訴訟を」と勧める人もいるようですが、「裁判に勝つには勝ったが、実際問題として、資産のない人から債権を回収できることもできず、弁護士費用の分だけ損をした」というようなケースもありますので、あまりおすすめしません。それは、いずれの当事者にとっても、手間と時間と費用がかかるものだからです。

 そして、私は、「調停」などよりも、「お互いの歩み寄り」をおすすめしています。「調停」などは、裁判外の制度としては、優れた制度だと思いますが、どうしても、「足して2で割る」という側面が否めないからです。

 それよりも、お互いが、納得しあって話し合いで解決するほうがより望ましいと思うのです。「納得しあって」というところに、下線を引いているところがポイントです。
 つまり、「単なる話し合い」では、どうしても、立場の弱い側(多くの場合、借主ですが、家主の場合もあります)が不利になり、納得できないのに、妥協させられてしまうケースが多くなるからです。

 そこで、「どのようにすれば、お互いが納得できるのか?」ということが次のポイントになります。

 私は、もっとも基本的なベースとしては、社会的合理性・客観性(社会生活上の合理性があるかどうか)をもとにしながら、法律上の規定と判例の傾向(法律上はどのように規定されているのか?そして、実際の判例ではどのような解釈が行われてきているのか?いくつか判例がある場合には多数派の判例を参考にする)に沿ったアドバイスを心がけたいと考えています。

誰もが暮らしやすい社会にするために

 Q&Aは、もともと、実際の相談事例を元にしているケースが多いのですが、個々の周辺事情まで掲載することはできないため、同じような質問に対するアドバイスでも、結論が若干異なっているケースもありますので、似たような事例をいくつか見ていただくほうがよりわかりやすいと思います。
 そして、相談事例では、当事者の相手側が、まともな話し合いに応じないような場合には、やむを得ず、訴訟も含めて検討することをアドバイスしていることもありますが、それは、私としては、「泣き寝入りだけは絶対にしてほしくない」と考えているからです。被害者が泣き寝入りをするような世の中が暮らしやすいわけがないからです。

 なお、ここに掲載している内容によって行動されることにより、何らかの不都合や損害が生じる場合であっても、一切の責任は負えませんので、あくまで参考資料として、ご利用いただくようにお願い申し上げます。

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                        朝永 彰(ともながあきら)