| 特別な条件を持つ場合の住まい探し ――最低限チェックしておきたいポイント 1. 「2人入居」は次の点に注意 兄弟や友人・知人などと一緒に、2部屋続きの広めの部屋を借りるような場合には、次の点を頭に入れて物件の紹介を受け、契約を進めることが必要です。 まず、一つ目は、家賃、共益費、礼金、敷金等の費用がどうなるのかを確認しておくということです。 ふつう、物件資料に書かれている家賃等の費用は、1人で契約する場合の条件です。 2人で共同で借りる場合には、家賃や共益費、礼金、敷金等の費用が変動するのかしないのかをしっかり確認しておく必要があります。 常識的に考えれば、共同で利用する部分を入居者全員で按分負担するという共益費(管理費)については、多少割高になってもやむを得ないでしょう。しかし、それ以外の費用は、変動する具体的な根拠には乏しいのです。 根拠なく、家主が費用負担の増を求めてきたら、その具体的な根拠をただしましょう。具体的な根拠を求めただけで、費用負担の増を引っ込めるかもしれないからです。無駄な出費増にならないように、言うべきときはしっかり言いましょう。 二つ目は、家主との契約書は、可能なら、各自の名前で同一のものを2通ずつ作成するほうがよいということです。 通常、賃貸借契約は、借主・貸主ともに1人が原則です。 しかし、実際問題として、一人の名前で契約書を作成していて、その人が先に何らかの事情で部屋を退室すると、もう1人の人は、「退室した人の単なる同居人」となってしまい、借主としての立場が非常に不安定になるのです。 従って、2人で同居するという場合も、あとあとのことを考えて、家主が同意してくれるのなら、同じ内容のものを2通ずつ作成しておき、どちらかが退去した後も、もう1人の立場が不安定にならないようにしておいたほうがよいでしょう。 もし、1人だけの契約書を作成してしまったら、1人が退去するときに、もう1人が契約書を作ることもできますが、がめつい家主なら、「あなたとははじめて契約するのだから礼金をよこせ」などとごねるかもしれません。 そこで、三つ目に、1人入居になった場合の条件変更の有無と内容を確認しておくということです。 2人での入居から、1人入居に変更になったときに、何か条件変更があるのか、あるとすれば、何がどのように変更になるのかを、きちんと確認し、当然のことながら、契約書の特約事項として明記しておいてもらうことです。そうしないと、一人が出たとき、「今月から2人分の費用を支払ってもらう」などと言いがかりをつけられるかもしれないからです。 これらのことは、強欲な家主の場合だけです。 しかし、住まい探しの時点において、その家主が強欲かどうかなんてわかるはずはないのです。借りるときはニコニコと愛想のよかった家主が、部屋を退去するときは鬼のように変身するというケースもときどきあります。 ついでに言うと、2人で入居していたとしても、固定電話を敷く場合には、電話回線は別にすることが多いでしょう。 また、いつも一緒に同じテレビを見るとは限りません。そこで、電話回線を2本引くことができるかどうか、テレビのアンテナの端子口が別々の部屋にあるかどうかを確認しておいた方がよいでしょう。 2. アレルギーを持つ人の住まい探し アレルギーやアトピー症状がある人、あるいは化学物質過敏症の疑いのある人の住まい探しでは、どのような点に注意をしておけばよいのでしょうか? いくつかのポイントを述べたいと思います。 まず、第一に、「新築はできるだけ避ける」ということです。 俗に、新築病(シックハウス症候群とも言います)という言葉があります。 建材やクロス、クロスを張るための糊、フローリングなどに、ホルムアルデヒドやVOCと呼ばれている有機化学物質が含まれており、それらが室内に溶け出すことで、さまざまな症状が出てくることがあるのです。 最近は、シックハウス症候群に関心を持つ人も増えてきたため、1戸建ての分譲住宅などでは、シックハウス症候群が起こりにくい建材などを使用したものも出てきました。 しかし、そういう建材類は、一般の建材よりも多少割高なため、賃貸住宅では、シックハウス症候群に対応した建材やクロス、フローリングを使用しているケースはまずないでしょう。 なお、平成15年7月1日に改正建築基準法が施行され、ホルムアルデヒドやクロルピリホスなどが規制されたので、「それ以降に建築された建物はシックハウス症候群対策がしてあるので大丈夫」という人もいますが、私はそのように思いません。 確かに、2つの化学物質については厳しい規制がようやく導入されましたが、危険性のある化学物質は2つだけでないのは明らかであり、ほとんどの化学物質については、まだほとんど野放し状態に近いからです。 そこで、自分の症状が悪化しないようにするには、改正建築基準法施行後の現在でも、新築は避けるほうが賢明なのです。 第二は、「クロスの張替直後の物件を避ける」ことです。 理由は明らかでしょう。賃貸住宅では、新たな入居者を迎えるときに、クロスの張替を行っていることがあります。賃貸住宅のクロスは、価格面でも最低ラインで、ホルムアルデヒド以外でも、化学物質が出てくるような代物が多いのです。 そこで、住まい探しのときに、「クロスの張替をした直後の物件はダメ」とはっきりと伝えておくべきです。 また仮に、現在の入居者が出た後でないとクロスの張替をするかどうかもわからない場合、「もしクロスの張替が必要な状態であっても、クロスの張替をせず、張替のための費用は自分が退去したときに充当してほしい」と頼んでみてください。契約書にもできれば明記しておくとよいでしょう。 第三は、「F☆☆☆☆クラスのフローリングを選ぶ」ということです。 フローリングなどの合板建材には、ホルムアルデヒドの溶出基準に従って、もっとも溶出量の少ないF☆☆☆☆クラスから、F☆クラスまであります。 本当は、合板ではなく、ホルムアルデヒドの出ない無垢材(1枚板)のフローリングがもっともよいので、賃貸ではほとんど導入されていないのですが、それでも粘り強く探してみるのも一つの手です。 そして第四に、不幸にして実際に入居してみたら、ホルムアルデヒドや化学物質などの、ツーンとするような匂いがする場合には、「ベイクアウト」を行うということです。 これは、外出のとき、エアコンの温度を最高にしたまま、窓を締め切っておくのです。 そして、部屋に戻ってきたときはすみやかに室内の汚染された空気を外に出すようにするのです。 これを数日繰り返すことにより、通常ならじわじわと溶出してくる有害な化学物質を、温度を上げることで強制的に溶出させ、できるだけ早く溶出量を減らしてしまうという方法です。 あとは、住まい探しに直接関係ありませんが、「家具は合板製品を避ける」とか、「性能のよい空気清浄機を導入する」、「ホルムアルデヒドを吸収する植物を育てる(ただし、場合によればダニを増やすことになることもあるので注意が必要ですが)」、「生活上では化学薬品類をできるだけ使わないこと」などが挙げられます。 アレルギーや化学物質過敏症であるのに、せっけんを使わず、合成洗剤や合成シャンプー、合成ハミガキ、さらには合成の芳香剤や蚊取りマットさえ使用している人もいます。自分の身体をもっと気をつけたほうがよいでしょう。 3.身体に障害を持つ人の住まい探し 身体に障害を持つ人が住まい探しを行う場合、その障害の部位やレベルによって、住まいの条件が異なってくるので、住まい探しのポイントも、人それぞれに異なってくることになります。ここでは、多くの人に共通するポイントを述べ、参考にしていただきたいと思います。 まず、第一のポイントは、「住まい探しのピーク時に探しに行かない」ということです。 大勢の新入生であふれかえるピークの時には、ただでさえ、ゆっくりとした相談もできず、説明もおろそかになりがちです。 身体に障害を持った人の条件に合う物件を探すためには、物件資料を見るだけではどうしようもありません。家主や管理業者などに、個々の条件を確認したり、説得したりといった時間も必要になります。 しかし、ピーク時に、そのような交渉を行う時間的余裕はありません。もし、ピーク時に住まい探しを行えば、「残念ながら紹介できる物件はありません」というような返答をされる可能性が高くなるでしょう。 第二は、「事前に電話等で相談のうえ、物件調査を依頼し、物件資料を検討してから来店する」ということです。 相談するのは、入学する大学・学校の厚生課や学生課、生協、あるいは大学の指定・推薦業者がよいでしょう。 それらで十分な情報が得られなかったら、地元の業者に連絡することになるでしょう。 依頼する内容は、個々の条件に合った物件を探してもらい、できれば、いくつか候補となるような物件資料を送ってくれるようにすることです。 物件資料が送られてくれば、その中から、下見する物件を2〜3つ程度に絞り込んだ上で、絞り込んだ物件名と来店日を連絡し、その日には、家主さんにも立ち会ってもらえるように依頼しておくのです。 こうしておけば、来店当日も、わからない点や疑問点を聞いたり、家主にお願いしたいことを直接確認することができるでしょう。また、依頼にきちんと応じてくれるかどうかで、どこで住まい探しをすればよいかがわかるでしょう。 第三は、「家主が安心できるように、支援体制をつくっておく」ということです。 家主は、その管理責任上、事故やトラブルの発生する可能性が高い人の入居を避けようとします。 送ってもらった物件資料を見て、物件自体がバリアフリーな構造になっており、「ぜひとも入居したい」と考えていても、その物件に入居できるかどうかは、家主の許可が得られるかどうかにかかっています。 空いていれば必ず入居できるというわけではないからです。 そこで、事前に、大学や学校に、ボランティアスタッフとなってもらえるような学生を探してもらい、できれば、そうした学生と一緒に住まい探しをするのです。 そうした学生が見つからなければ、大学や学校の教職員などの中で、身元保証人として世話役となってもらえるような人を配置してもらい、身元保証書を発行してもらうようにするのです。そうしておけば、家主は、安心して契約することができるでしょう。 第四は、「緊急時の対応が可能な物件かどうかを見極めておく」ことです。 何らかの異常事態が発生したときに、それに対応できるような体制や仕組みが整っているかどうかを確認しておく必要があるでしょう。 まず、最低限、入居者以外立ち入り禁止の物件でないことが上げられます。 「入居者以外立ち入り禁止」の物件では、入居者の友人たちが支援のために立ち入ろうとすることさえままならないからです。 次は、日常的に管理人が常駐している物件のほうが安心できます。 その上で、いわゆる24時間管理の物件か、室内の設備として、「緊急時のコールボタン」がある物件(実際には非常に少ないのですが……)か、それとも、家主や管理人が近所に住んでいる物件のほうが安心です。 いざというときに、すぐに駆けつけてくれる、頼りになる人がいるかどうかは重要なポイントです。 もっとも、家主や管理人がそういう対応をしてくれるかどうかは、入居前に必ず確認しておかねばなりません。 家主の中には、入居者とのかかわりを嫌い、隣に住んでいても対応せず、管理業者に、面倒なことを一括依頼をしていることもあるからです。 第五は、「簡単な改造を認めてくれるかどうかを確認しておく」ことです。 学生が住む物件に、バリアフリーの仕様となっているような物件はまずありません。 身体に障害を持つ人が、それほど不自由なく生活しようと思えば、ある程度の部屋の改造が必要になる場合も少なくないでしょう。 全面的な改造であれば、家主として認めてくれる可能性は低くなるでしょうが、最小限度の改造であれば、認めてくれる場合も多いでしょう。 そこで、現地を下見したときに、どこをどの程度改造したいかを伝え、家主が許可してくれるかどうかを確認した方がよいでしょう。 ただし、この際、そうした改造が、特定の人だけにメリットのある改造になるよりも、すべての人にとっても使いやすくなるような改造(誰もが使いやすくなるものを「ユニバーサルデザイン」と呼んでいます)になるように考慮することで、家主に対しては、「設備のグレードアップになるので、退去したときにはそのままで出て行くことを了解してほしい」ということをお願いしてみましょう。 本人や家族が言いにくければ、不動産業者や付き添いの人に言ってもらうようにしましょう。 なぜなら、通常、部屋の改造を認められた場合であっても、退去時には、元の状態に戻す義務(=原状回復義務)が課せられるからです。 その点をすべての人にとってのグレードアップであることを認めてもらい、原状回復義務からはずしておいてもらえるようにするのです。 そして第六に、契約書には、「改造に伴う原状回復義務の免除」項目など、家主に特別に依頼して了解を得た事項については、きちんと文書化して残しておき、退去時にトラブルとならないように備えておくことです。 いずれにしても、通常の住まい探しに比較して、時間をかけて念入りに、そして、学生生活をずっとそこで送ることを念頭において、住まい探しを行うほうがよいでしょう。 |