「住むところ=建物」の基礎知識を得よう

――「建物」を知らないと、欠陥のある建物が見抜けない!

1.主な工法

 自分はどんなところに住みたいのか?住むところについての基礎的な知識がなければ、単なるイメージで考えていたものと実際の生活との落差が大きく、結果として不満が残る住まい探しになってしまうかもしれません。

 そこで、住むところ=建物に関する基礎的な知識を学習しましょう。

 まず、建物の工法、つまり建て方に関するものです。ごく大雑把に区別すると、賃貸住宅には、次の5種類に分けられるでしょう。

 一つ目は、学生マンションなどに多い、「鉄筋コンクリート造」です。

 Reinforced concrete略して「RC造」と呼んでいます。鉄筋コンクリートで主要構造部(土台・柱・梁・壁など)を作っていくものです。

 マンションなどでは、2部屋で一つの構造とする場合が多く、構造となる壁を耐力壁(構造壁)と呼び、2部屋の間にある壁を間仕切壁と呼んでいます(右図) 耐力壁は鉄筋コンクリートで固められていますが、もう一方の間仕切壁は単なる仕切るための壁で、電気などの配線が通っていますので、どうしても音が伝わりやすくなっています。

 RC造の場合には、一般的な建て方では、コンクリートの柱の部分の出っ張りがあり、その部分は使えないスペースです。

 コンクリートの部分は柱だけでなく、コンクリートの梁が室内に出っ張っていることもあります。コンクリートの梁があると、その部分は天井よりも40〜50センチほど低くなっているので、背の高い家具が置けないことがあります。

 二つ目は、中層のマンションなどに多い、「鉄骨鉄筋コンクリート造」です。

 Steel reinforced concreteを略して、「SRC造」と呼んでいます。これは、重量鉄骨で柱と梁を溶接して緊結(ラーメン構造といいます)し、壁を鉄筋コンクリートで作る工法です。

 三つ目は、「鉄骨造」です。

 Steel structureを略して、「SS造」と呼んでいます。これは、鉄骨(主に軽量鉄骨=厚さ4ミリ以下の薄い鉄骨)とブレース(筋かい)で構造を作るのですが、壁はカーテンウォールなどと言って、ぶら下がっているだけの薄い間仕切壁で作ることが多いので、音はRC造などよりも伝わりやすいことが多いと言われています。

 アパートなどによく使用されているALC造というものも、軽量鉄骨造の一つで、軽量の発泡コンクリートの壁が使われています。

 四つ目は、「木造2×4(ツーバイフォー)造」です。

 これは、北米から輸入された建築工法で、2インチ×4インチの材木を組み合わせ、その上に、構造用合板と呼ぶ合板を張って壁を作って構造を組み立てます。枠組壁工法とも呼ばれているもので、壁という面で建物を支えます。次に述べる日本伝統の在来木造に比べると、難しい技術が不要で、設計面でも自由度が高いのですが、壁で支えるために窓を大きくとることができません。

 五つ目は、「在来木造」です。

 Woodを略して「W造」と呼ぶときもあります。これは、昔からの大工さんの建て方で、木造建築の主流です。木材で柱や梁を作りますが、壁は間仕切壁やふすま・障子などの可動式の間仕切りで仕切っていることが多く、窓が大きくとれるので明るいのが特長です。

 夏には開け放しにすることで、蒸し暑い夏の気候に適した日本の伝統的な工法です。しかし、遮音性はほとんど考慮されてこなかったため、プライバシーの確保という点では問題となることもあります。

2.居住・学習環境としての住居

 学生の住まいの場合、単に居住することだけを考えて選ぶのではなく、学習環境としても考慮しておく必要があります。

 日本では、経済的な採算性についてはさまざまな角度で検討されるのですが、残念ながら、「居住・学習環境としての住まいの最適性」ということについては、内外の優れた研究者がたくさんいるにもかかわらず、その研究が実際の建築場面ではほとんど生かされていません。

 建築家の多くも不勉強と言わざるを得ませんし、ゼネコンも、厳しい受注競争の中で、「安く請け負った建築費用の中でいかにして利益を捻出するか?」ということに目を向けるだけです。悪く言えば、いかにして、ばれないように手抜きするかということに「力」を注ぐのです。

 そこで、ここでは、「居住・学習環境としての住まいの最適性」について、ごく簡単に研究の成果の一端をご紹介したいと思います。

 一つ目は、工法に関するマウスを使った2つの実験結果です。

 これは、私の別の著作『エコロジカル・リゾート』(学陽書房)で紹介している事例です。

 マウスを木材、コンクリート、アルミニウムの飼育箱で生活させ、妊娠、出産、哺育させ、子の成長を観察した名古屋大学で行われた実験によれば、コンクリートやアルミニウムの飼育箱では哺育が遅かったり、異常行動(親が子を食べる)などが発生したりしたのに対し、木の飼育箱で木のチップの場合にはそういうことがまったくなかったというものです。

 もう一つの実験は、静岡大学の例ですが、同じコンクリート製の飼育箱で、床だけを変えて実験したところ、杉合板、コンクリート、アルミニウムの順に好んだというのです。

 また、コンクリートの壁は遮音性が優れているものの、高周波の音をカットすることにより、生理的不快、精神不安をきたすという研究もある(『住環境とヒト』佐藤方彦・関邦博編著、井上書院、P41)のです。

 私自身、最近、精神疾患で入院したり、通院したりする学生が意外に多いという調査データを見たことがあるのですが、ひょっとしたら、このあたりも少しは影響しているのかもしれません。少し精神的な不安がある人の場合には、鉄筋コンクリート造の建物は避けたほうが無難かもしれません。

 建物の高さに関してですが、もともと人類は地上で暮らしてきたわけですので、地上から離れて暮らす生活には慣れていないと言えます。

 高層マンションの低層階、中層階、高層階のそれぞれに住んでいる子供の体力と学力を調査したある実験データによれば、低層階と中層階に比べて、高層階に住んでいる子供の体力と学力はかなり低かったと言われています。

 また、地磁気との関係で、地上から離れて暮らすことの問題を指摘する研究者もいます。いずれにしても、高すぎるところに住むのは、避けたほうがよいでしょう。

 部屋の広さについて言えば、一人あたりの利用できるスペースが、10〜14平方メートル(江戸間サイズの畳で6〜8.6帖程度、団地サイズで言えば7.8〜10.9帖)の範囲内にある場合に比べて、8〜10平方メートル(江戸間で4.9〜6帖、団地サイズで6.3〜7.7帖)しかない場合は、病気や犯罪の発生率が倍増するというフランスでの報告もあります。(『住環境と』佐藤方彦・関邦博編著、井上書院、P36)なお、広すぎる場合も多少結果が悪くなるようです。

 日本風に言って6帖程度に満たない広さしかない部屋は、居室としては認められないという国もあります。(『安心思想の住まい学』早川和男著、三五館、P187)つまり、それは物置スペースでしかなく、人間が住む空間ではないというのです。

 日当たりについても一定の考慮が必要です。それは、紫外線が、若者に不足しがちなカルシウムの摂取に欠かせないビタミンDを活性化させる働きがあるためです。

 さらに、部屋からの眺望についても、精神的な健康を保つ上で重要だという研究もあります。 

3.建物の種類

 学生の住まいの種類には、どのようなものがあるでしょうか?

 まず、現在、もっとも人気の高いのが「マンション」です。

 賃貸マンションについては、法律上の定義はありません。(分譲マンションについては、マンション管理法で定義づけられています)

 家主や不動産業者が独自に定義しているのが現状です。従って、ふつうの基準や考え方ではアパートとみなされる場合でも、「自称マンション」というようなものがたくさんあります。

 ここでは、その一般的な定義として、「耐火構造であり、(鉄骨)鉄筋コンクリート造または鉄骨造で、浴室・トイレ・キッチンが個人専用で備えつけられている建物」としておきましょう。

 設備面では、他のタイプのものに比べると、さまざまな設備が整っており、防音性能も比較的よくなっています。しかしその分、家賃などの費用が高くなります。

 なお、英語のマンションは「大邸宅」を表しています。海外からの留学生が、日本人の友人が「マンション」に住んでいると聞き、「日本人はやはり大金持ちだ」と思って訪ねたところ、実際には、単なる「アパートメントハウス」だと知り、「こんなところをマンションと呼ぶとは、日本人の住宅はやはりウサギ小屋だったのか?」と言ったというような笑い話もありますので、外国人に説明する場合には注意が必要です。

 次は、「ハイツ」と呼ばれるタイプです。

 一般的には、「準耐火構造で、軽量鉄骨造や木造であり、2階建てが多く、浴室・トイレ・キッチンが個人専用となっている建物」です。ハウスメーカーなどが建てている場合が多く、次に述べるアパートに比べると、しゃれた外観を持っていることが多いようです。家賃等は、マンションよりも若干安めとなっています。

 これに似たものとして「アパート」と呼ばれるタイプがあります。

 ハイツと似ていますが、一般的には「準耐火構造で、木造2階建てが多く、浴室・トイレ・キッチンなどの一つ以上が個人専用でない建物」です。

 ふつうは、浴室が共同であったり、なかったりすることが多いようです。防音性能はマンションやハイツよりも若干劣る場合が多いようです。

 家賃等の条件は、千差万別と言っても過言ではないでしょう。アパートタイプであっても、マンションと変わらない家賃をつけていることもあれば、後で述べる間借タイプと同じくらい安いものもあります。

 一般的に言えば、同じアパートの中でも、キッチンとトイレが専用で浴室が共同の物件の家賃が最も高く、ついで、キッチンは専用でトイレと浴室が共同のタイプ、そして、キッチン・トイレ・浴室とも共同のタイプ、キッチン・トイレが共同で浴室はないもののコインシャワーなどがあるタイプ、最後にキッチン・トイレが共同でシャワー設備もないものの順に家賃が下がってきます。つまり、アパートと呼ばれるタイプには、その設備状況にはいろいろなものがあるということです。

 その次は、「学生会館」や「パンション」などと呼ばれているもので、東京(学生会館)や仙台(パンション)など一部の地域にのみ存在しています。

 これは、いわゆる「賄い(まかない)付」下宿というものですが、その多くは、個室にベッドや机・いすなどの家具類などがセットされており、浴室やトイレが共同となっています。管理人も常駐していることが多く、一人暮らしは不安であるという人にはよいかも知れません。

 そして、「学生寮」というものもあります。

 これは、学生の共同生活のための寮で、ふつう賄い付です。大学や学校自体が提供し、運営も学校が自ら行っているところから、運営自体は学生の自主管理としているところ、キリスト教系の民間団体などが経営しているところ、個人が経営しているところなど、さまざまな学生寮があります。

 以前は二人1室や四人1室など、1部屋に複数の人が入居するというパターンが多かったのですが、最近は、プライバシーの問題で寮生活を希望しない人が増えているため、結果的に「一人1室」になっているところや、女子大などの場合には、学生マンションも顔負けのデラックスな女子専用寮などを完備して、学生の人気を集めているところもあります。

 福利厚生の一環として、大学などが寮を提供しているところでは、月額数千円という安い寮費しか徴収しないというところもあります。

 以前は、学生寮というと、「学生運動のアジト」的な見られ方がされていたこともありますが、現在では、一部に活動家が存在してはいるものの、ほとんどの人はまったく関与していないという場合が多いようです。もちろん、寮ごとの個性はあるようで、個別の寮の評価は人によって分かれるでしょう。

 最後は、「貸間・貸家」です。

 貸間は、文字通り、大家さんが住んでいる住宅の一部屋を提供してもらって生活するものです。貸家は、家を丸ごと貸し出す場合と、何人かで1軒の家で共同生活を行うというものです。

 ふつう、子供たちが親元から独立していった後の空き部屋を利用することが多いので、大家さんはお年寄りであることが多いのです。家賃などの条件は、アパートよりも安めですが、世間相場を知らない大家さんの中には、びっくりするくらい高い家賃をつけていることもあります。一方で、大家さん自身が一人暮らしの不安から同居人を求めているような場合は、家賃が非常に安い場合もあります。

 需要と供給の関係で言えば、全国的に、学生のマンション志向が強くなっているので、マンションに比べると、アパートや貸間・貸家は供給がだぶついてきています。

 従って、マンションの場合には、条件のよい物件は早い者勝ちの取り合いになるものの、アパートや貸間・貸家では、少していねいに探せば、比較的条件のよい物件が見つかる場合もあります。

4.間取

 間取というのは、いわば、部屋のタイプを表すもので、学生の住まいの場合には、「ワンルーム」、「1K」、「1DK」、そして「居室のみ」に区別できるでしょう。「ワンルーム」から「1DK」までは、マンションやアパートにあるもので、「居室のみ」というのは貸間のことです。

 「ワンルーム」というのは、キッチンが居室から完全には独立しておらず(居室とキッチンとの間にドアがあるかないかとは直接関係がありません)、通路に設置されている物件です。「キッチンが3帖」というような場合が相当します。

 それに対して、「1K(1キッチン)」の場合には、キッチン部分が4〜5帖程度の広さがあり、キッチンが居室から完全に独立しているという物件です。現在、ワンルームよりも人気が高くなってきていますが、当然のことながら、ワンルームよりも家賃が高めです。

 さらに、「1DK(1ダイニングキッチン)」というのは、キッチンがダイニング(食事場所)も兼ねているということで、キッチンは6帖程度(食卓を置くことができる)以上の広さとなっているという意味で使われています。部屋全体の広さとしても、30u近くなります。学生の住まいとしては、マンションよりもアパートに多いタイプです。

 「居室のみ」は、その名の通り、キッチンがついておらず、居室だけの物件のことです。

5.間取図と平面図

 住まい探しをする場合によく出てくる図面が、「間取図」と「平面図」です。

 間取図は、不動産業者のパンフレットによく載っている図面で、物件の標準的な間取が書かれているものです。

 賃貸物件を掲載したパンフレットの中の「間取図」と、売買物件を掲載した不動産広告の中の「間取図」とでは、その意味が根本的に違います

 というのは、前者はあくまで標準的な間取図であるのに対して、後者は売買の対象となっている特定の部屋の間取図であるということです。

 新聞の折り込みチラシなどに入っている不動産広告を見慣れていると、賃貸物件を掲載したパンフレットなどの間取図も同じように考えてしまう可能性があります。

 しかし、賃貸物件を掲載したパンフレットなどに掲載されている図面は、その物件の中の標準的な間取を表しているだけで、すべての部屋が同じではないのです。

 特に注意が必要なのは、図面にバルコニーなどが掲載されていても、1階部分にはバルコニーなどがない場合が結構あることや、部屋の広さが異なる場合もあるということです。

 そこで、標準的な間取図以外も含めて、フロアー(階)ごとにすべての部屋の間取図がつながり建物全体の様子がわかるようになっているのが「(物件)平面図」です。

 ただし、平面図はパンフレットには掲載されていませんので、業者で詳しい資料を見せてもらったときに必ず見せてもらうようにしましょう。

 平面図を見れば、部屋番号などが入っているので、どの部屋がどのような間取なのかがわかります。

 平面図を見る場合には、まず、平面図の方角関係を確認します。

 そうすると、各部屋の窓がどちらの方角を向いているのかがわかります。

 次に、部屋ごとの位置関係をチェックします。チェック内容は、各部屋とエレベーターや階段との位置関係(近いと音がうるさい場合があるからです)、各部屋の間取と広さなどです。

 自分が住むかどうかを検討している部屋がはっきりしている場合には、隣接する部屋の間取にもチェックします。

 チェックする内容は、騒音が出やすい水回り部分(キッチン・浴室・トイレ・洗面所)がどういう位置にあるかということです。

 もし、万一、居室の横に隣接する部屋の水回りがあると、ベッドで寝ているときなどに、隣室の水回りから聞こえてくる排水音に悩まされるということも考えられるからです。

 さらに、同時に住宅地図も見せてもらうことで、隣接している敷地や建物との距離などが部屋ごとにわかります。隣接地に接近している部屋は日当たりの悪いことが予想されます。

6.防音問題=騒音問題について

 学生の住まいで、よくトラブルになるのが「防音問題」=「騒音問題」です。そこで、防音問題と建物の関係についての基礎知識を得ておきましょう。

 建物の防音は、いろいろな要素が集まることにより、一つ一つの建物・部屋の防音(遮音)性能が決まります。

 その要素とは、大雑把に言えば、設計思想、建物の工法、壁・床の厚さ、壁・床の構造、床材・壁厚の遮音性能、防振・防音施工の有無、窓ガラス・サッシの種類などです。

 また、音には、空気を通じて伝わる空気伝播音と振動によって伝わる振動音があります

 空気伝播音は壁などを通じて伝わりやすく、コンクリート壁(耐力壁)の厚さによって遮音性能が決まってきます。

 最低限15センチ程度の厚さはほしいところですが、この場合、遮音等級(=遮音性能を表す指標)は「D40」で、隣の声が小さく聞こえるというような遮音性能です。

 壁厚が18センチ程度になると「D45」となり、隣の声がかすかに聞こえる性能となり、壁厚が20センチになれば、「D50」で、ほとんど聞こえないようになります。D値は大きいほど性能がよくなります

 振動音は床を通じて伝わりやすく、床材や床厚にも遮音等級が決められています。

 振動音は「L」で表しますが、床厚が15センチ程度で「L60」、同じく18センチで「L55」、20センチで「L50」などとなっています。L値は低ければ低いほど性能がよくなります

 最低限、L55程度はほしいでしょう。フローリング材の中には、L45以上の製品もあるので、できれば、遮音等級のよいところを選びたいところですが、家主や不動産業者に聞いても、まずわからないというのが実態です。

 次に、建物の構造や用途・種類によって、次のような傾向があります。

 まず、「鉄筋コンクリート造は防音性能が高めである」ということです。

 防音性能は、鉄筋コンクリート造(および鉄骨鉄筋コンクリート造)が比較的よく、次に鉄骨造、そして、木造ツーバイフォー造、最後に在来木造となるのが一般的です

 次に、「耐力壁(構造壁)は間仕切壁よりも防音性が高い」ということです。これは、先に述べたように、壁には2種類があり、それによって、防音性がまったく異なるのです。

 三つ目は、「賃貸専用物件は分譲貸物件よりも防音性能は劣る」ということです。分譲貸物件というのは、もともと分譲物件であったものを、賃貸に回している物件のことです。どこがどう違うのでしょうか?

 賃貸専用物件のオーナーは通常一人です。建築主であるオーナーにとって、建築の際の主要な関心事は、「できるだけ安いコストで見栄えのよい(借り手のつきやすい)建物を建設すること」です。

 それに対して、分譲物件の場合には、個々の部屋ごとにオーナーが異なり、建築主である分譲会社は、資産価値を求める買い手がつきやすいように、「見栄えだけでなく構造や設備も含めて、資産価値が維持できるような一定水準以上の建物を建設すること」です。

 従って、一般的傾向として、賃貸物件は分譲物件よりも防音性能は劣るのです。

 四つ目は、「単身者物件はファミリー向け物件よりも防音性能は劣る」ということです。

 これは、最初からの設計上の問題です。もともと、小さな子供が生活することを前提として設計されているファミリー向け物件では、比較的防音性能のよい(遮音等級の高い)床材などを使ったり、天井の構造も音の伝わりやすい「直張り」ではなく、音の伝わりにくい「吊り天井」にしていたりすることが多いのです。

 それに対して、単身者物件の場合は、小さな子供がいるわけではないので、防音性能はファミリー向けよりも劣ってもかまわないという前提で設計されています。当然、コストも違いますので、単身者物件はファミリー向け物件よりも防音性能が劣ることが多いのです。

 ところが、これらの状況を知らないために、「実家の(分譲)・(ファミリー向け)マンションに比べて防音性能が低すぎる。こんなひどい物件を紹介するのは問題だ」などというクレームが持ち込まれることがあります。

 しかし、学生用の賃貸物件に、分譲やファミリー向け並みの防音性能を求めること自体が現実的ではないのです。

 五つ目は、「鉄筋コンクリート造の建物は上階になるほど防音性能は低くなる」ということです。

 鉄筋コンクリートで構造を作り上げる建物では、1階は最上階までのすべての重量を支えなければなりませんが、上の階になればなるほど、構造そのものの重量が軽くなるので、それを支える耐力壁は薄くなってもかまわないということになります。

 そこで、上階に行けばいくほど壁は薄くなり、当然のことながら防音性能が低くなる傾向があるということです。

 入居者のことを考えて、上階も1階と同じ厚さの壁にしようとすれば、今度はその重さに耐えられるだけの厚さが1階の壁に求められることになり、結局、1階の壁を上階よりも厚くせざるを得なくなるのです。従って、音に敏感な人は、できるだけ1階に住んだほうがよいということです。

 このように、防音と建物の関係には、複雑な要因がからんでいるのです。しかし、防音問題=騒音問題は、建物だけの問題ではないのです。というよりも、他の原因のほうが多いとさえいえるのです。

 そこで、「なぜ、防音=騒音問題が起きるのか?」という問題の原因を少し考えてみたいと思います。

 学生の住まいでは、防音問題=騒音問題がよく発生していると言いましたが、建物そのものにまつわる問題以外に、次のような問題があるのです。

 一つは、「生活習慣上の問題」です。

 学生の中には「夜行性」の人が多く、「昼行性」の人でも、掃除や洗濯を朝行うのではなく、夜に行う人も結構たくさんいます。しかし、周りが静かな分、音は昼よりも夜のほうが伝わりやすく、また、敏感になりやすいのです。深夜の入浴やトイレの排水音が問題となることも多いのです。建物そのものにはほとんど問題がなくても、学生の生活習慣上で、騒音トラブルとなることも多いのです。

 二つ目は、「生活の知恵の問題」です。

 防音を高めるための工夫を一切行っていない人が多いのです。

 例えば、家具は耐力壁ではなく、間仕切壁の前に置くことで防音に役立てたり、フローリングの床は静かに歩いたりするというようなことです。

 三つ目は、「社会経験上の問題」です。

 入居したときに、自室の両側や上下階の入居者に挨拶しておいて、「お世話になります。騒音など、何か問題がありましたらすぐに連絡して、お互いに気持ちよく生活しましょう」などと言っておけばよいのですが、まったく挨拶しないで生活続ける人が非常に多いのです。

 隣がどういう人かも知らずに生活していて、あるとき我慢できないほどの騒音が聞こえてきたというので、はじめてお互いに顔を合わせるというのでは、話し合いがスムーズにいかないこともあるでしょう。

 それでも、この段階で話し合えばまだましなのです。一声かければ、お互いに気をつけましょうということでおさまることも多いはずなのですが、実際には、騒音がどんどんエスカレートし、我慢できなくなってはじめて、管理会社や大家さんに、「騒音が我慢できない。何とかしてほしい」というクレームをつけることが多いのです。

 そうすると、クレームをつけられたほうも、「そんなに我慢できないのだったら、もっと前に一声かけてくれたらよかったのに……」などということで、お互いに気まずい思いをしながら、窮屈な生活を送らざるを得ないということにもなるのです。

 このように、防音(騒音)問題は、いろいろな要素がからんで発生しているのです。建物に固有の問題については我慢するしかないことも多いのですが、それ以外で発生する場合も多いので、一人一人の学生が気をつけることで、問題の発生が防げることもよくあるのです。知識を持った上で、お互いに気をつけたいものです。