新入生の住まい探しには「常識」が通用しない
――その特殊な事情を知らないととんだトラブルに……
新入生の住まい探しを行うとき、新入生本人はもちろん、保護者の方も、その「特殊事情」を意識している人はほとんどいません。
しかし、ここで述べるような特殊な事情を理解しておかないと、悪質な業者に引っかかったり、どうしようもないことで不満に思ったりして、結果的に、満足した住まい探しができなくなります。特殊な事情はたくさんあります。しっかり理解しておきましょう。
1.新入生=空室予定の部屋の紹介を受ける
ふつう=既に空室となった部屋の紹介を受ける
ふつうの住まい探しというのは、既に空室となった部屋の中から、自分の気に入った物件を探します。
ところが、新入生の住まい探しの場合には、多くの場合、「3月末に退去する予定の人の部屋」の中から探します。
従って、新入生が住まい探しを行う時期(私立大学の推薦合格発表後の12月頃から国公立大学の合格発表の行われる3月中旬)には、まだ退出予定の入居者が入居中であることが多く、室内の見学ができない場合が多いのです。
この点は、多くの新入生や保護者の不満の種となっています。
しかし、入居者のプライバシーが尊重されるため、入居者に無断で、勝手に室内を見学することはできないのです。
一方、そうして不満を抱きながら入居した学生が、自分の退出時期になると、「人に部屋の中をじろじろ見られるのはイヤ」ということで、自分が住まい探ししたときの感情はすっかり忘れてしまうのか、自発的に協力して部屋の中を見せてくれるケースはそれほど多くないのが現実なのです。
2.新入生=地理・住まい事情のまったく不案内なところで探すことが多い
ふつう=地理・住まい事情をある程度知っているところで探すことが多い
ふつう、社会人の住まい探しは、現在生活している同じ地域で行われる「住み替え」の場合をはじめ、地理をある程度知っているような地域で探すことが多いでしょう。
それにひきかえ、新入生の住まい探しは、それまで生活してきた地域とはまったく関係のないところで行わざるを得ないことが多いのです。
そのため、新入生の住まい探しは、信頼できるところで行わないと、とんでもない遠方の物件を言葉巧みに押しつけられたり、設備などの条件が悪い割に家賃などが高い物件に誘導されたりしてしまう可能性があるのです。
3.新入生=業者の評判を知る機会がなく調査もむずかしい
ふつう=業者の評判を知る機会もあり調査も可能な場合が多い
ふつうの住まい探しは、「住み替え」などの場合はもちろんのことながら、現地の事情にある程度通じていることが多い。
不動産業者の評判を知る機会もあるでしょうし、県庁の建築指導課などに行けば、業者の経歴調査も可能です。住まい探しについて解説した記事などには、「業者の経歴を調査したほうがよい」などと書かれていたりします。
しかし、新入生の場合には、業者の評判を知る機会はほとんど皆無ですし、県庁などで調査するような時間や費用をかけることは事実上不可能です。
つまり、悪質な業者にとっては、これほど都合のよいことはないわけです。いくら地元で評判の悪い業者であっても、言葉巧みに近づけば、業者の評判や事情を一切知らない新入生を餌食にすることは可能なわけです。
毎年、新しく入ってくる新入生は、すべて「一見(いちげん)さん」です。新入生は騙されたことがわかっても、後の祭りなのです。
4.新入生=ほとんど1日ですべての手続きを終えなければならない
ふつう=数日かけてゆっくりと手続きを進められる場合が多い
ふつうの住まい探しは、数日かけて何軒もの不動産業者を探し回ったり、条件の合う物件が見つかるまで、いくらでも日数をかけたりすることができることが多いのです。
しかし、新入生の場合には、ほとんど1日で、物件の相談から下見、そして契約までを行わなければなりません。
よく時間をかけられる人でも1泊2日程度です。そのため、相談時間や下見時間をゆっくりとることは不可能に近いのです。
必要な手続きについても、十分な説明を受けている時間もなく、「とりあえずここに印鑑を押してください」というような調子で進行していくのです。
契約書の内容もゆっくり検討しているひまはまずありません。つまり、新入生に不利な契約書であっても、契約時には気づかないことが多く、トラブルが発生して初めて気づくという場合が少なくないのです。
このような新入生の不利な状況を逆手にとって、新入生に非常に不利な契約書を押し付けている家主や管理会社も存在しているのが現状です。
5.新入生=大勢の新入生が同時にいっせいに住まい探しを行う
ふつう=個々ばらばらに住まい探しを行う
ふつうの住まい探しは、個々の人の事情にもとづいて、一人一人がばらばらに行うのが一般的です。
しかし、新入生の場合には、同時に合格発表を受けた、他の新入生がほぼ同時にいっせいに住まい探しを行うのです。そこで、各大学の厚生課、生協、そして、学校周辺の不動産業者にも、いっせいに大勢の新入生がやってきます。
一方、どのお店でも、キャパシティー(容量)というものがあり、大勢が来店されると、どうしても待ち時間が発生したり、個別の相談もあわただしくなったりしがちです。
大学や大学生協などでは、このような時期には、特設会場を設けて大勢の来場に備えていることが多いのですが、それでも、「パンク状態」になることも少なくありません。
大勢がいっせいに住まい探しをするということは、条件のよい物件がどんどん契約されていくということですから、「ゆっくり検討しよう」と考えているうちに、空室がなくなることもあります。
どこでも、物件を契約する優先順位をつけて整理していますが、その優先順位というのは、「下見に行った人の順番」ではなく、「手付金を支払った人の順番」です。
したがって、下見に行っている間に、他の人が手付金を支払って契約してしまったりして、下見から帰ってきたら、部屋がなくなっていたというようなケースも多いのです。
このようなとき、「下見に行っている間だけはお部屋を仮押さえしておいてほしい」と言われることも多いのですが、特定の人だけを優遇するわけにもいかないのが実際です。
部屋の仮押さえを行うのは、「空室が残りわずかであり、下見に行っている間に空室がなくなってしまう可能性が高く、家主や管理会社が仮押さえを認めてくれた場合」に限られることが多いのです。
不動産業者選びにおいては、「契約を急がせる業者は避けよう」というのがふつうなのですが、こと、新入生の住まい探しにおいては、新入生自身の立場にたって考えても、「(ぐずぐずしていると条件のよい物件はなくなるため)契約をある程度急がせるのはやむを得ない」ということになるのです。
6.新入生=説明が簡略にされてしまう
ふつう=納得できるまで説明してもらうことができる
ふつうの住まい探しの場合には、自分が納得できるまで、説明をしてもらうことが可能です。
納得できる説明をしてもらえなければ、他の業者にあたり直せばよいのです。
ところが、新入生の住まい探しの場合には、大勢の人がいっせいにやってくるので、受け入れ側にもまったく余裕がありません。たくさんの人が待っていると、いきおい、説明時間も短くなりがちです。そうしないと、「待ち時間が長すぎる」というクレームを受けるからです。
そこで、新入生や保護者の方が理解していようがいまいが、とりあえず、法律上求められる手続きや説明はやっておこうということになりがちです。
残念ながら、新入生や保護者の方がきちんと理解したかどうかを一つ一つ確認している時間的余裕がないのが現実です。
一方、「きちんとした説明をしてくれないなら、他の業者に行こう」と考えても、その時間的な余裕すらなくなっていることも多く、我慢せざるを得ないということもあるでしょう。
春先は、日没が早いのです。他の業者に行こうと思っても、満足な下見ができなくなるというケースもあるのです。
従って、新入生の場合には、説明不足になってしまうことをある程度覚悟して、事前に住まい探しに必要な知識と知恵を身につけておいた方がよいのです。
7.新入生=年に1回の「春場所」だけである
ふつう=年中住まい探しをやっている
ふつうの住まい探しは、特定の季節が決まっているわけではありません。
春に多くなる傾向はありますが、社会人の転勤などは春に限定されているわけではありませんので、春以外の季節になることも多いものです。
しかし、新入生の場合には、ほとんど春に限定されています。いわば、年に1回の「春場所」だけなのです。
学生の場合には、一般的に言えば、春以外には、住まいを探す人も住まいを貸す人も少ないので、条件のよい物件を探すのは難しくなります。
一方で、4月になっても残っている物件の場合には、「1年間空室でおいておくよりも借りてもらえたほうがよい」というわけで、礼金をなくしたり、家賃を大幅に引き下げたりする物件が出てくる可能性があり、思わぬ「掘り出し物」が出ることもあります。
そこで、入学式が4月に入ってからの場合には、無理して3月末に探すよりも、4月に入ってから探すほうが条件のよい物件が見つかることもあるのです。
8.新入生=社会経験がないのでだまされたり、被害に遭ったりしやすい
ふつう=社会経験があるのでやすやすとだまされたりはしない
社会人の場合には、失敗やトラブルなども含めて、さまざまな社会的な経験を積んでいます。住まい探しにおいても、社会経験の豊かな先輩や友人・知人のアドバイスを受けることも可能でしょう。
しかし、新入生の場合には、ほとんど未成年であり、住まい探しをはじめ、社会的な経験はほとんどありません。頼りになるはずの保護者にしても、「昔の学生の住まい事情」には通じていたとしても、「現代の学生の住まい事情」には疎いのが現実でしょう。
また、実際に生活を開始しだしても、トラブルに巻きこまれたり、悪質商法の被害に遭ったりする可能性もあります。実際、キャッチセールスや悪質な訪問販売などの被害に遭うのは、4〜5月頃の新入生が多いようです。
新入生だけで住まい探しをする人がいますが、よほどしっかりしていないと、悪質な業者の餌食になる可能性があります。
新入生は、社会経験のなさを、事前の知識武装でちゃんとカバーする必要があるのです。
9.新入生=入居審査がないか、あっても簡略化されている
ふつう=入居審査がしっかりある
ふつうの住まい探しには、家主や管理会社による「入居審査」が行われます。
この入居審査は、借主に家賃の支払能力がきちんと備わっているかどうか、借主の職業は何か、借主の連帯保証人はどういう人かなどを、書類にもとづいて審査したり、連帯保証人になるべき人に、連帯保証する意思を確認したりするものです。
このような入居審査は、公的な審査ではありません。
審査の結果が駄目であったとしても、その理由を問いただしても、きちんとした返事が返ってくるとは限りません。単に、「何となく相性が悪そうだ」とか、「職業が気に入らん」とか、家主のさじ加減ひとつでどうにでもなるのです。そして審査の結果は、不動産業者を通じて1週間以内に連絡されるのがふつうです。
しかし、新入生の場合には、1週間も審査結果を待つことはできません。
なぜなら、もし万一、審査に通らなければ、他の物件を探すことになるわけですが、再度、高い交通費と時間をかけて住まい探しにくる余裕はないからです。
それに、社会人の場合には、いったん入居すると、その人がどのような人であっても、家主側から「追い出す」ことは難しいのですが、学生の場合には、どんなに長くても数年後には退去するのです。
それに、連帯保証人が第三者ではなく保護者であることが多いので、家賃の滞納などにも対応しやすいのです。
こうした理由で、新入生の場合には、入居審査が省略されているか、簡易審査(遅くとも当日中に審査結果がわかるような審査)が行われるかのどちらかというのが一般的です。
大学厚生課や大学生協の場合には、一般の不動産業者とは異なり、その大学の学生・組合員であることが確実なので、そうした審査を省略するように、家主や管理会社に伝えていることが多いのです。
しかし、住まい探しを、一般の不動産業者で行う場合には、入居審査があるかないかを確認しておかないと、契約の段階になって初めて、1週間もかかる審査があることを知り、結果的に、それまでの時間が無駄になったというようなケースもあるので注意が必要です。
ただし、大学周辺にある業者の場合には、そうした事情を理解しているので、入居審査を簡略化ないし省略しているところが多いでしょう。
10.新入生=契約期間が1年という場合もある
ふつう=契約期間が2年という場合が多い
主に、一般社会人を対象にした物件では、「契約期間は2年」という場合が多いのですが、主に、学生を対象にした物件では、「契約期間は1年」という場合が少なくありません。あるいは、「契約期間は1年または2年」ということもあります。
学生向けの物件の契約期間が、なぜ、一般の物件の契約期間よりも短いのか、その理由は定かではありません。
しかし、新入生の住まい探しがあわただしい中で行われることと、後に述べるように、在校生よりも不利な状況の中で行われるために、たとえ「契約期間2年」としていても、途中で解約して他の物件に引越しする人もけっこうあることがひとつの理由でしょう。
また、礼金や更新料のある地域では、「契約期間1年」としていたほうが、毎年、更新料を徴収することができるという判断もはたらくのでしょう。
新入生の立場から考えると、「契約期間1年」というのは不利な条件に見えるかもしれませんが、一概に、不利とはいえません。
なぜなら、礼金などのある地域では、「契約期間2年」の場合の礼金よりも、「契約期間1年」の礼金のほうが安く、とりあえず1年契約しておいて、入学してから、ゆっくりと条件のよい物件探しを行うことも可能だからです。
11.新入生=「契約期間1年」でも、実際には365日よりも短い場合が多い
ふつう=「契約期間1年」という場合は、365日間をさす場合が多い
ふつう、「契約期間1年」という場合には、「入居期間365日間」という意味です(閏年は366日となりますが)。
ところが、学生専用というような物件は、「契約期間1年」というのは、実際の入居期間としては360日程度という場合が少なくないのです。
なぜ、そのような違いがあるのでしょうか?
それは、ふつうの住まい探しが、既に空室となった部屋を対象に行われるのに対して、新入生の場合には、空室予定の部屋を対象に行われることと関係しています。
ふつうの契約の場合、契約期間が終了し、ルームクリーニングを行ったり、修理・修繕が必要なところを直したりしたあとで、次の入居者を募集します。
しかし、学生の場合には事情が違います。
もし、「契約期間1年」=「入居期間365日間」だとすると、3月末に退去した後、ルームクリーニングや必要な修繕を行うと、4月から入居する人は、早くても4月5日頃にしか入居することはできません。
そうなると、私立大学のように入学式が4月はじめに行われるようなところでは、入学式までに入居できず、ホテルなどで過ごさざるを得なくなってしまうのです。
しかも、3月末から4月初旬にかけては、学生マンションなどの多い地域では、内装工事業者が徹夜作業で修繕を行うようなことも少なくありません。
従って、最低でも5日程度の期間を確保しないと、修繕工事も間に合わないという事態にもなりかねません。
事実、業者が確保できない物件では、入居後に修繕を行わざるを得ないというケースも発生しているのです。
このような事情から、学生の入居者が多い物件では、「契約期間1年」でありながら、実際の入居可能期間としては、360日程度とすることで、3月の25日頃までに退去してもらい、入学式の行われる日までに、新入生が入居できるように対処しているのです。
もちろん、このように対処することで、今度は、入居後に不都合が発生することもあります。
卒業式までずっと同じ物件に住んでいる場合にはそれほど問題にはならないことですが、途中で別の物件に引越しをしようとすると、例えば、それまで住んでいた物件の退去は3月25日頃なのに、次の物件の入居日は4月初めとなるので、どこにも行けない空白の期間が生じてしまうようなケースです。
実際に、このようなケースはたくさん発生しています。
学生の多くは、その間、友人・知人のところにお世話になり、荷物はそれまで住んでいたところに置かせておいてもらったり、トランクルームなどに一時預けしたり、引越し業者に一時保管を依頼したりして、何とか対処しているのです。
ときどき、保護者の方から、「契約期間が1年間なのに、3月末まで住めないのは不合理だ」などというお叱りを受けることがあります。
しかし、学生の多い物件には、このような特殊な事情が背景にあるのです。
在校生か新入生かのどちらかに、このような矛盾のしわ寄せをせざるを得ないのです。
在校生なら友人・知人もたくさんできているはずですし、「新入生にしわ寄せをするよりはまだましだ」という判断で対処せざるを得ないのが現実なのです。
法律上では、契約期間が1年に満たない場合には、「契約期間を定めない契約」とみなされてしまいます。
そのように解釈されると、民法の規定により、「借主はいつでも解約することができ、解約の申し出後3ヵ月後に契約が終了する」ということになります。
このような解釈をされると、例えば、「契約の途中解約は1ヶ月前までに行う」というような規定よりも、入居者に不利に解釈されてしまうケースが考えられますし、家主側でも、契約期間が決まっていなければ、当然のことながら、契約の更新料などを請求することは不可能ということになります。
借主・家主のどちらにも不都合なことが起こるのです。つまり、学生の住まいの現実が、法律の規定に合致していないのです。(定期借家契約のような特別な契約なら法律の規定に合致しているといえますが、一戸建ての賃貸以外はほとんど普及していません。)
従って、学生の住まいは、通常、「契約期間1年」の場合、「契約期間を定めない契約」とはせず、「契約は1年間でも実際の入居可能期間については360日間」というような特殊な解釈を行わざるを得ないのです。
ただし、「360日間」ということになれば、3月の家賃は、本来、日割で精算すべきです。ところが、日割計算を行わず、3月分を丸ごと請求している家主が多いのが実態ですから、そういう家主に出会ってしまったら、「日割で精算すべきだ」と主張しましょう。
12.新入生=契約の途中解約通告時期がふつうよりも早めであることが多い
ふつう=契約の途中解約通告時期は1ヶ月前であることが多い
主に、一般社会人を対象にした物件の契約書では、「契約の途中解約通告時期は退去予定日の1ヶ月前までに行う」というような規定が多く見られます。
これに対して、学生を主な対象にした物件では、「1ヶ月前までに」だけでなく、「2ヶ月前までに」とか、ひどいものになると「6ヶ月前までに」などというものさえ存在しています。
一般社会人の場合には、転勤の人事発令は、それが実施される1ヶ月前までに行われるケースはほとんどないでしょう。従って、「1ヶ月前まで」という規定は当然のことでしょう。
しかし、学生の場合には、自分の都合以外で、転居せざるを得ないというケースはほとんどないでしょう。
また、学生専用の物件などでは、契約期間の途中で退去されてしまうと、新入生が入ってくるまで空室のままということが少なくありません。
従って、学生の多い物件の途中解約通告時期がふつうよりも多少早めになっていることは、やむを得ないことだと言えるでしょう。
13.新入生=在校生に比べて、新入生の住まい探しはどうしても不利である
ふつう=誰かと比べて、住まい探しが有利・不利ということはない
ふつうの住まい探しは、誰か競合する相手が存在しているわけではありません。
ところが、新入生の住まい探しには、強力なライバル(しかもほとんど勝てない)が存在しているのです。つまり、在校生がそれです。
新入生の住まい探しは、あわただしいスケジュールの中で、住まい探しをした日に空室となって残っている物件の中から選択せざるを得ません。その中でとりあえず、住むところを確保するということにならざるを得ません。
しかし、いったん生活をしだすと、友人・知人の住まいを訪ねる機会も増えますし、地域の事情にも通じてきます。
場合によれば、住まい探しで、悪質な業者に引っかかったかどうかもはっきりしてくることもあるでしょう。友人・知人との情報交換によっても、どこにどのような物件が存在しているのか、条件のよい物件はどこなのかなどがわかってきます。
そうすると、「条件のよい物件に空室が出たら、そこに転居したい」という人が出てくるのは当然のことです。
そして、業者の側でも、早ければ夏前から、「物件の予約」を開始します。
これは、空室がまだはっきりしていない段階でも、とりあえず、「契約の順番の確保」を行い、早ければ10〜11月頃にわかる空室予定の部屋を、予約した人の順番に決定していくのです。物件数がそれほど過剰になっていない地域で、非常に人気の高い物件があると、「徹夜で順番待ちをして予約する」というケースさえ出てくるのです。
また、新築物件の情報がオープンされるのは、早ければ夏頃、遅くとも11〜12月にはほとんど揃います。
新築物件は、設備も最新のものが多く、学生の人気の仕様となっていることが多いので、在校生は、新築物件も狙っています。
このようにして、在校生が10月頃から2月頃にかけて、新入生に先駆けて、条件のよい物件を契約していくのです。ですから、新入生は、その残り物の物件から選択せざるを得ないというのが現実なのです。
私立大学と国公立大学などを比較すると、まず、私立大学の推薦合格者が秋から冬にかけて契約し、続いて、私立大学の一般入試の合格者が契約し、最後に、国公立の合格者が契約するという順番になっています。
14.新入生=不動産業者以外に大学や生協でも住まいを探せることがある
ふつう=不動産業者でしか住まいを探せない
ふつうは、住まいを探すのは不動産業者で行うのが一般的です。
ところが、新入生の住まい探しの場合には、不動産業者だけには限られていないのです。大学・学校の厚生課や学生課が住まいを紹介している場合や、学内に生協がある場合には、大学生協が住まいの紹介を行っている場合があるのです。
大学・学校が住まいの紹介を行っている場合は、福利厚生の一環として行っているので、家賃の安い物件が中心です。そのため、人気の学生マンションの取り扱いはそれほど多くないことが多いのです。
それに対して、大学生協の場合には、大学と並行して住まいを紹介しているところと、大学の住まい紹介の「移管」を受けて、大学の代わりに住まいの紹介を行っているところがあります。いずれにしても、大学生協の場合には、家賃の安い物件から学生マンションまで幅広く取り扱っていることが多いのが特長です。
大学や大学生協が住まいの紹介を行っているところでは、一般の不動産業者よりも、幅広く物件を紹介していることがあります。
そこで、新入生の住まい探しを行う場合には、まず、大学や大学生協が住まいの紹介を行っているかどうかを確認したほうがよいでしょう。
15.新入生=契約手続日に契約書を交わさないことも多い
ふつう=契約手続日には必ず契約書を交わす
ふつうの住まい探しの場合には、契約手続日に、業者による重要事項の説明と、それへの署名・捺印に続いて、契約書への署名・捺印をすることが多いのです。
ところが、学生、特に、新入生の住まい探しの場合には、契約手続日に契約書を交わすことは必ずしも多くないのです。
その理由は、新入生の場合、保護者と一緒にあわただしいスケジュールをぬって、ほとんど1日で、住まいをはじめ、各種の手続を終えようとしますので、住まい探しだけに時間をかけるわけにはいかないからです。
その上、他の大勢の新入生もいっせいにやってきますので、契約書の内容について事細かに説明をしようとすれば、一人あたりにかかる所要時間が大幅に伸びることになり、ずっと待っている人たちに、「あとの人は時間が足りないので明日もう一度出直して来てください」などと言わざるを得なくなります。しかし、地方からわざわざ出てきていただいた人たちに、そんなことを言えるはずはないのです。
また、業者などで重要事項説明を受けた後に、契約書を交わすために、再度、家主のところに行くというのも大変なことですし、実際に、あわただしい時間の中で、契約書の説明を受けても、きちんとした説明になるはずはないのです。
そこで、学生の住まい探しの場合には、重要事項説明書についての説明を受け、それを承認した証拠として署名・捺印をし、そして手付金の支払いをするという、部屋を決めるのにもっとも重要なことだけに集中し、契約書については、部屋の決定時に手渡したり、管理会社から郵送したりして、「自宅でゆっくり契約書の内容を確認して署名・捺印し、入居日に持ってきてください」というような形式にしていることがよくあるのです。
しかし、そんなことをすれば、契約書に非常に不利な条項があれば、問題にはならないのでしょうか?
もちろん、問題となる場合があります。というよりも、入居者に不利な条項が盛り込まれている契約書の方が多いのが実態なのです。
それでも、いくら契約書に入居者に不利な条項があったとしても、借地借家法の強行規定(家主が絶対に守るべきこととして決められている規定)そして消費者の強い味方である消費者契約法に反していれば、そうした条項は怖くともなんともありません。
それに、あまりに問題だと思うようなところがあれば、紹介を受けた業者にクレームを持ち込んで、契約書への署名・捺印を保留するという手もあります。
いずれにせよ、契約手続日にあわただしい中で署名・捺印を求められるよりはましだともいえるのです。
そんなわけで、契約手続日に、契約書を交わさないこともあるという不思議なことが、新入生の住まい探しではよくあることなのです。
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