業者訪問時に必ずチェックするポイント

――業者への訪問に関するノウハウ

1.住まい探しの曜日・時間帯

 ここからは、いよいよ住まい探しの実践編です。今までのところで、予備知識を十分身につけていただいていたら、これからは、その知識を実際に現地で確認していく番です。

 まず、住まい探しは、どの曜日に行うのがよいのでしょうか?

 それは、できるだけ土曜日・水曜日を避けて、それ以外の日に行うということです。

 新入生の多くは、一人で住まい探しをするのではなく、保護者を伴っているのがふつうです。

 当然のことながら、保護者が休みを取りやすい土曜日や日曜日に行うというのが多いのですが、もっとも来店・来場者が多いのが土曜日です。

 土曜日は、他の新入生もたくさん来店・来場しているので、会場そのものもたいへん混雑します。待ち時間が長くなったりもします。その上、ていねいな説明が受けにくいのです。結果的に不満の残る住まい探しになってしまうこともあるのです。

 一方、水曜日というのは、不動産業者の定休日となっていることが多いのです。

 もちろん、大学周辺の業者は住まい探しのシーズン中については休まずに営業している場合も多いのですが、一般業者は休業の場合がよくあります。

 そこで、できるだけ土曜日・水曜日を避けて来店するようにしたほうがよいのです。

 また、大学や大学生協を訪問する場合には、開設(営業)日・開設(営業)時間帯を事前に確認しておきましょう。特に、大学の場合には開設時間が短い場合もあるからです。

 訪問する時間帯としては、できるだけ午前中にするようにしましょう。

 その理由は、春先などは午後遅くなると薄暗くなり、日当たりが確認できなかったり、あせって条件のよくない物件を決めてしまったりするようなことにもなりかねないからです。それに、住まいの契約が一通り終了し、各種の手続きを終えるのにけっこう時間がかかるからです。

 なお、一般の不動産業者の場合、午前中の来店客を嫌い、夕方から閉店間際に来店する人を歓迎する傾向にありますが、その理由は、「午前中の客は元気いっぱいなので下見だけで契約がとりにくいのに対して、夕方にやってくる人は、すでに他の業者でいくつか回ってきている可能性が強く、トーク次第で契約まで持ち込みやすいから」です。

 契約ノルマをもっている営業担当者から考えると、「午前中には来るな!」と言いたいところでしょうが、できるだけ気に入った物件を見つけようというのであれば、午前中から探したほうがよいでしょう。

2.住まい探しをするときの服装

 住まい探しを行うときは、どういう服装にするのかということも気をつけておきましょう。

 住まいを決めるのは、新入生本人と保護者ですが、家主や、その意向を受けた不動産業者にも、「誰を住まわせるのか」という選択する権利があるのです。

 もっと端的に言えば、いくら本人が物件を気に入ったとしても、家主や不動産業者が住まわせたくないと思えば、契約は成立しないということです。

 ときどき、「自分が気に入ったのに、契約できないなんておかしい」という文句を言う人がいますが、家主や不動産業者には、拒否権があるのです。

 では、どういう場合に、家主や不動産業者が、拒否権を発動するのかと言えば、「家賃などの支払いが確実に行なわれない可能性がありそうだ」という場合と、「何かトラブルでも起こしかねない」という判断をする場合に分けられるでしょう。

 特に、家主は高齢者が比較的多いので、いまどきの若者のファッションを理解できない人が多いのです。

 茶髪程度では驚かない家主でも、あまりに奇抜な服装や格好になると、避けたくなるのも無理からぬことです。他の入居者とトラブルを起こしたり、わけのわからない人たちが出入りしたりするのも困りものだと考えるのです。

 家主や不動産業者は、保護者についても、「服装で人を見る」のです。従って、あまりにラフな格好は避けたほうが無難です。

3.「業者票」で免許の更新番号をチェック

 業者を訪問したとき(パンフレットを見てもわかるはずですが)、「業者票」というものが、店内の見やすいところに掲げられているはずです。

 それを見ると、○○県知事免許あるいは建設大臣免許などという表示のあとに、(1)とか(2)というように、()がついた小さな数字が書かれています。

 これは、5年に1回(以前は3年に1回に改定)ある免許の更新番号を表しています。たとえば、(3)という場合には、2回の更新を経ている、つまり少なくとも10年以上は、免許の取り消しになることなく営業を続けてくることができた業者であるということです。

 地元の業者で、更新番号が多ければ、免許の取り消しをされるような罰を受けることなく営業を続けてきた業者であり、一定の信用があるということを表しています。

 ただし、古くから付き合いのある物件にあぐらをかいていることもあり、条件のよい新規物件はそれほど多くないこともあります。それに、「逆は必ずしも真ならず」です。

 例えば、(1)だからといって信用できない業者であると決めつけることはできないのです。単に、新しく営業を開始しただけの場合も多く、かえって、新しい業者の場合には、地域を必死に回って、条件のよい新しい物件をたくさん集めている場合も少なくないからです。

4.情報を小出しにする業者だったら、すぐに出て行こう

 不動産業者の物件紹介の仕方には、2つのタイプに分かれます。

 一つは、新入生の希望する条件や優先順位をきちんと把握した上で、その条件にあう物件を熱心に探してくれるところと、もう一つは、新入生の希望条件や優先順位などをさらっと聞き流す程度に聞き、一つずつ物件資料を小出しに出してくるところです。

 前者のような不動産業者は、借主の希望にできるかぎり沿うように、数多くの資料の中から、いくつかの物件資料を一生懸命探し出してきて、一つ一つの物件について、説明してくれます。

 しかし、後者のような不動産業者では違います。

 まず、最初に一つの物件資料を出してきて、希望条件に合うかどうかを説明するのではなく、その物件がいかによいかということを説明するのです。

 新入生や保護者がその物件に難色を示すと、再度、他の物件資料を出してくるのです。そして、同じように、出してきた物件のよさを説明するのです。

 最初から、希望に合う物件をいくつか出すのではなく、一つずつ出してきて、その物件では逃げられると思った途端に、もっと条件のよい物件を出してきたりするのです。

 前者のような不動産業者は、顧客本位の不動産業者ですが、後者のような不動産業者は自社の利益しか頭にありません。

 なぜ、後者のような不動産業者は、物件情報を小出しにするのでしょうか?

 その主な理由は、3つあります。

 一つ目は、成功報酬で成り立つ業者が利益を増やすためには、全体の契約数を増やすことが必要だからです。

 客が逃げないようにしながら、できる限り条件の悪い物件を契約させるほうが、条件のよい物件を残すことができ、あとから来店する人も契約に導きやすくなるからです。

 これは、逆に考えるとわかりやすいでしょう。

 つまり、条件のよい物件から順番に契約を進めていけば、後に残るのは条件の悪い、契約しにくい物件ばかりになるからです。

 そこで、トータルの契約件数を増やすためには、できるだけ条件のよい物件は温存させながら、新入生が逃げない範囲の物件で契約させようとするのです。

 二つ目は、不動産業者には、新入生の希望の有無に関係なく、契約すべき物件の優先順位が歴然として存在しているからです。

 一般的に言えば、業者が優先的に契約を進めるのは、一棟借上物件、管理物件、専任物件、一般物件の順になるのです。

 一棟借上物件とは、一棟まるごと家主から借上げ、家賃保証や満室保証などを行っている物件で、利益とともにリスクもある、業者にとっては何よりも優先的に満室にすべき物件です。

 管理物件とは、家主との間で管理委託契約を結んだ物件です。

 管理委託契約を維持するためには、「空室を埋める」ことが必要です。

 その次は、専任物件(専門用語では専任媒介契約物件といいます)で、家主から、その業者のみに入居者斡旋を依頼された物件です。

 そして、最後に一般の物件で、家主との特別な関係のない物件です。

 三つ目は、家主からの広告費が大きい物件から紹介していくほうが、同じ1件の契約でも業者の収入が増えるからです。

 先にも述べましたが、条件の悪い物件の家主は、1年間空室のままにおいてしておくよりも、業者に余分に広告費を出すことで空室を埋めてくれるほうがありがたいのです。

 そこで、悪質な業者になると、広告収入の大きい物件を言葉巧みに誘導して契約させるのです。

 この場合、「悪質な業者」というのは、新入生の立場から見た場合であって、条件の悪い物件の家主からすれば、「信頼できる業者」であるわけです

 このような理由がいくつも重なったりするため、自社の利益しか考えない不動産業者は、情報をいっぺんにオープンにするようなことはいっさいしません。できるだけ情報を小出しにして、ある程度のところで契約させようとするのです。

 以前、筆者は、ある不動産業者の営業マンから、雑談の中で、率直な意見として、次のようなことを言われたことがあります。

 「生協さんのように、条件のよい物件からどんどん紹介していくようなやり方は、素人商法ですよ。われわれプロがそんなことをしていたら笑われますよ、はっきり言って商売になりません。生協もやり方を変えた方がいいんじゃないですか」

 筆者(が勤務する生協)は、もちろん、やり方を変えようとは思ったことはありません。そのために、利益が増えなくても仕方ないし、利益のために新入生に犠牲を強いるなんていうのは考えられないからです。

 情報を小出しにするような業者なら、けっして条件のよい物件を紹介してくれないでしょう。そんなところはすぐに出て行くのが賢明です。

5.契約をやたらと急がせる業者には要注意ですが……

 一般の不動産紹介の場合には、「契約をやたらと急がせる業者も要注意」です。しかし、新入生の住まい探しの場合には、この注意事項が単純には当てはまらないのです。

 新入生の住まい探しは、別の項目でも触れたように、大勢の新入生がいっせいに住まい探しを行っているので、契約までのんびり構えていたら、条件のよい物件はどんどんなくなっていくのです。

 従って、新入生のことを考えると、ある意味では「契約を急がせるのは当然」なのです。

 それでも、「契約をやたらと急がせる業者」には、やはり要注意です。
 
 では、ふつうに急がせる業者と「やたらと」急がせる業者の違いは、どこで見分けるのでしょうか?

 そのためには、契約しようとしている物件の空室がいくら残っているかを聞き出し、空室がたくさん残っているにもかかわらず、「急げ」という業者は怪しいと考えたほうがよいでしょう。

 また、他の新入生がどれくらい来店しているのかを推定し、それほど多くの新入生が来ていないのに、「急げ」という業者は避けたほうがよいでしょう。

 いずれにしても、よく観察していれば、新入生のことを考えて、「急げ」と言っているのか、それとも、早く契約させるために、「急げ」と言っているのかは、ある程度推察できるでしょう。

6.下見中の心理誘導に注意しよう

 いくつかの物件の紹介を受け、いよいよ物件の下見に行くときの注意です。悪質な業者の手口に引っかからないように、その巧妙な手口をお教えしましょう。

 物件の紹介を受け、条件に合う物件が見つかれば、実際に物件を見学に行くことになります。

 状況にもよりますが、ふつう、業者では2〜3件程度の物件の下見に連れて行ってくれるでしょう。いくつかの物件を回り、その中で気に入った物件があれば、その物件を決定するという段取りになるのです。

 ところが、業者の中には、最初から特定の物件に契約させるのを腹の中で決めておきながら、その物件以外に、1つ2つの物件を案内するように見せかけ、はじめに、ターゲットの物件以外のところに案内するふりをするのです。

 そして、新入生を連れて移動中の車中を見計らったところで業者のドライバーの携帯電話が鳴り、「えっ、○○マンションも△△ハイツも満室になったんですか?」と、営業所からの突然の電話で驚くふりをし、「お客さま、今から下見に行こうと思った○○マンションも△△ハイツも、さっき他の人が契約したそうです」などと言うのです。

 そうすると、ふつう、新入生や保護者が急に焦りだすので、「お客さま、もう一つ下見に行く予定の××マンションも満室になってしまうかもしれません。お客さまさえよければ、とりあえずすぐに部屋をストップして契約手続きをとりましょうか?」などと持ちかけるのです。

 そのように持ちかけられると、大半の人、特に保護者は子供の住むところがなくなってはたいへんと思い、「ぜひ、そうしてください」と頼んでしまうのです。

 そうなれば、業者はしめたものです。間髪いれず営業所に電話を入れ、「××マンションの○○号室を□□さまの名前で契約します」と言うのです。

 その後、実際に下見をした××マンションが気に入らなくても、もう後の祭りなのです。

 そういう業者は、「さっき契約手続きしましたからキャンセルするなら取消し料がかかります」などと言うのです。

 業者が、最初から、契約させたい物件だけを案内しようとすれば、かなりの説得が必要ですし、説得がうまくいくかどうかもわかりません。

 そこで、他の物件を案内するふりをしながら、しかも、情報の閉ざされた車中での突然の電話という小細工で、冷静な判断能力がなくなった一寸の隙を狙って、巧みに心理誘導し、目的の物件の契約について、「イエス」と言わせてしまうのです。

 営業所に戻ってからでは、冷静さを取り戻すので、間髪入れないタイミングが大切なのでしょう。これが、プロの悪質業者の手口の一端です。

 だいたい、空室が残りわずかであれば、部屋を仮押さえしてから下見に行ったり、それができない場合には、もっとも希望条件に近い物件に絞って、下見に行ったりするのがふつうです。

 そうしないと、他の物件を回っているうちに、空室がなくなってしまうからです。

 いずれにしても、車中など、冷静な判断がしにくいと思ったときには、軽はずみに契約の意思を伝えるようなことは避けるようにしなければなりません。