これだけは知っておきたい法律の基礎知識

――法律をまったく知らないととんでもない契約を押しつけられる可能性も

1.民法

 住まい探しには、多額のお金が動き、「賃貸借契約」という法律上の行為が伴います。

 そこで、自分自身が損をしたり、被害に遭ったりしないように、最低限の法律上の知識については身につけておきたいものです。

 まず、もっとも基本となるのは民法です。

 民法は、国民の私権(物権、債権、親族、相続など)について規定した法律で、個人間の争いごとは、民法をもとにして解決することとなっています。

 しかし、「契約自由の原則」(「私的自治の原則」とも呼んでいます)というものもあり、人身売買など、道徳的に問題があるもの(公序良俗に反するという言い方をします)以外については、原則として、どのような契約でも結ぶことができます
 
2.借地借家法(しゃくちしゃくやほう、しゃくちしゃっかほう)

 「契約自由の原則」からすると、どのような契約を結ぶことも可能ということになりますが、住宅を貸す人と借りる人との間では、貸す人の立場が強くなりがちです。

 そうなると借りる人に非常に不利な契約が横行し、さまざまなトラブルが発生してしまいます。

 そこで、借りる人の立場にたって、できるだけ借りる人を守ろうという趣旨で借地借家法が制定されています

 しかし、それは、あくまで建前のことであって、実際には、借地借家法の趣旨に反するような契約は当たり前のように存在しています。

 「裁判になれば家主は絶対に負ける」ような契約の条文が多いのですが、残念ながら、ほとんどの学生は泣き寝入りしてしまうことが多いのです。その理由は、「費用は親が出すから」(自分が直接負担するわけではないから)だったり、正々堂々と主張する、国際社会に生きていく大人としての自覚が足りなかったりするからです。
 
 なお、2000年3月からは、新しい制度として、「定期借家権制度」が導入されています。

 これは、今までの借家権制度では、いったん入居すると、入居者の立場が保護され、よほどのことがない限り家主が契約解除することができないなど、家主の立場は弱く、そのために、賃貸に回るべき住宅が流通できなくなっているという状況判断のもとに、賃貸住宅の流通増を狙って導入されたものです。

 ここでは詳しくは触れませんが、更新できないというようなデメリットがある一方で、学生の住まいに導入するメリットは特にありません。ただし、1年未満の短期契約の場合には、定期借家契約にすることで、家主も借主も安心して契約することができるというような場合もあります。

3.宅地建物取引業法

 もともと、不動産の賃貸借契約は、家主と借主との間で行われていたものですが、その間に、プロの不動産業者が仲介することになってきました。

 不動産業者は、「成功報酬」が原則となっています。

 つまり、契約してはじめて手数料を請求することが可能になるのです。逆に言えば、物件の広告を出したからといって、特別な依頼がなければ広告費用を依頼主に請求もできず、下見に案内したからといって案内料金を請求することもできないのです。(もっとも、悪質な業者にかかれば、さまざまな名目で費用請求しているのですが……)

 そこで、不動産業者は、是が非でも「契約をとる」ことに力を入れます。

 本来は、家主と借主の間に立って、中立的な「仲介」を行うべきところですが、実際には、借主を説得して契約させるということになることが多いのです。

 結果として、借主が希望しないような物件にうまく誘導されたり、被害に遭ったりすることが続発したのです。

 なお、特に大きな問題となったのは賃貸ではなく、売買に関連してです。買主が莫大な費用を支払ったのにもかかわらず、詐欺まがいの手法でだますような事件が多発したのです。

 こうした背景のもとに、とりわけ「悪質な不動産業者を締め出すために」、宅地建物取引業法を制定して免許制度をつくり、業者として守るべき項目をいろいろと定め、一方では、悪質な不動産業者を締め出すための規定をつくったのです。

 住まいを借りる立場から考えると、宅地建物取引業法は、借り手を守るための法律となっているのです。

 ところが、学生の住まい探しに限定すると、学生の住まい探しの特殊事情と宅地建物取引業法の規定とは必ずしもマッチしないこともあるのです。

 例えば、法律にもとづく「重要事項説明書の発行と説明」は宅地建物取引主任者が行うことになっていますが、新入生の住まい探しは、大勢の来店者がいっせいに住まい探しを行うため、一人一人に詳しく説明していると、説明のための待ち時間が数時間にも及んでしまうことにもなりかねません。そこで、どの業者でも、法律上は望ましいとはいえませんが、主任者による説明は簡略なものにとどめざるを得ないという事情があるのです。

 「一人一人にきちんと説明していますので、本日は時間がたりません。今日はホテルに宿泊して明日に出直してください」などと言えば、極端な話、法律を無視して、説明を一切行わないところのほうが応対はスムーズだということになってしまうのです。誰だって、遠方からやってきて待たされるのは嫌だからです。

 従って、学生の住まい探しで重要なことは、その業者が業法上の規定を形式的に守っているかどうかということではなく、実質的な内容が適正かどうかということです。

 例えば、強引に契約を進めようとしたり、意味不明の費用を請求してきたりするような業者は、たとえ、法律上の形式は満たしていたとしても、実質的には借主(消費者)の立場に立っているとは言えないのです。

4.消費者契約法

 この法律は、2001年4月に施行された法律ですが、事業者と消費者との取引に関して、消費者の立場を守るものとして、非常に重要な役割を果たしている法律です。

 建物の賃貸借契約において、借主は、通常個人ですので、消費者として、消費者契約法の適用があります。

 この法律のうち、賃貸借契約においては、第10条に規定されている「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」という点がもっとも重要なポイントです。

 例えば、法律誕生前の場合には、「修繕費用はすべて借主負担とする」というような特約が認められるケースが多かったのですが、法律誕生後は、「消費者契約法違反であり無効である」という判例が相次いでいるのです。

 「契約は無効」という場合、「その条項については、最初からなかったものとみなす」ということになりますので、たとえ、署名捺印していても、認められないのです。

 消費者契約法は、敷金返還トラブルを解決するのに、大きな役割を果たすようになっているのです。